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マイオ村 当然の結果…

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    ユウキ達はニーナとミーナの姉妹と共にダーニャから話を聞き終えると即座に行動に移すことにした。

 ようやく目的地が見えてきたのだが、何やら様子がおかしい。

 目的地である酒場から人が四方へと悲鳴をあげパニックを起こしながら散らばって行く。

 「先走りおった者がいるようさね。」

 ダーニャが逃げてくる村人を捕まえる。

 「待ちな!セナ。今、酒場では誰と誰がやり合っているのさね?」

 「ま、魔族が出たんです!ど、どうしたら。あのその大変なんです!」

 「落ち着きな。そんなもんはわかってるさね。魔族が現れたんだね?もしかして誰かが魔族だったのかい?誰が今そいつと戦っているんだい?まさか放置して皆逃げ出したわけでなないだろうね?」

 「領主様です!!」

 「領主?グラムの奴が魔族だったのかい?」

 「あ、いえアルテミアさんです!」

 慌てて女性が言い換える。

 「セナ、お前には事態が収拾した後で報告の仕方って奴をしっかりと叩きこんでやる必要がありそうさね。緊急の時ほど物事は正しく伝えなければならないって何度も教えたはずだがね。いい歳した女が…だからいつまでたってもお前には亭主がつかないんだよ。」

 「うう…酷いです。アルテミアさんと知らない見た事の無い若い女の子が戦ってたんです。」 

 そういうとダーニャはセナの頭を杖でコツンと叩く。

 「アンタに聞いた私が馬鹿だったよ。それじゃ、アルテミアと若い嬢ちゃんが戦っているように聞こえるのだけれどね。お前さんの事だ、どうせ魔族と戦っているのがアルテミアと若い女…もう一人はユウキさんの仲間の女性という事だろうさね。」

 「そ、そうそうそれです!この人たちと一緒にいた人です!」

 ユウキを指さすセナに呆れているダーニャはもう用済みだと言うようにしっしっと言うとさっさとお逃げ!と言い放つ。

 「ティナが戦っている…」

 「急ぎましょう!」

 心配するユウキを急かすようなレイランにダーニャは待ったをかける。

 「待ちな!アルテミアがいるならその子がある程度使えるならば多少は持つだろうさ。それよりもまずは戦力の把握の方が先さね。レイランさんは戦えるのかい?ユウキさんは戦闘経験はあるのかい?」

 「私は少しなら。」

 「俺は…ない。」

 「予想が外れたね。女を二人も侍らして冒険者をしているんだからユウキさんの方は少しは使えると思ってたんだがね…。最悪な展開さね。戦えるのは先に仕掛けたアルテミアとアンタたちの仲間の子だけかい。」

 ダーニャは数度杖を地面にコツコツとあてると何かを思い出したかのように地面に絵を描いていく。

 「ちょっとダーニャさん!遊んでないで急がないと!」

 レイランの叫びに対して少しお黙り!と言うと黙々とそれを書いていく。

 「見取り図ですね。」

 「その通りだよ。よくこの箱と三つの丸だけでわかったね。」

 少し感心したようにダーニャがザックリとそれを完成させる。

 「ここまでくればお嬢ちゃんにもわかるだろうよ。いやはや歳は取りたくないね。思い出すのも一苦労だよ。」

 完成したそれをレイランは見てふと気づいたようだ。

 「そうさね、この裏手にはレイランさんとアタシが行くとしようかね。ユウキさんは堂々と正面から入って敵の注意を引いてくれればよい。その後必ず合図をせい。床を三回ならしてから相手に何かを投げるとかの。そうすればアタシが隙をついてやろうじゃないか。アルテミアが中にいるならアタシが失敗してもそれをついて攻撃できよう。…まあ、2人が既に死んでる程の強敵なら死体が4つに…いや大量に増えるだけかもしれんがの。それも全てはどの程度の奴が来ているかによるのだがね。」

 「相手の力次第ってあまりにも運頼りな気もするけれど。」

 レイランが不安そうにユウキを見る。

 「…やっぱり早く戦力を見つけるか、自分たちが強くならないといけないな。」

 ユウキはフレミアが言っていたハーレム計画が頭を過ぎりその後にレイランの方を見てしまった事で意識をしてしまいカーッと熱くなってくるかおを慌てて振り雑念を払う。

 「?」

 「なんでもない!さ、作戦をもう少し詰めて敵を倒しに行くぞ!」

*****************

 「はあはあはあはあ…んっく…?はあ…はあ…。」

 息が持たず隙を見て呼吸を整えている。構えた刀を持つ手が鈍そうだ。

 「もうお終いか…ならば遠慮なく。」

 チッ!相手は疲れを感じないのかとアルテミアが攻撃を弾きながら舌打ちをする。

 「チッ!しぶとい女め。今だに絶望の表情すら浮かべないとは…。」

 それはこちらのセリフだ!と叫びたそうに表情が一瞬歪み口元も動くが言葉に出し呼吸を乱す事はせず、ひたすら我慢し隙を待っているようだ。最高の一撃をいつでも放てるように。

 酒場に辿り着き、ユウキは陰からアルテミアを見つけてそう感じていた。それは事前情報として、ミーナやダーニャからアルテミアならそういう戦いをすると聞いていたからだが。

 (ティナはどこだ?)

 チラリと覗き込んだ程度では内部を全て見る事はできずティナを発見することはできない。だが、敵は予想よりもいい位置にいる。

 ほぼ部屋の中央である。裏手から入ってもすぐに相手の位置が捉えられる。ならば作戦通りに出るだけだ。

 「ティナ!無事か!!」

 ユウキは危険を承知で酒場に突入する。

 「うるさいガキが!」

 「ううぉ!」

 しゃがみ込んだ頭の上を机が物凄い勢いで飛んでいく。

 (外に誰も居なくてよかったよ!それにしてもティナは無事だろうな…。)

 「おい!ティナはどうした!!」

 緊張を隠しながらなるべく声を荒げるようにし注意を引き付けようとする。

 「ティナ?」

 ああ、とでも言いたげに魔族は椅子やテーブルが一同に固まっている瓦礫の山の方を見る。

 「うそ…だろ。」

 その瓦礫の下から足が片方出ていた。

 「よそ見してるなんて余裕そうじゃないかい!」

 アルテミアが剣を振るうがそれをまともに受けることなく下がると嬉しそうに魔族は笑みを浮かべる。

 「ひひひひっひっ、そうそうそうだ!その味だ!最高の味がしてきたぞ!!」

 作戦どころじゃない。

 ティナが…。

 ユウキは慌てて机をどかしていく。

 ようやくティナを助け出すとうつぶせになり倒れていたティナをなるべく動かさないようにしながら口に耳を当てる。小さいがまだ息がある。脈がある。まだ生きている。

 ユウキの頭には既に作戦の事は消えていた。

 「てめーっ!」

 椅子の足を手に取り魔物に殴りかかる。

 「邪魔だガキが!!」

 アルテミアがユウキを蹴ろうとするがユウキはそれを避ける。

 「ああ!その表情!その怒り!…そしていい絶望だ!!」

 歓喜の表情を浮かべる。顔のない人形のようなやつだが、口元だけはワザとらしくはっきりとその表情を浮かべている。

 「馬鹿者!!」

 ダーニャの声が聞こえたがそんなの知った事ではない。ユウキは思い切り椅子で殴りつける。

 「…く、くくくく。痛い痛い痛いよ。笑い過ぎた腹がな!」

 「ちっ、馬鹿が!」

 アルテミアが物凄い勢いでどんどんと前方に進み魔物に剣を振るっている。
 …あれ?動いているのは俺か?
 敵の足が浮いている。何かを蹴飛ばした後の格好をしてますます笑みを深めている。
 何故だ?

 痛みがないかわりに何かがクッションのようにユウキと共に飛ばされている。

 「がっ…はっ……。」

 ティナにあたらなくてよかったと背中と腹部に思い衝撃を感じながらも感じるが、床に落ちたあとに膝に乗る思いそれに気づき青ざめる。

 「ば…か…なんで…こんな…。」

 「…レイ…ラン…?なんで?」

 吐血している。腹部からも血がにじんできている。

 腹部の状態を確かめようとするとレイランが大丈夫と小声でいう。

 「…大丈夫?ユウキ。」

 「喋るな!お前!腹部にモロ!!」

 (なんでだ?多少の傷なら大丈夫だと思っていたのに!…発動すらしないじゃないか!!)

 「大丈夫…。」

 「何が大丈夫だよ!!」

 「大丈夫…いくら蹴られても私は大丈夫なの。だから…ゴホッ…それよりティナは大丈夫なの?」

 ユウキはレイランの腹部の出血を見てどこがだよ!と叫びたい気持ちになり、怒りを敵にぶつけたくなったが自分のせいでレイランが飛び出し庇ってくれた結果、こうして傷つけてしまったのだと理解している為、目の前の二人を先にどうにかしないとという冷静さを何とか残せていた。

 「私は女性としては機能していないから腹部をやられた所で…それよりも!」

  レイランは無理矢理身体を起こそうとして吐血する。

 「それよりも?何馬鹿なこと言ってるんだ!傷が開くだろう!」

 「そういう意味じゃ…ユウ…キ…あれ見て!」

 レイランの指の先、視線を移した先にいた魔物はあっけなく倒されていく所であった。

 「ふん!!雑魚魔族のくせに尻尾も出さずによくも今までアタシの終活の地であるこの庭で好き勝手やってくれたね。」

 アルテミアは転がっている無事な椅子を立たせてそこに座りもう自分の出番はないなと言いたげにしていた。しかし表情に見えない下げて握られた手は悔しそうに血がにじむほど握りしめられていた。

 「な!何者だ!!このバ…。」

 次の瞬間、頭部が宙を舞っていた。

 「お前にババア呼ばわりされたかないね。たく…どこにいるのかわからなくて苦労させられたわ。今回はコイツ一人でよかったさね。おっ…こ、腰に響いたね。アルテミア!アタシをおぶってきな!」

 「それにしても相変わらずですね師匠。相変わらずの化物っぷりで自分がいくら強くなっても勝てる気がしませんね。むしろ力量がわかるほどに貴方の化物さがよりわかってきますよ。本当に人間ですか?終活とか言ってましたが今からでも騎士にだろうとなんにでも就活できますよ。」

 「はん!未熟者め。A級の上位者なら誰でもこれくらいはやるさね。ユウキさん達のおかげでコイツが油断してて助かっただけさね。ほら行くよ!アルテミス。一応、顔と胸に剣は刺しときな。」

 「ま、まってくれよ!」

 「あん?」

 「ま、まってくれよ!二人は…。」

 アルテミスは剣を二度振るった後に剣をしまうとダーニャを担ぎながら顔を背け呟く。

 「確かに時間稼ぎとして、またアタシの民を救ってくれた事には感謝する。長い間の調査とようやく出した尻尾のおかげでこうして対処できた。感謝する。この礼はたっぷりとさせて頂く。」

 「そ、それだけかよ!」

 「その傷じゃ二人とも長くはないさね。申し訳ないがこの地で回復魔法を使える人間はおらん。正式な教会の人間なら使えるだろうがニーナは見た目と違い回復系の魔法はからっきしさね。ユウキさんには報酬は弾むさね。なんなら代わりの女性を倍の数斡旋しようじゃないか。レイランさんほどの美人がいないのが申し訳ないが…そういう意味では惜しかったさね。」

 「…ど、どうい神経してるんだよ。」

 「何故?そこまで怒る?原因が解決したんじゃぞ?少ない犠牲で。」

 「師匠、それは…いや、この状況ならばはっきりと言った方がユウキ殿の為か。私は私の民の為になら何でも犠牲にする。このことでもう一つの問題が解決されるかはわからないが魔族の手から皆をまずは守れた。お前たちは冒険者だ。首を突っ込んだ。報酬の為に戦った。ならばその犠牲は自分たちのせいであり治すのも自分たちの責任でだろう?もちろん、助かる見込みがあれば助ける手伝いをさせてもらうが…」

 「俺達は報酬の為になんか…。まだこうして…二人とも…外科手術とか出来る奴は!!」

 「外科?手術?魔術は誰も使えないと言ったはずだがの。王都か何かの新しい技術かい?」

 ダーニャはまあいい行くさねと言うとアルテミアの肩を叩く。

 「治療士はクスリでの治療が基本だからな。腕の切り傷や剣などのさされた傷などは縫合も上辺の肉なら出来るだろうがその様子だと内臓がやられているだろう。しかも内部の破裂を回復するなど教会の法術士でも一部にしかできない秘術だろうね。コネのないアンタ達にはいずれにしても無理だろうね。葬儀は…用意してやる。それとユウキ殿達が動いてくれたおかげで敵が姿をさらした、これはユウキ殿のお手柄だ。」

 そういうとアルテミアはダーニャとともに荒れた酒場から振り返ることなく出て行った。

 「…ユウキ!!何してんの早く回復させなさいよ!!」

 入れ替わるようにどこに居たのかフレミアが飛んできた。

 「やってるさ!!回復出来ないんだよ!!急に現れて偉そうにするな!!発動しないんだよ能力が!!!」

 「落ち着きなさいユウキ!!」

 「そんなこと言ってもどうやったら!!」

 「この者達を救いたいのであれば私の指示に従いなさい!!」

 小さな。握ったら簡単に潰れそうなフレミアの右手からパチンという音がする。

 そのビンタはひどく重い一撃にユウキには感じられた。

 「これは賭けになるわ、もしかしたらこれが本当の能力の使い方なのかもしれないし、全然違ってて失敗してすべてがダメになるかもしれない。安全策を取って奇跡的にそれが使えても今のユウキだと一回だけ。どっちかは見捨てないといけない事になる。また暴走するかもしれないけどとかリスクが大きすぎるけどそんな事を言ってられないから言うわね。」

 フレミアが叩いた頬を両手で触りながらゆっくりと言う。

 「いい、今から自己活性の力を使いなさい。二人を救いたければ衝動に負けずに二回それを唱えるまで持たせなさい。チャンスは一度…理性を失って欲望に負けた瞬間に二人を失うからよく聞いて。」
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