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第二章 壊れたラジオ
リアルJK 赤坂ひなた
しおりを挟む俺はわざわざ、文句だけ言いに一ツ橋高校へと出向いた。
電車代はもち自腹、返してくれますかねぇ。
今日は平日なので全日制コースの三ツ橋高校は授業中だ。
俺が私服なもんで、校舎を歩いていると制服姿のリア充どもが「なんだ、コイツ?」みたいな一瞥しやがる。
一ツ橋高校の生徒だ! という顔で歩く。
廊下を何食わぬ顔で歩いていると明らかに校則違反のミニ丈JK。三ツ橋生徒とすれ違う。
いい生足、痩せすぎず筋肉質なところが健康的で素晴らしい。
「ちょっと、そこのきみ!」
振り返るとそこにはボーイッシュなショートカットの女子がいた。
いかにも部活やってますってかんじの活発そうな子だな。
日に焼けていて、スクール水着とか着せたらエロそう。
「え、俺?」
「そうよ、きみよ!」
きみとかいってけどさ……お前年下だろ? 敬語使え。
「なんか用か?」
俺は「そのケンカ買ってやる」と彼女と真っ向から向き合う。
ちょっと照れちゃう。褐色で目も大きいし、筋肉質なせいか胸もあまりない。
まあまあ好みかも~ 貧乳スク水、大好物!
「あのね、言いたいことはたっぷりあるわ! あなた、なんで私服で登校しているの?」
そう来たか。
「俺は三ツ橋の生徒ではない。通信制の一ツ橋の生徒だ」
すると彼女は顔を真っ赤にして、うろたえる。
「ウ、ウソよ! そう言ってたまに私服で来る生徒とかいるのよ! あなたは風紀を乱しているわ! それに不法侵入とも限らないわ」
いや、お前のミニ丈スカートの方がよっぽど男子の風紀を乱しているがな。
「あのな、俺は暇じゃないんだ……」
そう言うと、彼女に背を向けた。
「待ちなさい! 証拠を見せなさい!」
は? 俺は高校生ですけど、男ですけど、股間でも見たいのか?
「なんだ、俺を小学生と疑っているのか? そんなに俺の股間を確認したいのか?」
JKは耳まで真っ赤になる。
「バ、バカ! 生徒手帳よ!」
「なんだ、そっちか……」
「普通そうでしょ!」
俺はからっていたリュックから生徒手帳を出す。
まあなんだ、この生徒手帳とやらに俺は長年苦しめられていたのだが、1つだけ有効利用できるぞ。
映画館だ。今まで大人料金だったからな。学生として割引されるのが最高だ。
「ほれ」
「ん~」
彼女はじっと俺の生徒手帳を見る。
そんなに人の証明写真見つめないで、惚れちゃいそう。
「あ!」
思い出したかのように、彼女は姿勢を正す。まるで軍隊のようだな。
「あ、あの! 年上の方とは思いませんでした! 失礼しました!」
そう言って気まずそうに、彼女はその場から立ち去ろうとしたが、そうはいかん。
フェアじゃない。
「待てよ……お前、俺にだけ個人情報を晒させる気か」
「な、なんのことでしょう……」
その振り返り方は錆びたロボットだな。油をさしてやるから服を脱げ!
色々と確認してやる。
「お前も見せろ、生徒手帳。俺に“不法侵入”とかいう疑惑を立てたんだ。お前が不法侵入者だったらどうする?」
「はぁ! 私は見ての通り、正真正銘のリアルJKで、三ツ橋高校の生徒ですよ」
「わからんだろ、ただの通りすがりのJKのコスプレをしたおばさんかもしらん」
「そんなやつどこにいるんですか!」
「俺の知り合いでいるんだよ。アラサーのくせして、子供服を平気で着用しているバカ女が」
バカ女とは度々、劇中に現る『ロリババア』の担当編集のことだ。
「ええ……」
「まあとにかく見せろ」
「知ってどうするんですか! ま、まさか私のことを狙って……」
そうやって、胸を隠すぐらいならミニ丈になぞすんな! 男は勘違いしやすい生き物だということ再確認しろ。
自意識過剰な子だ。こういう子、ダメネェ~ ワタシ、キライネ~
「それは違う。不平等だと言いたいのだ。俺だけ見せて、お前が見せないというのがだ」
「は?」
「俺は物事を白黒ハッキリさせないと気が済まない性分なのでな」
「白黒って……ま、まさか! 私の……見たんですか!?」
そう言って、ミニのくせしてスカートの裾を少し下ろす。
白黒のパンツってなんだろ? シマパン?
「お前の脳内はお花畑か? 勘違いだ。立場が平等であるべきだろう。俺とお前はコースさえ違えど、同じ五ツ橋学園の生徒だ。そこはちゃんとしっかりさせろ」
「わ、わかりました……」
そう言うと、JKはブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出した。
「ふむ……」
証明写真の頃はまだロングヘアーか。今のショートカットの方が俺好みだな。
「な、なんですか? もう良くないですか? 長くないですか?」
「まだ見終わってない」
名前は1年A組、赤坂 ひなた……スリーサイズは書いてないよな……。
「赤坂 ひなたか、認識した。今度からは気をつけろよ」
俺がそう名前を呼ぶと、赤坂はなぜかビクッとした。
「は、はい……」
「お前の性格も中々におもしろいな。いいセンスだ」
一度でいいから言ってみたかった。
「いい……センス?」
お前も言いたかったのか。
「若いのに大した根性だと褒めている。お前も曲がったことが大嫌いなタイプだろ?」
赤坂は目を丸くして俺を見つめている。
「なんで……わかったんです?」
「この天才、新宮 琢人がそうだからな……」
「そう、ですか……」
なぜか彼女は言葉を失っている。
しおらしいところもあるのね……あ、女の子だから聖水か!?
これは撤収してやらねば! 俺ってばジェントルマン♪
「赤坂、お前は女だ。俺のように衝突ばかりしていたら、いつか身を危険に晒すぞ? もうこういうことはやめとけ」
「な、なんで新宮先輩にそんなこと言われなきゃ……」
年上って分かったからって、先輩呼ばわりすな! 仮にも身分的には同級生だろが!
「忠告はしたからな、じゃあな!」
そう言って、俺は振り返らずに手を振った。
やべっ、今の俺って超カッコよくない? 惚れさせてしまったかも?
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