公爵令嬢に婚約解消された王子は子爵令嬢を断罪する~それって王子の自業自得です~

涼石

文字の大きさ
上 下
23 / 32

23 女性だけのお茶会。

しおりを挟む
別部屋にお茶とお菓子が用意されていた。

王妃様、サフィー、セシル様、私という顔ぶれ。

ナキッシュ殿下は、サフィーとの正式な婚約解消がよほど堪えたのか会話にならず、付き人とともに王宮に戻ったようだ。

「本当に情けない」

王妃はため息をついた。

「今回のこと、リリシーヌ嬢には迷惑をかけました。
あれほど愚かとか思わなかったわ」

「とんでもございません。王妃様の手を煩わせてしまって、申し訳ございません。
でも・・・ありがとうございました。正直もうだめだと思いました」

あのお嬢三人衆も、泣きながら謝ってきた。
さすがに懲りたようで、二度と関わらないと言ってきた。

・・・少し寂しい。

なにしてくるか、ちょっと楽しみだったのに。

「どうして殿下が愚行に走るって、わかったのですか。」

私が首をかしげると、王妃が噴き出した。

「愚行って・・不敬よ?あなた」

セシル様にあきれられました。

ああ!
ついホッとして。

「いいのよ。その通りだわ。あれは愚行よね」

笑いながら、許してくださった。
王妃様がおおらかな人で助かった。

「まずね。サフィーちゃんから正式な婚約解消の申し入れがあったの」

王妃様によると、王家としては政治的思惑が絡む以上、できれば婚約は撤回したくない。
そこで、条件を出した。
もし半年以内に王族としてふさわしくない行いをナキッシュ殿下がした時には申し入れを受諾すると約束した。

半年どころか、数日もたなかった。

「でも、決行日がよくわかりましたね。」
「それは、私が殿下の計画をサフィアス様にお話ししたから」

セシル様がにっこりと笑う。

セシル様って、殿下側の人間じゃなかったの?

「さすがにね・・・殿下からの申し出を無下にはできなかったわ」

最初は殿下に恩を売るつもりだったのだという。

風向きが変わったのは、お嬢三人衆が私に絡んできた時。

おバカたちが調子に乗って、余計な情報を私に与えていた。
その様子を見て、計画の成功率は低いと判断。

同じころ、世話係のバーサル様から彼女に接触があり、サフィーとこっそり話し合うことになった。

そこで、サフィーは殿下が動きやすいように総会を欠席するという情報をわざと流した。

「ずいぶん、お利口さんになったものね、セシル嬢。」
「やめてくださる?あなたとは関わりたくないのよ」

セシル様が、心底嫌そうにサフィーを見た。
余程、嫌な目にあったらしい。

確かにセシル様の見た目に騙された。

何もできないか弱い女性じゃない。
状況判断が早くて的確。
そして、強か。

「あなたも大変な人に気に入られたわね。
この人には気に入られても、嫌われても地獄よ?」

同情の目で見られました。
確かに。

「つまり、今回私だけが知らずに囮に使われたと・・・」

「違うのよ!ちゃんと守る自信があったし、死ぬほどの危険はないと思っていたから!」
「ふーーん、死ななければ良いと思っていたと?」

私がさらに追い打ちをかける。
必死に言い訳をするサフィー。

その様子を驚いたように、二人は見ていた。

「なるほどね。あの殿下が嫉妬するわけね」

セシル様があきれている。

「私もそろそろ戻らないと。あの愚息を躾をし直さないとね」

王妃様が微笑むのだけど、凄みを感じるのはなぜだろう。
殿下、がんばれ。

「権力を利用して事を起こせば、もっと大きな権力でつぶされることを今回のことで学んでくれるといいのだけど・・・」

王妃様はそう言って部屋を出ていった。

やっと、ひと段落ついたのだと実感がわいてきた。

「本当に修道院行きになるかと思った。助けてくれてありがとう。」
「この人に言う必要はないと思うわよ。元凶でしょう?」

セシル様が肩をすくめる

「ひどいわね。元凶はバカ殿下よ」
「不敬罪ですわね」

意外と仲が良い二人を見ながら、苦笑した。

お茶のお代わりをもらおうと立あが・・・



あれ?



なんだろう、世界が回る。


「リリ!!」


えっと・・力が入らない。
手足が軽く震える。
立っていられない。

寒い・・・

あ、これ死ぬ時のやつ・・・?・・


目の前が暗くなり、世界からゆっくりとフェードアウトしていく。




遠くにサフィーの声を聴きながら、私は気を失った
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...