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第三章 はじめてのがっこう

しょうもない授業

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 ホームルームは無事終えた。
 数分後に一時間目の授業が始まる。
 どんな怖い教師が来るか、俺はガッチガチに固まっていた。

「はい、みんな席について~」

 若い男性教師だがやる気なさそうだな。
 教師という立場でありながら、ロン毛だし、無精ひげだし。
 太っちょお兄ちゃんで、汗かきまくっているしね。
 見た目からしてオタク側に近い。

「え~、現代社会をはじます。教科書を開いてください」
 とは言ったものの、大半が教師の脱線話で三十分もダラダラと話し続ける。
 結局、なにが言いたいんだ。
 この教師は、大半がニュースで流れている時事ネタばかりじゃないか。
「じゃあ、次回のアメリカ大統領選挙における有力候補は誰だと思う? ニュースとかでトラ●プは否定的だけど、もう一人は?」
 は? なんだそのクイズは? バカにしているのか?

「はーい!」
 斜め後ろの花鶴がうれしそうに手をあげる。
「お! きみ、わかる?」
 なんかビッチなギャルが手を挙げて嬉しそうだな、この教師。
「わっかりませ~ん!」
「え……」
「ここあ、お前笑わせるなよ」
 千鳥がツルピカに頭を光らせて笑う。
「だって、流れ的に誰も手をあげなさそうだし~ ここは一本ウケようかな~って」
 おい、教師絶句しているぞ? ウケとれてないけど?
「はい、じゃあ正解は……」
 と、そこでチャイムが鳴り、答えを言いたげな教師は悔しそうに教室をあとにした。


「はぁ、なんなんだ。このスクリーングってのは?」
 ため息をつきながら、教科書を入れ替える。
「でも……私は安心したよ」とクスクス笑う北神。
「なにが?」
「だってさ、私も中学校あんまりいけてなくてさ……」
「なんだ、お前も不登校か?」
「え? 新宮くんも?」
 目を輝かせて、顔面すれすれまで近寄る。キスしちゃいそう。

「ああ……」
「わぁ、嬉しい。ますます大好きになっちゃった」
「……」
 え? 今なんつった、この子?
「な、なにが?」
「この学校♪」
 ですよね~ そこで『新宮くんのこと!』とは言いませんもんね~

「なんだ。タクトは、ふとーこうかよ」
 メンチをきかすミハイル。
 不登校で何が悪い!  
 さてはお前、いじめっ子だな。
「ご、ごめんなさい……古賀くん」
 おびえる北神の姿はまるで小動物のようだ。
「は? なんでおまえに名前で呼ばれないといけないんだよ」
 いや、それを言うならおまえたちの『ダチ』認定はいつおりるんですか?
 やっぱケンカですか?

「ご、ごめんなさい……古賀くん、ハーフでしょ? だから覚えやすくて」
「おまえ……二度とそんなこと言うなよ」
 ドスのきいた声だ。俺でさえ怖い。
 そう言い残すと、席を黙って立ち上がり、教室から出て行った。
 ていうか、どこが怒るポイント? ワタシ、ワカラナイネ~

「わ、私……謝ってくる。せっかく仲良くなれそうだって思ったのに……」
 泣いてしまったよ。どうすんのよ、これ。ミーシャさん?
「あ~、今のは北神……なんだっけ?」
 背後から千鳥が声をかけてきた。
「ほのかです……」
「あれは確かにミハイルの前では禁句だよ。俺があとで説明しとくから、もう泣くなよ」
 頼もしいこって。でもどのワードが激オコポイントなの? それ教えておかないとまた地雷踏むよね?

「そうそう、あーしもあれはよくないと思うよ」
「ごめんなさい……今度から気をつけます」
 いや気をつけるもなにも、どこを気をつけるの?
「いいってことよ、ほのかちゃん」
 もう下の名前で呼ぶのか、千鳥。
 馴れ馴れしい男は嫌われるって母さんが言ったけどな。

「あ、あのお二人は?」
「あーしは花鶴 ここあ。んでこっちのハゲが千鳥 力ね」
「だから俺は剃ってるってんだろ!」
 安いよ~ 安いよ~ 新鮮なゆでダコだよ~
「そいから、あーしもほのかでいい? あーしがここあで、こっちはリキって呼べばいいよ」
「あ、了解です」
 俺をまたいで自己紹介タイムやるのやめてくれるかな?

「てかさ、タメでっていいての、ウケるんだけど」
 いや、ウケない。まったくもって。
「そうそう、俺らもうダチじゃん」
 おい! 今の流れでどこからダチ認定なんだよ!
 なんで俺だけミハイルに殴られる必要があったんだ!

「うん! じゃあ後でL●NE交換しよ」
「い~ね、ほのかってどこ住んでんの……」
 と、会話が盛り上がっているところで、俺はその場にいるのが耐えられなくなった。

 こういう流れが一番、ぼっちにはこたえる。
 黙って席から離れ、廊下に出た。
 あのまま、いれば絶対に「あれ? お前いたの?」という禁句を放たれることになるからな。

 さあ、俺がお花を摘みにいきますかね~
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