7 / 32
7 迷惑なサプライズは人を黙らせ、はた迷惑な人は不穏を呼び寄せる。
しおりを挟む
あ、このパン、オレンジが練りこんである。
甘くておいしい。
もきゅもきゅもきゅもきゅ
パンを租借する。
「ねぇ・・・」
もきゅもきゅもきゅ
「リシー、ねぇってば」
「なんでしょうか?サフィアス様」
「怒ってるの?」
「いいえ」
「悪かったわ。ナッシュってば過保護なのよ。あなたに一回合わせろってきかなかったのよ」
サフィーがしゅんとする。
「別に、気軽にランチを食べるだけと思ったら、衆人環視の中、特権階級御用達の席までさらし者にされて、話に聞いたこともない友人の婚約者と引き合わされて、しかもその相手が王族なもので、不敬罪にならないかびくびくしながら食べる高級ランチが食べた気にもならなかったことなんて・・・全然気にしてないわよ?」
「怒らないでよ。ほら、私ってこの通り全てを持ってるから。
いろんな意図で近づいてくる人が多いのよ。
心配だったみたいで。
彼も多忙だから、この時間くらいしか予定がつかなくて」
「事前に一言あってもよくない?」
「えっと・・・サプライズ的な刺激?」
ええ、大成功ですよ。
大いに迷惑なだけで。
公爵家の令嬢で、婚約者は第ニ王子。
美貌も才能も確かにあふれるほどもってる。
サフィーの言うことは、自慢でも嫌味でもない。
事実。
ため息が出る。
「私のところにも、サフィーに紹介してほしいと親しくもない人が声かけてきたよ」
「あら、何かあったの?」
廊下で、サフィーとのやり取りがあった次の休憩時間のこと。
いつも私に嫌がらせをしてくるご令嬢たちが、近づいてきた。
『一体どうやって、取り入ったのかしら?』
『あなたのような地味な子爵家風情が、あの方と親しいなど、思いあがらないことですわ』
『そうですわ。サフィアス様にはブロンディ伯爵令嬢であるダーナ様のような方こそ、ふさわしいですわ』
『身の程をわきまえられては、いかがかしら?』
『ちゃんとあなたから、サフィアス様にダーナ様のことをお伝えすべきではないかしら?
それができたら、私たちの仲間に入れてあげてもよろしくてよ?
光栄でしょ?』
好き勝手言ってきた。
真ん中の奥で扇を手に取り、うっすらと嫌な笑いを浮かべているのがダーナ=ブロンディ伯爵令嬢。
やかましいのは取り巻きその1その2。
適当なところで、うっかりトカゲを足元に落としたら悲鳴を上げて逃げていったけど。
おもちゃだけど。
裁縫練習を兼ねて作ってみた縫いぐるみ。
出来はそれほど良くないけれど、自分たちがホンモノを使ったので、本物のトカゲを投げられたと思ったのかな。
因果応報。
早とちりなご令嬢たちで助かるわ。
簡単に説明をしたところ、サフィーがニンマリと笑った。
「それじゃ、お詫びを兼ねて、その子たちに会ってあげるわ」
「え?さらに面倒になりそうなのでいいです」
即、お断り。
彼女たちの仲間になりたくもないし、仲間と思われたくない。
「だって、リシーもその子たちにまとわりつかれて、困っているのでしょう?」
気遣うような言い方だけど、隠しきれてないワクワク感が滲み出ています。
「・・・何か、たくらんでいるでしょ?」
「何も?」
全く信用できない。
甘くておいしい。
もきゅもきゅもきゅもきゅ
パンを租借する。
「ねぇ・・・」
もきゅもきゅもきゅ
「リシー、ねぇってば」
「なんでしょうか?サフィアス様」
「怒ってるの?」
「いいえ」
「悪かったわ。ナッシュってば過保護なのよ。あなたに一回合わせろってきかなかったのよ」
サフィーがしゅんとする。
「別に、気軽にランチを食べるだけと思ったら、衆人環視の中、特権階級御用達の席までさらし者にされて、話に聞いたこともない友人の婚約者と引き合わされて、しかもその相手が王族なもので、不敬罪にならないかびくびくしながら食べる高級ランチが食べた気にもならなかったことなんて・・・全然気にしてないわよ?」
「怒らないでよ。ほら、私ってこの通り全てを持ってるから。
いろんな意図で近づいてくる人が多いのよ。
心配だったみたいで。
彼も多忙だから、この時間くらいしか予定がつかなくて」
「事前に一言あってもよくない?」
「えっと・・・サプライズ的な刺激?」
ええ、大成功ですよ。
大いに迷惑なだけで。
公爵家の令嬢で、婚約者は第ニ王子。
美貌も才能も確かにあふれるほどもってる。
サフィーの言うことは、自慢でも嫌味でもない。
事実。
ため息が出る。
「私のところにも、サフィーに紹介してほしいと親しくもない人が声かけてきたよ」
「あら、何かあったの?」
廊下で、サフィーとのやり取りがあった次の休憩時間のこと。
いつも私に嫌がらせをしてくるご令嬢たちが、近づいてきた。
『一体どうやって、取り入ったのかしら?』
『あなたのような地味な子爵家風情が、あの方と親しいなど、思いあがらないことですわ』
『そうですわ。サフィアス様にはブロンディ伯爵令嬢であるダーナ様のような方こそ、ふさわしいですわ』
『身の程をわきまえられては、いかがかしら?』
『ちゃんとあなたから、サフィアス様にダーナ様のことをお伝えすべきではないかしら?
それができたら、私たちの仲間に入れてあげてもよろしくてよ?
光栄でしょ?』
好き勝手言ってきた。
真ん中の奥で扇を手に取り、うっすらと嫌な笑いを浮かべているのがダーナ=ブロンディ伯爵令嬢。
やかましいのは取り巻きその1その2。
適当なところで、うっかりトカゲを足元に落としたら悲鳴を上げて逃げていったけど。
おもちゃだけど。
裁縫練習を兼ねて作ってみた縫いぐるみ。
出来はそれほど良くないけれど、自分たちがホンモノを使ったので、本物のトカゲを投げられたと思ったのかな。
因果応報。
早とちりなご令嬢たちで助かるわ。
簡単に説明をしたところ、サフィーがニンマリと笑った。
「それじゃ、お詫びを兼ねて、その子たちに会ってあげるわ」
「え?さらに面倒になりそうなのでいいです」
即、お断り。
彼女たちの仲間になりたくもないし、仲間と思われたくない。
「だって、リシーもその子たちにまとわりつかれて、困っているのでしょう?」
気遣うような言い方だけど、隠しきれてないワクワク感が滲み出ています。
「・・・何か、たくらんでいるでしょ?」
「何も?」
全く信用できない。
0
お気に入りに追加
382
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。
妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる