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25 取引を持ち掛けてみた。
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「応じていただけて、感謝いたします」
腕を軽く上げ、魔道具を王子に見せる。
「いまさら、私に何の用だ?」
「用といいますか・・・お願いがございます」
私がにこりと微笑む。
殿下が顔を歪める。
「私がお前の願いを聞く義理など、ないと思うが」
「聞いてくださった方が、殿下にもメリットがあると思いますよ?」
殿下が座るように促す。
「おもしろいことをいう。お前の願いをかなえることに、どんな得があるというのだ?」
「殿下は、サフィーを愛していて私が邪魔なのでしょう?」
「ああ。お前が憎くてしかたないよ」
睨まれてる。
胃痛が復活しそう。
平然として見せるために腹の底に力をこめる。
「では、私を殺してください」
殿下が目を見開いて、フリーズした。
「お前は何を言ってるのかわかっているのか?」
「あ、本当に殺してくれと言っているのではなく、偽装してほしいのです」
いろいろ考えてだした結論。
サフィーのことは嫌いじゃない。
むしろ、好きだ。
だけど、彼女の存在は私を殺す。
本能が危険を感じてしまった。
これ以上、彼女に振り回されればストレスが許容を超えて死ぬと。
好きだけど、手紙ですら吐いてしまう。
胃が拒絶反応を起こしている。
この状況を変えるには、サフィーか私かが、根本的に変わるしかない。
だけど、サフィーが自分を変えることはない。
自分のことが大好きで、自分が変わる必要性を感じないから。
そして、私も自分を変えることはない。
自分のことを間違っていると思ってないから。
ならば、社会的に立場が弱い方が駆逐されることになる。
弱いのは・・・私だ。
だから、私は逃げる。
しかも、中途半端な逃げ方をしたらサフィーを面白がらせる。
執着して追いかけてくる。
私の辛さや、傷ついていることが理解できないから。
結局、私が私であるが故に、最後は死ぬことになる。
ならば、殺される前に死ぬのだ。
生きるために。
ここで必要なのは、協力者だ。
私の死を偽装できる力をもっている人間がいる。
「そういうわけで、私の偽装と国外逃亡を助けていただきたいのです」
「簡単にできることじゃないだろう。金もかかるし、リスクが大きい」
鼻で笑う。
「資金はこれを壊して売ろうかなと」
魔道具を指さす。
「やめろ!それを開発するのにどれだけの予算がつぎ込まれたか・・・。わかった。私が金を出す。」
「あ、仕事も必要になるので、新しい身分と紹介状もほしいです」
私の要望に、殿下がため息をつく。
「・・・もっと、簡単な方法がある。今、ここで本当にお前を殺してしまうとかな」
殿下がにやりと笑う。
私が首を傾げる。
「やめた方がいいですよ」
「ふん・・・理由は?」
「保険がなくなります」
私は殿下を見据える。
「殺人は簡単なようで、リスクが大きすぎるんですよ。
今の時点で私が殺されれば、疑惑が残ります。
疑惑が残れば、サフィーが・・・公爵家が乗り出してくるでしょう。」
サフィーに頼まれた孫バカの公爵家が乗り出してくるとなると完全な証拠隠滅ができる確率がぐんと低くなる。
さらに私が抵抗すればするほど、その場には殺人の証拠が残りやすくなる。
その黒幕が殿下だと知れば、サフィーは必ず報復する。
「サフィーにとって、私は”身内”なんだそうです」
その言葉に殿下は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。
身内に対し、手を出したものをサフィーは決して許さない。
「この計画自体も上手くいくかどうかは賭けなのですが、ばれた時、私が生きていれば、殿下はあくまで協力者というだけですみます。
つまり、保険です」
殿下が自分の膝を、指でトントンとたたいてる。
私は平然としながらも、手に汗を握っていた。
「わかった」
殿下が頷いた。
「ありがとうございます」
賭けに勝ったようだ。
「惜しいな」
殿下がこちらを見ながらつぶやいた。
「何がですか?」
「お前が男で、フィーと関係がないところで出会っていたら、側近として働いてもらっていたかもしれないと思ってな」
「冗談でしょう?私は平々凡々牧歌的な人間ですよ?」
殿下が呆れている。
なぜ?
「普通の令嬢をフィーが気に入って、身内に入れるわけがないだろう」
理不尽!
腕を軽く上げ、魔道具を王子に見せる。
「いまさら、私に何の用だ?」
「用といいますか・・・お願いがございます」
私がにこりと微笑む。
殿下が顔を歪める。
「私がお前の願いを聞く義理など、ないと思うが」
「聞いてくださった方が、殿下にもメリットがあると思いますよ?」
殿下が座るように促す。
「おもしろいことをいう。お前の願いをかなえることに、どんな得があるというのだ?」
「殿下は、サフィーを愛していて私が邪魔なのでしょう?」
「ああ。お前が憎くてしかたないよ」
睨まれてる。
胃痛が復活しそう。
平然として見せるために腹の底に力をこめる。
「では、私を殺してください」
殿下が目を見開いて、フリーズした。
「お前は何を言ってるのかわかっているのか?」
「あ、本当に殺してくれと言っているのではなく、偽装してほしいのです」
いろいろ考えてだした結論。
サフィーのことは嫌いじゃない。
むしろ、好きだ。
だけど、彼女の存在は私を殺す。
本能が危険を感じてしまった。
これ以上、彼女に振り回されればストレスが許容を超えて死ぬと。
好きだけど、手紙ですら吐いてしまう。
胃が拒絶反応を起こしている。
この状況を変えるには、サフィーか私かが、根本的に変わるしかない。
だけど、サフィーが自分を変えることはない。
自分のことが大好きで、自分が変わる必要性を感じないから。
そして、私も自分を変えることはない。
自分のことを間違っていると思ってないから。
ならば、社会的に立場が弱い方が駆逐されることになる。
弱いのは・・・私だ。
だから、私は逃げる。
しかも、中途半端な逃げ方をしたらサフィーを面白がらせる。
執着して追いかけてくる。
私の辛さや、傷ついていることが理解できないから。
結局、私が私であるが故に、最後は死ぬことになる。
ならば、殺される前に死ぬのだ。
生きるために。
ここで必要なのは、協力者だ。
私の死を偽装できる力をもっている人間がいる。
「そういうわけで、私の偽装と国外逃亡を助けていただきたいのです」
「簡単にできることじゃないだろう。金もかかるし、リスクが大きい」
鼻で笑う。
「資金はこれを壊して売ろうかなと」
魔道具を指さす。
「やめろ!それを開発するのにどれだけの予算がつぎ込まれたか・・・。わかった。私が金を出す。」
「あ、仕事も必要になるので、新しい身分と紹介状もほしいです」
私の要望に、殿下がため息をつく。
「・・・もっと、簡単な方法がある。今、ここで本当にお前を殺してしまうとかな」
殿下がにやりと笑う。
私が首を傾げる。
「やめた方がいいですよ」
「ふん・・・理由は?」
「保険がなくなります」
私は殿下を見据える。
「殺人は簡単なようで、リスクが大きすぎるんですよ。
今の時点で私が殺されれば、疑惑が残ります。
疑惑が残れば、サフィーが・・・公爵家が乗り出してくるでしょう。」
サフィーに頼まれた孫バカの公爵家が乗り出してくるとなると完全な証拠隠滅ができる確率がぐんと低くなる。
さらに私が抵抗すればするほど、その場には殺人の証拠が残りやすくなる。
その黒幕が殿下だと知れば、サフィーは必ず報復する。
「サフィーにとって、私は”身内”なんだそうです」
その言葉に殿下は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。
身内に対し、手を出したものをサフィーは決して許さない。
「この計画自体も上手くいくかどうかは賭けなのですが、ばれた時、私が生きていれば、殿下はあくまで協力者というだけですみます。
つまり、保険です」
殿下が自分の膝を、指でトントンとたたいてる。
私は平然としながらも、手に汗を握っていた。
「わかった」
殿下が頷いた。
「ありがとうございます」
賭けに勝ったようだ。
「惜しいな」
殿下がこちらを見ながらつぶやいた。
「何がですか?」
「お前が男で、フィーと関係がないところで出会っていたら、側近として働いてもらっていたかもしれないと思ってな」
「冗談でしょう?私は平々凡々牧歌的な人間ですよ?」
殿下が呆れている。
なぜ?
「普通の令嬢をフィーが気に入って、身内に入れるわけがないだろう」
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