ヒマを持てあます令嬢の人生ゲーム

蕪 リタ

文字の大きさ
上 下
5 / 10

5 楽しいたのしい学院生活

しおりを挟む
 どうやら、うまくいっているのは王子の婚約者でおジャマ要員の公爵令嬢が動いている・・・・・かららしい。らしいというのは、隠してもない悪意を向けてくる女子生徒たちの噂する声が耳に入ってきたから。
 
 なんで? 彼女も転生者とか? でも、なーんか様子がおかしいのよね。
 それより、王子と恋仲になったけど……おジャマ要員的には婚約者いらないのかな? 普通、「あんた何様よ⁉」とか「身分も釣り合わないのに、婚約者でもない人にベタベタと」とか言ってきそうなんだけど。
 
 そんなことを考えていたからなのか。
 くだんの公爵令嬢が取り巻きを引き連れて、前の方から歩いてくるのが見えた。っていうか取り巻き、多⁉ 何人いるのあれ。
 
 初めて見た公爵令嬢とその他大勢を見て若干じゃっかん引きながらも、頭で考えているのはやっぱりヒロインっぽく生きたいと思うわたしの次にする行動。
 ……せっかくだから、足ひっかけられた! とか言って、隣でコケてみる? いじめにたえるヒロインっぽく。あれだけ取り巻きいたら、誰かのせいにはできるでしょ?

 思ったら即行動。ヒロインだからいけるでしょ? って思いが強いから。
 そして、取り巻きよりすこし前方を歩く公爵令嬢が真横に来た瞬間……

 ドテンッ! 

 あれ?
 確かに、すっ転んだけど……おジャマ要員の足にぶつかった。よね? え?

 本気で顔面から転倒し、痛い鼻をおさえなが状況確認していたら、思わぬ方から声がした。


「あら。猫でも走っていたかしら」


 クスクスと聞こえる笑い声の合間から降ってきたのは、公爵令嬢本人・・の嫌味。
 あれ? わたし、本気でいじめられてる? もしかして、これはラッキーな状況なんじゃない⁉︎ 乗るしかないわ‼

 
「ひっひどいですぅ~。マルティナさまぁ」
「「「……」」」


 な、なんで周りのやつら、無言なのよ⁉ って、おジャマ要員はもう行こうとしてるし! え、無視なの? スルーなの? ん? いじめなら、これでいい? まあ、いっか。泣きマネしてたら、そのうち王子サマが来るでしょ。

 そんなことを考えていると、「みなさん、次の講義に遅れますわよ」とだいぶ離れたところから紅の髪が風にゆれるのと同時に流れてきた。歩くの速くない?
 汚いものでも見るような目でわたしを見ていたその他大勢は、その声とともに去っていく。
 残ったのは、泣きマネするわたし。
 あれ? 王子遅くない?


 それ以来。
 マルティナを見つけては、突っかかりに行き。本当に足をひっかけられ。
 王子の目を盗んでわざわざ一人になり、いじめを待つ。すると、バシャッと頭上から水が落ちてきたり。すれ違いざまに肩をぶつけられ、尻もちをついた先の泥をかぶったり。
 体を張るわたしを、取り巻きにやらせているマルティナが堂々と見物していた。隠れもせずに。
 
 ……ガチで、いじめを楽しんでいるように見えるのよ。あの顔。
 王子は助けてくれないし――目を盗んでわざわざ一人になってるわたしも悪いけど。
 ヒロインって、ここまで本当に・・・体を張る必要あったっけ?
 
 だんだん不安になってきたわたしは、なるべく一人にならないように・・・・・・・してみたんだけど……。
 
 気づいたら、一人にさせられている・・・・・・・のよ。
 
 そして。
 絶対、いるのよ。マルティナ。

 怖すぎて、ヒロインムーヴもやめたわ。
 やめたのに、やらされる・・・・・のよ。


 だから、王子に泣きついたのよ。
 「マルティナが怖い」って。
 それを聞いた王子は、「このままアイツを悪に仕立てあげて、糾弾しよう」って言いだしたの。
 それなら、このままヒロインとして断罪できるからゲーム通りでいいんじゃない? って、思って。王子の話に乗ったの。

 それがまた、いけなかったみたい。
 二人とも、マルティナの本当の怖さ・・・・・をわかっていなかったみたいで。
 
 ……ガチで、酷いめにあいかけたわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。 不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった! けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。 前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。 ……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?! ♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...