公爵令嬢に婚約解消された王子は子爵令嬢を断罪する~それって王子の自業自得です~

涼石

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7 迷惑なサプライズは人を黙らせ、はた迷惑な人は不穏を呼び寄せる。

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あ、このパン、オレンジが練りこんである。
甘くておいしい。

もきゅもきゅもきゅもきゅ

パンを租借する。

「ねぇ・・・」

もきゅもきゅもきゅ

「リシー、ねぇってば」
「なんでしょうか?サフィアス様」
「怒ってるの?」
「いいえ」
「悪かったわ。ナッシュってば過保護なのよ。あなたに一回合わせろってきかなかったのよ」

サフィーがしゅんとする。

「別に、気軽にランチを食べるだけと思ったら、衆人環視の中、特権階級御用達の席までさらし者にされて、話に聞いたこともない友人の婚約者と引き合わされて、しかもその相手が王族なもので、不敬罪にならないかびくびくしながら食べる高級ランチが食べた気にもならなかったことなんて・・・全然気にしてないわよ?」

「怒らないでよ。ほら、私ってこの通り全てを持ってるから。
いろんな意図で近づいてくる人が多いのよ。
心配だったみたいで。
彼も多忙だから、この時間くらいしか予定がつかなくて」

「事前に一言あってもよくない?」

「えっと・・・サプライズ的な刺激?」

ええ、大成功ですよ。
大いに迷惑なだけで。

公爵家の令嬢で、婚約者は第ニ王子。
美貌も才能も確かにあふれるほどもってる。
サフィーの言うことは、自慢でも嫌味でもない。

事実。

ため息が出る。

「私のところにも、サフィーに紹介してほしいと親しくもない人が声かけてきたよ」

「あら、何かあったの?」

廊下で、サフィーとのやり取りがあった次の休憩時間のこと。

いつも私に嫌がらせをしてくるご令嬢たちが、近づいてきた。

『一体どうやって、取り入ったのかしら?』
『あなたのような地味な子爵家風情が、あの方と親しいなど、思いあがらないことですわ』
『そうですわ。サフィアス様にはブロンディ伯爵令嬢であるダーナ様のような方こそ、ふさわしいですわ』
『身の程をわきまえられては、いかがかしら?』
『ちゃんとあなたから、サフィアス様にダーナ様のことをお伝えすべきではないかしら?
それができたら、私たちの仲間に入れてあげてもよろしくてよ?
光栄でしょ?』

好き勝手言ってきた。

真ん中の奥で扇を手に取り、うっすらと嫌な笑いを浮かべているのがダーナ=ブロンディ伯爵令嬢。
やかましいのは取り巻きその1その2。

適当なところで、うっかりトカゲを足元に落としたら悲鳴を上げて逃げていったけど。

おもちゃだけど。

裁縫練習を兼ねて作ってみた縫いぐるみ。
出来はそれほど良くないけれど、自分たちがホンモノを使ったので、本物のトカゲを投げられたと思ったのかな。

因果応報。
早とちりなご令嬢たちで助かるわ。

簡単に説明をしたところ、サフィーがニンマリと笑った。

「それじゃ、お詫びを兼ねて、その子たちに会ってあげるわ」
「え?さらに面倒になりそうなのでいいです」

即、お断り。
彼女たちの仲間になりたくもないし、仲間と思われたくない。

「だって、リシーもその子たちにまとわりつかれて、困っているのでしょう?」

気遣うような言い方だけど、隠しきれてないワクワク感が滲み出ています。

「・・・何か、たくらんでいるでしょ?」
「何も?」



全く信用できない。
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