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第5話
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人の生きた経験は蓄積され、それは死後も肉体に残る。黒魔術師は、残された経験を引き出す。それこそが魔法。死体がなければ魔法は使えない。故に、このような事件が起こる。死体目的の殺人だ。
「で、結局は私の仕事なんですよね?」
「ああ、もちろん。他に誰がいる?」
”アカネコ”の不機嫌な問いに、”アオカラス”は顔色ひとつ使えずに答える。いつものことだ。
「ハァー……、わかりましたよ。『トリは見渡し、ケモノは走り、」
「ムシは捉える』わかっているじゃないか」
『トリは見渡し、ケモノは走り、ムシは捉える』とは、魔術協会の基本方針だ。
「俺には俺の仕事がある。トリらしく、見渡すさ」
”アオカラス”は本を取り出し、ページをめくる。人の顔を剥いで貼り付けたようなページが開かれる。そして、ローブの中から2つの、干しぶどうのような球を取り出し、本の眼孔に埋め込む。
「”過去を見よ”」
”アオカラス”の呪文によって、眼球の経験が魔法となり、現場の過去を映し出す。誰かが、死体を持っていく様子が見える。ただ、相手もムシとはいえ魔法使いだ。その顔は見えない。
「もう少し過去を見れれば……」
”アオカラス”が魔力をさらに引き出そうとしたが、その時、眼球は完全に干からび、崩れ去った。
「なあんだ。”アオカラス”だって、安物掴まされたんじゃないですか?」
「う、うるさい!偶然だ偶然!ちょうど買い換えようかと思っていたのだ」
「……そういうことにしておきますか。ま、相手の逃げた方向と、姿が見えれば十分です」
”アカネコ”はカバンの中から、先程買った小さな黒い棒を出す。サシと呼ばれるそれは、目標を”指差すもの”である。
”アカネコ”はそれを掴み、目を閉じ、呪文を唱える。
「”サー・フィン・リー”」
「で、結局は私の仕事なんですよね?」
「ああ、もちろん。他に誰がいる?」
”アカネコ”の不機嫌な問いに、”アオカラス”は顔色ひとつ使えずに答える。いつものことだ。
「ハァー……、わかりましたよ。『トリは見渡し、ケモノは走り、」
「ムシは捉える』わかっているじゃないか」
『トリは見渡し、ケモノは走り、ムシは捉える』とは、魔術協会の基本方針だ。
「俺には俺の仕事がある。トリらしく、見渡すさ」
”アオカラス”は本を取り出し、ページをめくる。人の顔を剥いで貼り付けたようなページが開かれる。そして、ローブの中から2つの、干しぶどうのような球を取り出し、本の眼孔に埋め込む。
「”過去を見よ”」
”アオカラス”の呪文によって、眼球の経験が魔法となり、現場の過去を映し出す。誰かが、死体を持っていく様子が見える。ただ、相手もムシとはいえ魔法使いだ。その顔は見えない。
「もう少し過去を見れれば……」
”アオカラス”が魔力をさらに引き出そうとしたが、その時、眼球は完全に干からび、崩れ去った。
「なあんだ。”アオカラス”だって、安物掴まされたんじゃないですか?」
「う、うるさい!偶然だ偶然!ちょうど買い換えようかと思っていたのだ」
「……そういうことにしておきますか。ま、相手の逃げた方向と、姿が見えれば十分です」
”アカネコ”はカバンの中から、先程買った小さな黒い棒を出す。サシと呼ばれるそれは、目標を”指差すもの”である。
”アカネコ”はそれを掴み、目を閉じ、呪文を唱える。
「”サー・フィン・リー”」
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