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第2話 愛されないという現実。気にもとめない心。
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ある日、領内で王家肝いりの教育改革が行われることになった。
教育の底上げのため、新たなアカデミーの建設と地方に低級学校が新設されることになった。
その事業の責任者の一人にオリスナが選ばれた。
落ちぶれたとはいえ、王宮勤めの経験と知識の豊富さを買われ、地方学校の設立に関わることになった。
そんな中、オリスナによく似た妹のエミリアが産まれる。
オリスナは自分の特徴を受け継いだエミリアを溺愛した。
「お姉ちゃんなのだからしっかり面倒をみるのよ。アリシア」
母の言葉にどう応えていいのかわからなかった。
5歳になったアリシアは、両親から愛されるエミリアが羨ましくてたまらなかった。
同じようにしたら愛されるかと思って、オリスナに甘えてみたこともあった。
「いつまで子どもじみたことをしているつもりだ。
淑女としてみっともない!
田舎の悪い影響を受けたな。そのようでは王都では笑いものだ。」
オリスナが冷ややかにアリシアを見つめた。
そんなアリシアに、彼の膝の上にいるエミリアは無邪気に笑いかけた。
7歳になるころには教育改革が軌道に乗り始めた。
しかし、絶対的な人員不足。
特に教師役が足りなかった。
ある日、オリスナに書斎に呼ばれる。
「低級学校の生徒たちの教育を、お前に任せる。
文字の読み書きと簡単な演算だけだ。お前でも十分できるだろう」
アリシアが驚きで固まった。
「・・私が教えるとなると、反発もあるのではないでしょうか?」
「大丈夫だ。年齢はお前とさほど変わらない子たちのクラスだ。
難しくはない。人手が足らないのだ。
すでに王都への書類も提出済みだ」
年が近いからこそ、反発する子もいると思う。
そのことを心配したのだが・・・彼がそんな心配を汲み取ることなかった。
アリシアの了承など、最初から得るつもりなどなかったのだ。
「私のような子どもが教えることに・・・王宮側は、納得されてるのですか?」
「この事業の責任者は私だ。裁量は任されている。
承認など必要はない。」
話を聞いたアリシアの瞳から感情が抜け落ち、視線は足元に向けられた。
何を言っても無駄だとあきらめた。
「なぜ、そんな陰気な顔をする?
給料としての金もでる。今のお前に必要はないだろうから、こちらで管理しておく。」
イライラしながら、オリスナは手を振った。
アリシアは一礼をすると部屋を後にした。
部屋を出ると母マリアとすれ違う。
事業が軌道に乗り、家にお金が入ってくるようになったおかげで最近のマリアの服装もきれいなものになっていた。
「お父様から聞いたと思うけど、お給金もでることだし、あなたにも新しい服を買わないとね」
「私の意見は聞いていただけないのですか?」
「あなた、服のセンスがないじゃない。
あなたの年齢なら明るいピンクや黄色が似合うのに、地味な服ばかり選ぶのだから」
(誰も、私の意見なんて必要ないのだわ)
目を伏せ、無言でアリシアは部屋に向かった。
「可愛げないわ。
少しはエミリアのように子どもらしく笑ったらいいのに。いつも暗い顔ばかり・・・」
後方でマリアが愚痴を言い始めたが、聞こえないふりをした。
自分はいったい何なのだろう?
淑女らしく?子どもらしく?姉らしく?
都合が良い、使い勝手が良い人形?
部屋に戻ると、アリシアは声を殺して泣いた。
教育の底上げのため、新たなアカデミーの建設と地方に低級学校が新設されることになった。
その事業の責任者の一人にオリスナが選ばれた。
落ちぶれたとはいえ、王宮勤めの経験と知識の豊富さを買われ、地方学校の設立に関わることになった。
そんな中、オリスナによく似た妹のエミリアが産まれる。
オリスナは自分の特徴を受け継いだエミリアを溺愛した。
「お姉ちゃんなのだからしっかり面倒をみるのよ。アリシア」
母の言葉にどう応えていいのかわからなかった。
5歳になったアリシアは、両親から愛されるエミリアが羨ましくてたまらなかった。
同じようにしたら愛されるかと思って、オリスナに甘えてみたこともあった。
「いつまで子どもじみたことをしているつもりだ。
淑女としてみっともない!
田舎の悪い影響を受けたな。そのようでは王都では笑いものだ。」
オリスナが冷ややかにアリシアを見つめた。
そんなアリシアに、彼の膝の上にいるエミリアは無邪気に笑いかけた。
7歳になるころには教育改革が軌道に乗り始めた。
しかし、絶対的な人員不足。
特に教師役が足りなかった。
ある日、オリスナに書斎に呼ばれる。
「低級学校の生徒たちの教育を、お前に任せる。
文字の読み書きと簡単な演算だけだ。お前でも十分できるだろう」
アリシアが驚きで固まった。
「・・私が教えるとなると、反発もあるのではないでしょうか?」
「大丈夫だ。年齢はお前とさほど変わらない子たちのクラスだ。
難しくはない。人手が足らないのだ。
すでに王都への書類も提出済みだ」
年が近いからこそ、反発する子もいると思う。
そのことを心配したのだが・・・彼がそんな心配を汲み取ることなかった。
アリシアの了承など、最初から得るつもりなどなかったのだ。
「私のような子どもが教えることに・・・王宮側は、納得されてるのですか?」
「この事業の責任者は私だ。裁量は任されている。
承認など必要はない。」
話を聞いたアリシアの瞳から感情が抜け落ち、視線は足元に向けられた。
何を言っても無駄だとあきらめた。
「なぜ、そんな陰気な顔をする?
給料としての金もでる。今のお前に必要はないだろうから、こちらで管理しておく。」
イライラしながら、オリスナは手を振った。
アリシアは一礼をすると部屋を後にした。
部屋を出ると母マリアとすれ違う。
事業が軌道に乗り、家にお金が入ってくるようになったおかげで最近のマリアの服装もきれいなものになっていた。
「お父様から聞いたと思うけど、お給金もでることだし、あなたにも新しい服を買わないとね」
「私の意見は聞いていただけないのですか?」
「あなた、服のセンスがないじゃない。
あなたの年齢なら明るいピンクや黄色が似合うのに、地味な服ばかり選ぶのだから」
(誰も、私の意見なんて必要ないのだわ)
目を伏せ、無言でアリシアは部屋に向かった。
「可愛げないわ。
少しはエミリアのように子どもらしく笑ったらいいのに。いつも暗い顔ばかり・・・」
後方でマリアが愚痴を言い始めたが、聞こえないふりをした。
自分はいったい何なのだろう?
淑女らしく?子どもらしく?姉らしく?
都合が良い、使い勝手が良い人形?
部屋に戻ると、アリシアは声を殺して泣いた。
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