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第二章 壊れたラジオ

夢見る少女☆ じゃなかった少年。

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「ね~え、タッくん……タッくんてば……」
 目の前には一人の少女がいる。
「たっくん、起きてよ☆」
「ああ、ミーちゃんか……おはよう」
 俺がミーちゃんと呼ぶ彼女は緑の瞳を輝かせ、金色の髪はポニーテールにして大きな赤いリボンでまとめている。
 しかも、かわいらしいフリルのエプロンをかけている。
 これで猫耳つければ、最高かよ。

「おはよ☆ 朝ご飯できたよ?」
「もうそんな時間か」
「顔を洗っておいでよ。私、リビングで待ってるね☆」
 そう言うと彼女は俺の頬に軽くキスをする。

「お、おう……」
 俺は戸惑いながらも、言われるがままに歯磨きと顔洗いを済ませ、リビングに着く。

「うん! スッキリしたね☆ 今日もタッくんはタッくんだね☆」
「そういう君はミーちゃんだな」
「「ふふふ」」
 見つめあって互いを確認するとイスに座る。

「今日もあっついね~」
 そう言って彼女はエプロンを隣りのイスにかけると、胸元があいたキャミソール姿になった。ちなみにイチゴ柄。
 パタパタと襟元で仰ぐ。その度に透き通った美しい白肌が垣間見える。
 もう少しで胸が見えそうだ。
「……」
 俺が呆然と彼女を見つめていると、「タッくん、早く食べないとお仕事遅れちゃうよ」と朝食を早くとるように促される。

「あ、いただきます」
「どうぞ☆」
 テーブルに並べられたのはホットサンド、サラダ。コーヒー。
 ホットサンドに手をつけると、俺好みの卵の味付けだということがわかる。甘いやつ。

「おいしい?」
 彼女は俺のことを愛おしそうに両手で頬づいて眺めている。

「ミーちゃんは食べないのか?」
「私はあとがいい」
「なんで?」
「だって、タッくん。今からお仕事でしょ? 帰ってくるまで長いこと会えないじゃん、寂しいから目に焼き付けときたいの」
「そ、そうか……」

「ほら……ケチャップついてるよ」
 ミーちゃんは俺の口元からケチャップを細い指で拭う。
 それを自身の桜色の唇に運んだ。
「間接キス☆ って、もうこんなのじゃときめかない?」
「……」

「ねぇ、タッくん……私のこと、今でも愛している?」
「もちろん……だよ、君ほどかわいい子はこの世で見たことがない」
「もう!」
 そう言うと彼女は頬をふくらませた。
「なんだ?」
「なんだじゃないでしょ? 私の質問に答えてない! もう一度聞くよ? 私のこと愛している?」
 むくれる彼女に俺は苦笑する。
「すまない……言い忘れていたよ。俺はミーちゃんを世界で一番愛している」
「嬉しい☆」
 そう言うと彼女はテーブル越しに俺の唇を奪った。
「ん……」



「だぁぁぁぁぁ!」
 なんだ今のクソみたいな夢は!?
 俺がなぜ、あんなやつと……。
 あいつは……あいつは、まごうことなきヤンキーで正真正銘の男の子!
 古賀こが ミハイル。
 俺は「やりますねぇ~」の動画を見すぎた影響が出たのか? と自身を疑った。


 スマホを見ると午前3時を示していた。
 もう少しでアラームが鳴るところだ。
「仕事、行くか……」
 俺はアラームを解除すると、簡単に着替えを済ませ、家族を起こさないように静かに家を出た。
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