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22 権力を使うもの、権力によって墓穴に落ちる。

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「なぜ、ここに?今日は王宮に行っているはずだろう?」

殿下の顔色が悪い。
やはり、今日この時間に、サフィーがいないことを知っていて、行動におこしたのか。

「ええ、参りましたわ。特別なお客様をお迎えするために」
「客?」

サフィーが中に入り、横へ下がる。

講堂がざわめき、次の瞬間、殿下除き全員が頭を下げた。


「は・・母上・・・なぜ、ここに?」
「サフィアス嬢に呼ばれてね」

サフィーがにっこりと笑う。

「それより、これはどういうことかしら?」
「そ、それは」

殿下の目が泳ぐが、次の瞬間、平静を取り戻す。

「生徒間のトラブルがありましたので、対応していたところでございます。
母上には関係ございません」

「お黙りなさい!」

鋭い言葉に、殿下が気圧される。

「最初から見てましたが、このようなつるし上げじみたことを証拠もなしにするとはなさけない。恥を知りなさい。」

王妃が静かな怒りを垣間見せる。

「そ、そんなことはございません。証人もおります」

殿下がさらに言い募る。

王妃がちらりと三人に目を向ける。
三人はがくがくと頭を下げたまま震えている。

「王妃たる私があなたたちに尋ねます。
あなたたちが嫌がらせや殺人未遂の現場を見たというのは本当なのかしら。」

「あの・・そ、それは・・・」

ダーナ嬢たちの顔色が青を通り越して、真っ白くなっている。

「いいですか?私にウソをつくということがどういうことかよく考えなさい。
その上でもう一度聞きます」

王妃が言葉を切る。



「申し訳ございません」

三人はその場にひれ伏した。

「殿下に言われ・・・仕方なく・・・」

「お前ら!!」

かっとした殿下が三人につかみかかろうとする。

「おやめなさい!」

王妃の鋭い静止に、殿下の動きが止まる。

・・・強い。
これが上に立つ人のオーラ。

「そう。あなたたちは殿に仕方なく従ったのね」

王妃が微笑みながら、優しい口調で尋ねる。

「あ・・・は・・・はい・・」

三人は必至に首だけを動かしている。

その様子を見て、王妃が全校生徒の方へと向き直る。

「今回、殿によって、貴重な学びの時間を浪費させてしまったことを申し訳なく思います。
リリシーヌ=カルシア子爵令嬢はセシル=ブラン伯爵令嬢対し、害なすことなどしておりません。
事前にセシル嬢から、殿下の思い違いについて相談を受けていましたから。
彼女の無実は、私が証言いたしましょう」

「・・どういう・・ことだ?」

殿下が、セシル嬢へ顔を向ける。

「ナキッシュ様、ごめんなさい。
さすがに公爵令嬢のお気に入りに手を出すのはまずいと思いますよ?」

声も可憐。

彼女は殿下からすっと離れ、私の傍らへと移動する。
あ、花の香りがする。
スズランかな?。

王妃がこちらを向く。

「これ以上の詳しいお話は別室でしますね」

次に全生徒へと顔を向ける。

「この騒動はこれにて終わりにします。
なお、殿下はまだまだ若輩であり、今は勉学のみに励むべきと判断してサフィアス嬢との婚約は正式に白紙に戻りました。
今後はそのように心得てください」

最後に、ナキッシュ殿下を見る。

「殿下、あなたの浅慮が招いたことです。心して結果を受け止めなさい」

王妃の言葉に、殿下は膝から崩れ落ちた。
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