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2 前世の記憶、私を駄目にする。

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ある日、目が覚めた時、私は別人になっていた。

いや、正確には前世の私を思い出した。

長くリアルな夢を見ていた感じだった。

私は日本の・・・豪雪地帯といってもいいような雪がふる田舎で育った。
休日を利用してスキー場に遊びに行ったら、雪崩に巻き込まれた。
死亡。
そのせいか、寒いのが苦手。

前世の私、仕事ハードで、男運にも恵まれてなかった。

・・・・

すみません、見栄はりました。

男運、なかった。
出会いなかった。

長生きしても孤独死だったと思う。
泣ける。

そんな私が全然違う世界に生まれた。

このパターン、チート無双がお約束のはず!
そんなことを思った時期もありました。

なかった。
特殊スキル、全然なかった。

異世界を変えるような知識も、神様に出会った記憶も、ゲームの定番ステイタスボードが出てくるようなこともなかった。

そりゃ、神様も本気で世界を変えたいなら、もっとぶっとんだ歴史的偉人を転生させるに違いない。

小市民を転生させたところで、海にペットボトルの水を注ぐようなもの。

本気なら、坂本龍馬とか織田信長みたいな魂を転生させるよね。

世界が変わるというより、破壊されるかもだけど。

それどころか、前世に引きずられて価値観がずれはじめた。
貴族とか日本にはいなかったし。

お茶会とか、会社の給湯室でしてたくらい。

社交をこなしつつ、年若きお嬢様方と恋バナ。
これ地味にきつい・・・。

ご令嬢たちの『素敵ですわ~』と熱視線を送る相手が子どもすぎて無理。
こんな子どもがいたらいいなぁという視線でしか見れない・・・。



むしろ、対象はお父様方通り越して、お爺様方。

既婚者ダメ。
浮気ダメ。
不倫イクナイ!

結局ここでも、出会いがない・・・。

だが、中身は大人な私。

子どもたちの視線に合わせた会話をしていた・・・はずなのに。

『私たちをバカにしている』という苦情をいただきまして。
遠巻き、嫌味、嫌がらせというテンプレをいただきました。

貴族の子どもたち、前世の子よりずっと大人びてた。
洞察力舐めてた。

今世も、社交性を身に着けることが課題の人生です。

もちろん、無視はともかく、嫌がらせやいじめをされたら、やり返すのは三回に一度くらいにしてますよ?
大人ですからね。


・・・


やり返している段階で、大人げない子どもじみている私はだめなやつです。


そういうわけで、私にとって前世の記憶などというものは、プラスマイナスでトータルマイナス。

こんな風に、記憶をもって生まれ変わることがあるとわかっていたら、頑張ったのに。
いろいろな知識ため込んでおいたのに・・・残念な私の前世。

悲しくなってきた。

日本と比べて人の命がめちゃくちゃ軽いこの世界・・・その片隅で平穏無事に終えようと心に決めた。
細く長く穏やかに。

そのために掲げた”目立たず、騒がず、関わらず”の三か条をぶち壊される日がくるとは思わなかった。



彼女・・・公爵令嬢サフィアスとの出会いによって。
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