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第7話 作戦会議。
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ボクは「蟲の宴」のアプリをダウンロードしてプレイした事。そしてこの後ゲーム世界と酷似した現象が起こり、みんなが死んでしまう事。そしてボクは変身して戦う力を持つが、ボスに敗北した事。コンティニューして今やり直している事。それらを真剣に話した。
この場にいるのはボク、カオル、ヨッシー。そして弥太郎君と不良仲間の二人。そしてクラスメイトの男子と二人と女子四人。幼なじみの二人以外は親しい間柄とは言えない。だけど、ボクは信じてもらおうと必死だった。
「 お前、それマジで言ってんのかよ! 頭おかしいんじゃねぇ?」
弥太郎君の不良仲間の一人、竜司君がそう言って笑った。
「これさ、あれじゃね? ドッキリって奴。どっかで誰かカメラ回してんだろ。文化祭近いしさ。ぜってぇそうだ。な、そうなんだろ弥太郎。お前も一枚噛んでるんだろ?」
弥太郎君のもう一人の不良仲間、虎丸君がキョロキョロと辺りを見回す。
弥太郎君は二人をギロリと睨む。うわ、怖い。
「ツバサが今話した事は、多分本当だ。俺もそのゲームをダウンロードした。速攻で飽きたから最初の方しかやってないけどな。だからなのかわかんねーけど、俺もツバサと同じように一度死んだ記憶がある。そのゲームに登場した化け物が出てきて、みんな食っちまった。俺は粘ったけど、結局最後に食われた」
弥太郎君は、クラスでは悪い意味で一目置かれている。そんな彼が真剣に話したので、みんな言葉を失った。信憑性が少し増したのかも知れない。
「信じてくれ。俺は喧嘩は得意だけど、嘘をつくのは苦手だ。みんなをからかうつもりもない。ついでに俺の秘密も話しておく。俺は、未来に起こる事がわかるんだ。ガキの頃からそうだった。予知能力って言うらしんだけどよ」
弥太郎君は、そこで一旦話を区切った。ボクらの反応を見ているのかも知れない。きっとボクも含めてみんな、予知能力という言葉に驚いているだろう。弥太郎が超能力者だなんて、全然似合わない。
「ツバサがいう『前回の宴』の時、俺は化け物たちが来るのを予知していた。けど、そんなの誰が信じてくれる? 今竜司や虎丸が言ったみたいに、バカにするのは読めてる。だから諦めたんだ。俺はゲームをやり込んでねぇし、化け物の対処法もわからねぇ。だけどツバサには生きてて欲しかった。俺は......ツバサの事が、好きだ」
そう言って顔を赤らめる弥太郎君。
「はぁぁぁー!?」
全員が口を揃え、呆れた声を出した。
「おいおい、冗談だろ箱根弥太郎。ツバサは男だぜ? 確かに女みてぇに可愛いけどよ」
カオルがそう言って苦笑いする。
「まぁ、昔からツバサ君はモテてたけどねー。男子にも」
ヨッシーもクスッと笑う。
「もー、やめてよ二人とも。弥太郎君、ボクを好きって言ってくれるのは嬉しいけど、ボクは正真正銘の男の子だよ。悪いけど、気持ちには答えられないよ。友達なら喜んでなるけど」
弥太郎君、てっきりボクの事を嫌いなんだと思ってた。でも、今思い返せば別にイジメを受けた事はないかも。ロッカーに閉じ込められたのが、初イジメだ。本当は違ったけど......。ボクが勝手に怯えていただけだった。
根掘り葉掘りボクの事を聞いてきたのは、ボクが好きだったからって事?
「そんなの知ってるさ。だけど、俺の予知能力では俺とツバサは結婚する。俺の予知は特殊でね。確定した未来しか見る事が出来ない。変更可能な......例えば話の内容とか、不確定な要素を含む未来は予知出来ないんだ。その予知で俺が見る未来。何年先かはわからないけど、ツバサは赤ん坊を抱いてた。母親になってたんだ」
弥太郎君は自信たっぷりにそう言った。
「ええー!?」
またみんなが口を揃える。
「いやいや、ありえないっしょ」
「ツバサ君性転換するって事?」
「あー、ありえるか」
「でも、それじゃ子供産めなくない?」
男女のクラスメイトたちが、ざわざわする。
「どういう事なのかはわかんねー。だけど俺は、自分の予知に絶対の自信を持ってる。だからツバサが本当は女だと思ってたんだけど......」
「いやいやいや! 男だよ! ちんちんついてるよ!」
ボクは必死に弁明した。ボクが女って言う噂が流れちゃったら、彼女出来なくなる。それは嫌だ。
「なー、だいぶ話がそれてねぇか? お前が変態だって事は良くわかったからさ、話進めようぜ」
カオルがニヤッとしながら弥太郎君の肩をポンと叩いた。
「誰が変態だ! 俺は別に、男が好きな訳じゃねーぞ! ちっ、まぁいい。時間もねーし、話を進めるぜ。とにかく! ツバサの言ってる事も、俺の言ってる事も本当だ! ツバサの言う『奇蟲人』って化け物をぶっ殺して、全員で生き延びる。作戦はツバサに任せようぜ。こいつはゲーマーだからな。前回ボスまで行ったらしいしよ」
弥太郎君の言葉で、みんながボクに注目した。やった! みんな、話を聞く態勢になってくれたぞ!弥太郎君のお陰だ。
ボクは弥太郎君を見た。すると弥太郎君は目をそらし、恥ずかしそうにおでこを掻いた。
ボクは彼に好感を抱いていた。今まで嫌っていた事、怖がっていた事。それらが誤解だったと気づいた事で、感情が百八十度回転した。ギャップ萌え、みたいな。
いや、別に恋愛感情じゃないよ! ボク、女の子が好きだもん!これは友愛だよ、友愛。
ま、それはさておき。作戦を立てよう。
「えっとね、まず奇蟲人が最初に現れるのは三箇所。この教室前の廊下と、二年三組前の廊下。それと三階の生徒指導室の近くだ」
「なんでそんな事までわかるんだ?」
ボクの説明に、弥太郎君が疑問を唱える。
「ボクの頭の中に、スマホからアプリが移動してるんだ。アプリにはマップ機能もあって、生存者は青丸。奇蟲人は赤丸で表示される。前回、ボクはマップを切り替えながら全体を見ていたんだ。弥太郎君も『蟲の宴』ダウンロードしてたんだよね?!もしかして弥太郎君の頭にも、アプリ入ってるんじゃない?」
ボクの問いかけに、弥太郎君は頷いた。
「確かに入ってる。気持ち悪くてあんまり見ないようにしてたけど、そんな機能もあったのか。なるほどなー」
弥太郎君は遠くを見つめた。きっと今マップを確認してるんだろう。
「やっぱり入ってるんだ。じゃあ弥太郎君も宝珠を使えるね」
「まぁ、そうなるな。俺はゲームでもすぐ死んでたから使った事は無いけど......。変身できるんだよな?」
「うん。二人で変身出来れば、かなり楽にボスを倒せると思う」
「おー、そうだな! よっしゃ、燃えてきた!」
ガッツポーズを取る弥太郎君。
「あはは。まずは宝珠を手に入れないとね。最初に説明した通り、宝珠は奇蟲人の頭を破壊すれば手に入る。二手に別れよう。ボクとカオルがこの一年三組の教室。ヨッシーと弥太郎君は、三階の生徒指導室前だ。先に奇蟲人を倒したペアが、二階に降りて二年三組の奇蟲人を倒す。どうかな」
ボクはみんなを見回した。戦闘に参加するメンバーは強い意志でボクを見返す。それ以外の待機組は、不安そうにお互いの視線をかわした。
「ツバサと一緒にいたいけど、アプリを持った奴がいないと宝珠は出ないんだもんな。俺とツバサが一緒にいるのは作業効率が悪い。しゃーねー。この脳筋と頑張るぜ」
弥太郎君に脳筋と言われ、ヨッシーは不服そうだ。
「あのさ、その呼び方は失礼じゃないかな。僕には良人って名前があるんだよ」
「そうだな。ごめん。俺もヨッシーって呼んでいいか?」
「まぁ、いいけど」
「それじゃあ、よろしくなヨッシー」
「うん。よろしく、弥太郎君」
ヨッシーと弥太郎君がガッチリと握手をかわす。打ち解けてくれて良かった。
「うーん。やっぱこの作戦には無理があるぜ」
唸っているのはカオルだ。
「どうしたの? カオル」
「ああ。二階の奇蟲人の事だ。オレらがどんなに頑張って駆けつけても、一人以上は食われちゃうぜ。他の階の奇蟲人を倒してからってんじゃ、遅いんだ。犠牲は出したくないだろ? ならオレに代案がある」
カオルは人差し指をピンと立てた。カオルは頭がいいから、彼女の意見は絶対に聞いた方がいい。ボクは頑固な方だけど、プライドが高い訳じゃない。
「教えてくれる?」
「ああ、それじゃあ、みんな聞いてくれ。全員に関わる事なんだ」
カオルは全員の顔を見回し、それから作戦を語り始めた。
この場にいるのはボク、カオル、ヨッシー。そして弥太郎君と不良仲間の二人。そしてクラスメイトの男子と二人と女子四人。幼なじみの二人以外は親しい間柄とは言えない。だけど、ボクは信じてもらおうと必死だった。
「 お前、それマジで言ってんのかよ! 頭おかしいんじゃねぇ?」
弥太郎君の不良仲間の一人、竜司君がそう言って笑った。
「これさ、あれじゃね? ドッキリって奴。どっかで誰かカメラ回してんだろ。文化祭近いしさ。ぜってぇそうだ。な、そうなんだろ弥太郎。お前も一枚噛んでるんだろ?」
弥太郎君のもう一人の不良仲間、虎丸君がキョロキョロと辺りを見回す。
弥太郎君は二人をギロリと睨む。うわ、怖い。
「ツバサが今話した事は、多分本当だ。俺もそのゲームをダウンロードした。速攻で飽きたから最初の方しかやってないけどな。だからなのかわかんねーけど、俺もツバサと同じように一度死んだ記憶がある。そのゲームに登場した化け物が出てきて、みんな食っちまった。俺は粘ったけど、結局最後に食われた」
弥太郎君は、クラスでは悪い意味で一目置かれている。そんな彼が真剣に話したので、みんな言葉を失った。信憑性が少し増したのかも知れない。
「信じてくれ。俺は喧嘩は得意だけど、嘘をつくのは苦手だ。みんなをからかうつもりもない。ついでに俺の秘密も話しておく。俺は、未来に起こる事がわかるんだ。ガキの頃からそうだった。予知能力って言うらしんだけどよ」
弥太郎君は、そこで一旦話を区切った。ボクらの反応を見ているのかも知れない。きっとボクも含めてみんな、予知能力という言葉に驚いているだろう。弥太郎が超能力者だなんて、全然似合わない。
「ツバサがいう『前回の宴』の時、俺は化け物たちが来るのを予知していた。けど、そんなの誰が信じてくれる? 今竜司や虎丸が言ったみたいに、バカにするのは読めてる。だから諦めたんだ。俺はゲームをやり込んでねぇし、化け物の対処法もわからねぇ。だけどツバサには生きてて欲しかった。俺は......ツバサの事が、好きだ」
そう言って顔を赤らめる弥太郎君。
「はぁぁぁー!?」
全員が口を揃え、呆れた声を出した。
「おいおい、冗談だろ箱根弥太郎。ツバサは男だぜ? 確かに女みてぇに可愛いけどよ」
カオルがそう言って苦笑いする。
「まぁ、昔からツバサ君はモテてたけどねー。男子にも」
ヨッシーもクスッと笑う。
「もー、やめてよ二人とも。弥太郎君、ボクを好きって言ってくれるのは嬉しいけど、ボクは正真正銘の男の子だよ。悪いけど、気持ちには答えられないよ。友達なら喜んでなるけど」
弥太郎君、てっきりボクの事を嫌いなんだと思ってた。でも、今思い返せば別にイジメを受けた事はないかも。ロッカーに閉じ込められたのが、初イジメだ。本当は違ったけど......。ボクが勝手に怯えていただけだった。
根掘り葉掘りボクの事を聞いてきたのは、ボクが好きだったからって事?
「そんなの知ってるさ。だけど、俺の予知能力では俺とツバサは結婚する。俺の予知は特殊でね。確定した未来しか見る事が出来ない。変更可能な......例えば話の内容とか、不確定な要素を含む未来は予知出来ないんだ。その予知で俺が見る未来。何年先かはわからないけど、ツバサは赤ん坊を抱いてた。母親になってたんだ」
弥太郎君は自信たっぷりにそう言った。
「ええー!?」
またみんなが口を揃える。
「いやいや、ありえないっしょ」
「ツバサ君性転換するって事?」
「あー、ありえるか」
「でも、それじゃ子供産めなくない?」
男女のクラスメイトたちが、ざわざわする。
「どういう事なのかはわかんねー。だけど俺は、自分の予知に絶対の自信を持ってる。だからツバサが本当は女だと思ってたんだけど......」
「いやいやいや! 男だよ! ちんちんついてるよ!」
ボクは必死に弁明した。ボクが女って言う噂が流れちゃったら、彼女出来なくなる。それは嫌だ。
「なー、だいぶ話がそれてねぇか? お前が変態だって事は良くわかったからさ、話進めようぜ」
カオルがニヤッとしながら弥太郎君の肩をポンと叩いた。
「誰が変態だ! 俺は別に、男が好きな訳じゃねーぞ! ちっ、まぁいい。時間もねーし、話を進めるぜ。とにかく! ツバサの言ってる事も、俺の言ってる事も本当だ! ツバサの言う『奇蟲人』って化け物をぶっ殺して、全員で生き延びる。作戦はツバサに任せようぜ。こいつはゲーマーだからな。前回ボスまで行ったらしいしよ」
弥太郎君の言葉で、みんながボクに注目した。やった! みんな、話を聞く態勢になってくれたぞ!弥太郎君のお陰だ。
ボクは弥太郎君を見た。すると弥太郎君は目をそらし、恥ずかしそうにおでこを掻いた。
ボクは彼に好感を抱いていた。今まで嫌っていた事、怖がっていた事。それらが誤解だったと気づいた事で、感情が百八十度回転した。ギャップ萌え、みたいな。
いや、別に恋愛感情じゃないよ! ボク、女の子が好きだもん!これは友愛だよ、友愛。
ま、それはさておき。作戦を立てよう。
「えっとね、まず奇蟲人が最初に現れるのは三箇所。この教室前の廊下と、二年三組前の廊下。それと三階の生徒指導室の近くだ」
「なんでそんな事までわかるんだ?」
ボクの説明に、弥太郎君が疑問を唱える。
「ボクの頭の中に、スマホからアプリが移動してるんだ。アプリにはマップ機能もあって、生存者は青丸。奇蟲人は赤丸で表示される。前回、ボクはマップを切り替えながら全体を見ていたんだ。弥太郎君も『蟲の宴』ダウンロードしてたんだよね?!もしかして弥太郎君の頭にも、アプリ入ってるんじゃない?」
ボクの問いかけに、弥太郎君は頷いた。
「確かに入ってる。気持ち悪くてあんまり見ないようにしてたけど、そんな機能もあったのか。なるほどなー」
弥太郎君は遠くを見つめた。きっと今マップを確認してるんだろう。
「やっぱり入ってるんだ。じゃあ弥太郎君も宝珠を使えるね」
「まぁ、そうなるな。俺はゲームでもすぐ死んでたから使った事は無いけど......。変身できるんだよな?」
「うん。二人で変身出来れば、かなり楽にボスを倒せると思う」
「おー、そうだな! よっしゃ、燃えてきた!」
ガッツポーズを取る弥太郎君。
「あはは。まずは宝珠を手に入れないとね。最初に説明した通り、宝珠は奇蟲人の頭を破壊すれば手に入る。二手に別れよう。ボクとカオルがこの一年三組の教室。ヨッシーと弥太郎君は、三階の生徒指導室前だ。先に奇蟲人を倒したペアが、二階に降りて二年三組の奇蟲人を倒す。どうかな」
ボクはみんなを見回した。戦闘に参加するメンバーは強い意志でボクを見返す。それ以外の待機組は、不安そうにお互いの視線をかわした。
「ツバサと一緒にいたいけど、アプリを持った奴がいないと宝珠は出ないんだもんな。俺とツバサが一緒にいるのは作業効率が悪い。しゃーねー。この脳筋と頑張るぜ」
弥太郎君に脳筋と言われ、ヨッシーは不服そうだ。
「あのさ、その呼び方は失礼じゃないかな。僕には良人って名前があるんだよ」
「そうだな。ごめん。俺もヨッシーって呼んでいいか?」
「まぁ、いいけど」
「それじゃあ、よろしくなヨッシー」
「うん。よろしく、弥太郎君」
ヨッシーと弥太郎君がガッチリと握手をかわす。打ち解けてくれて良かった。
「うーん。やっぱこの作戦には無理があるぜ」
唸っているのはカオルだ。
「どうしたの? カオル」
「ああ。二階の奇蟲人の事だ。オレらがどんなに頑張って駆けつけても、一人以上は食われちゃうぜ。他の階の奇蟲人を倒してからってんじゃ、遅いんだ。犠牲は出したくないだろ? ならオレに代案がある」
カオルは人差し指をピンと立てた。カオルは頭がいいから、彼女の意見は絶対に聞いた方がいい。ボクは頑固な方だけど、プライドが高い訳じゃない。
「教えてくれる?」
「ああ、それじゃあ、みんな聞いてくれ。全員に関わる事なんだ」
カオルは全員の顔を見回し、それから作戦を語り始めた。
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