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過去の清算。逆転された未来。(バーサル編)
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「エイダ、何か知っているのか?」
ぶるぶる震える伯爵代行夫人・・・エイダの顔色は真っ青だった。
「わた・・・わたしは・・・何も・・・何も・・・」
必死で頭を振る。
「奥様、隠し事は伯爵家のためにはなりませぬぞ」
その言葉にさらに体を震わせる。
暫くして、エイダは途切れ途切れに話始めた。
叔父が家を継ぐ書類をまとめている時、彼女は偶然その契約書類をみつけたらしい。
その書類が公になれば、自分の息子が伯爵家を継げなくなると考えた。
幸いにも内容の途切れ具合から、その一枚が無くなっても問題ないように思えた。
叔父の目を盗み、それを隠し、燃やして処分したという。
暫くは、自分のしたことに怯えていたが、何も起こらないので今の今までそんなものがあったことを、すっかり忘れていた。
「その書類があったら・・・息子が・・息子が・・・・なければ・・・息子が跡取りに・・・」
「’写し’に決まっているでしょう。原本は王都で保管されてますよ」
その言葉に頭を垂れるエイダ。
息子たちは何が起こったのか分からず、ぽかんとしている。
彼女が虐待に加担し、止めなかったのは俺が病気か事故で死ぬことを願っていたのかもしれない。
そうでなければ、使用人たちが伯爵家の血筋の者をあそこまで虐待できるはずもない。
女主人の許可があったのだろうな。
「契約に関わらず、血筋であるバーサル様の扱いのひどさは目に余ると公爵様はおっしゃっておられます。
サフィアスお嬢様のご意向もあり、これ以降バーサル様は公爵家預かりとなります。」
暫くの沈黙の中、これ以上話すこともないと判断したのか、クライシュ伯爵家代行であった叔父一家に背を向け、俺たちは出ていこうとした。
「これから・・これから・・我々はどうなるというのだ!!」
「そうですね・・・まだ決定ではありませんが。」
叔父の言葉に男は振り向き、少し考えこむ。
「こちらには、公爵家の監査人と管財人がおかれるようになるかと思われます。
あなた達が自由に使っていた財産はすべて監視下におかれ、渡された経費で生活のやりくりをなさっていただきます。」
「なんだと・・・」
「社交に関しては今まで通りなさっていただいてかまいませんが、毎回予算申請をだしてもらうことになりますね。
無駄と判断された場合はあきらめてください」
「そんな・・・そんなの、ただの雇われ者じゃない・・・」
「あなた方は本来そうだったんですよ・・・それと、あなた達がこれからどうなるかの決定権は成人されたバーサル様次第になるでしょう」
皆の目がが俺に集まる。
「公爵家で教育を受け、バーサル様が伯爵にふさわしい後継者と認められた場合、この家の権限はこの方に移ります。この方の同意があれば、あなた達が本当の伯爵になる道もあったかもしれませんが。」
男はシニカルな笑いを浮かべた。
「待って!!バーサル・・・あの・・・」
エイダが悲痛な声を上げて、話しかけてくる。
それを無視して、男の袖をひく。
「行きましょう」
「まて・・まってくれ・・・悪かった・・・だから・・・」
一家の悲痛な呼び止めを無視して、私たちは外へ出た。
ぶるぶる震える伯爵代行夫人・・・エイダの顔色は真っ青だった。
「わた・・・わたしは・・・何も・・・何も・・・」
必死で頭を振る。
「奥様、隠し事は伯爵家のためにはなりませぬぞ」
その言葉にさらに体を震わせる。
暫くして、エイダは途切れ途切れに話始めた。
叔父が家を継ぐ書類をまとめている時、彼女は偶然その契約書類をみつけたらしい。
その書類が公になれば、自分の息子が伯爵家を継げなくなると考えた。
幸いにも内容の途切れ具合から、その一枚が無くなっても問題ないように思えた。
叔父の目を盗み、それを隠し、燃やして処分したという。
暫くは、自分のしたことに怯えていたが、何も起こらないので今の今までそんなものがあったことを、すっかり忘れていた。
「その書類があったら・・・息子が・・息子が・・・・なければ・・・息子が跡取りに・・・」
「’写し’に決まっているでしょう。原本は王都で保管されてますよ」
その言葉に頭を垂れるエイダ。
息子たちは何が起こったのか分からず、ぽかんとしている。
彼女が虐待に加担し、止めなかったのは俺が病気か事故で死ぬことを願っていたのかもしれない。
そうでなければ、使用人たちが伯爵家の血筋の者をあそこまで虐待できるはずもない。
女主人の許可があったのだろうな。
「契約に関わらず、血筋であるバーサル様の扱いのひどさは目に余ると公爵様はおっしゃっておられます。
サフィアスお嬢様のご意向もあり、これ以降バーサル様は公爵家預かりとなります。」
暫くの沈黙の中、これ以上話すこともないと判断したのか、クライシュ伯爵家代行であった叔父一家に背を向け、俺たちは出ていこうとした。
「これから・・これから・・我々はどうなるというのだ!!」
「そうですね・・・まだ決定ではありませんが。」
叔父の言葉に男は振り向き、少し考えこむ。
「こちらには、公爵家の監査人と管財人がおかれるようになるかと思われます。
あなた達が自由に使っていた財産はすべて監視下におかれ、渡された経費で生活のやりくりをなさっていただきます。」
「なんだと・・・」
「社交に関しては今まで通りなさっていただいてかまいませんが、毎回予算申請をだしてもらうことになりますね。
無駄と判断された場合はあきらめてください」
「そんな・・・そんなの、ただの雇われ者じゃない・・・」
「あなた方は本来そうだったんですよ・・・それと、あなた達がこれからどうなるかの決定権は成人されたバーサル様次第になるでしょう」
皆の目がが俺に集まる。
「公爵家で教育を受け、バーサル様が伯爵にふさわしい後継者と認められた場合、この家の権限はこの方に移ります。この方の同意があれば、あなた達が本当の伯爵になる道もあったかもしれませんが。」
男はシニカルな笑いを浮かべた。
「待って!!バーサル・・・あの・・・」
エイダが悲痛な声を上げて、話しかけてくる。
それを無視して、男の袖をひく。
「行きましょう」
「まて・・まってくれ・・・悪かった・・・だから・・・」
一家の悲痛な呼び止めを無視して、私たちは外へ出た。
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