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マイオ村 元気のない村

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  「ようやく村が見えてきたのだけれども…」

 フレミアは人に見つからないようにしながら胸ポケットより顔を覗かせ村を指さす。

 「五年前は外からでもわかるほどに賑わいのある村だったのよ。村を間違えたかしら?」

 手持ち無沙汰なのか手をにぎにぎとしているが俺からは爪楊枝を渡す気はない。
 現在、フレミアは少し反省したらしくカバンの中へ自ら相方を封印していたのである。

 「いえ、フレミア様の仰る通りあの村はマイオ村で間違いありません。私はあの街に行った事はありませんがここを通った記憶があります。その時、奴隷商人の方がここがマイオ村だと言っていた記憶があります。」

 レイランはそういうとティナに地図を見てくれる?と言う。ティナは地図を広げると中心に指を置きそこから右下に何やら動かしていく。そして、周りを見ながら皆を見ると頷く。

 「確かにここはマイア村であってる。」

 「寂れただけなのね。五年前は面白かったのよ?本当なら今日あたりに収穫祭っていう祭りをやるはずだったから補給ついでに見られればと思っていたのだけれども。その年に取れたトマトやら野菜をぶつけあったりと楽しいのよ。」

 「…それが理由だったのか。フレミアが街道沿いの他の大きな街で泊まれるチャンスを逃して野営してでもこの村で休憩が取りたいと言っていた時は何か大きな理由があるのかと思っていたのに。」

 ユウキは呆れながらフレミアをみる。

 「でもここは目的地の港町サーレに行くちょうど半分の所にある村で王都との中間地点であり、残り日数の目安となる事から旅の疲れと補給をするのに最適な村として有名なのよ?熱いお湯が沸く事からも観光地として有名だし。残念ながら腐ったような匂いの水で飲めないらしいのだけれど。お湯が定期的にボコボコと溢れる所や噴射する所が見られるのよ?」

 早く見てみたいわとレイランも楽しみのようだからいいのだけれど、それって温泉だよな。

 「匂いのあるお湯が沸く所…たまに山で見つけて盗賊団の皆で入ってだけど匂いなかった。見たいのはわかるけど、毒の心配もあるから触らないでね。」

 ティナも警戒するように言うが、それってやっぱり硫黄の匂いなのではないだろうか?この世界の成分が日本のそれとまったく同じだとは言えないが、ティナの入っていたのは単純温泉の匂いが薄いもので今回のは硫黄の含まれる硫黄泉ではないだろうか?

 (あんまり温泉についての細かい事はわからないけど後で確かめてみよう。なんせ温泉に浸かれるチャンスだからな。)

 最近は川の水で身体を流す日々であり毎日が川の水の冷たさとの闘いであったのだ。

 (まだ気温的には秋前くらいだというのに。)

 そもそも四季があるか知らないが。

 ユウキは馬に鞭を入れ村へと馬を誘導する。当然ながら、フレミアの指導の下にユウキが馬を操縦することになっていた。5日で来れるはずが7日かかったのにはコツを掴むのに色々とあったのだ。

 「でも、よく横転せずに来れたわよね。私の指導の賜物ね。出発のときに馬が暴走して駆け出した時はさすがに死ぬかと思ったわよ。村に入ったら豪華なご馳走を希望するわ。」

 誰への説明か知らないけどバラすなよ…。

 けれどもフレミアのおかげでここまで来れたのは確かなので文句は心の中だけにしておく。昼はフレミアの言う通りにご馳走を用意しようとユウキは考える。

 「ねえ、でもフレミア様じゃないけれど。この村でいいのよね?」

 レイランが不安そうにティナに尋ねる。

 「地図上は間違っていない。」

 マイオ村と書かれた村の入口に差し掛かるとユウキも不安になってくる。

 村の人たちの顔に覇気がないのだ。

 特に男性は下を向き、何かを諦めているかのような表情の者ばかりである。
 女性たちも黙っているか何かストレスを抱えている気がする。

 村全体がピリピリとしているようだ。

 破裂直前の風船のような空気とでも言えばいいのか…。

 (ならば何が針となりえるのだろうか?)

 ユウキはふとそんなことを考える。

 「おおっ!」

 村の男性がユウキ達に気が付くと大急ぎで村の奥へと走っていく。

 (なんだ?)

 ユウキ達は馬をどこに預ければいいか探していると、ちらほらと女性達が窓から顔を出したり指を指したりしている光景が増えてくる。

 「ユウキ…なんか女性達が皆貴方を見ている気がするのだけれど。」

 フレミアは嫌な予感がする。と言い胸ポケットの中に入り込み姿を見られないようにし声だけを出す。

 「でも、男たちはレイランを指さしてるぞ?やっぱレイランは美人だからな…」

 「えっ?びじ…」

 レイランは不意打ちに言われてつい声が上ずってしまう。

 「あ、でもなんだろう。すぐに物凄いガッカリした表情をしてる…。こんな美人なレイランを見てなぜ悔しそうな顔をしたり泣きそうな表情をしているのだろうか?」

 「むっ。」

 ティナが軽くユウキの足を踏む。

 「痛いティナ。踏んでる!」

 ティナの嫉妬に気づいていないユウキを見てレイランは苦笑いをするが、その苦笑いにはレイランでも気づかないうちにユウキに二度も美人と言われた事に対して緩んだ笑みが混じっていた。

 「おお!本当に旅の方だ!」

 いつの間にか人だかりができており、村の奥の方から人を押しのけて二人の男がやってくる。

 男の一人は先程村の奥へと走っていった男であり、もう一人はかなりの老人だ。

 「おぬし!」

 「は、はい。」

 いきなり老人に手を握られ驚くが次の言葉を聞いてユウキは顔を青ざめるのだった。

 「おぬしのちんこは元気に勃ち上がるのかの!」

 ポケットに入っているフレミアを含め、さすがに女性陣全員が顔を引きつらせ後ずさりしたのだった。  
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