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カケラ・その22
しおりを挟む「ばあちゃん……ただい……ま……」
俺が玄関の引き戸を開けて、声を掛けようとしたが、ばあちゃんが誰かと話している声が聞こえて、俺は声のボリュームを落とした。
ばあちゃんはどうも電話をしている様だ。
俺は立ち聞きも悪いと思い、居間を通らず自分の部屋へと戻ろうとすると、
「そうかい……そんな事が……。うん。うん。希は元気にやってるよ」
俺の名前が聞こえてきて、俺は後ろめたさがありつつも、ばあちゃんの死角になる廊下で、そっとその話を聞いた。
「あんたが決めた事だ。離婚って聞いた時には子ども達の為にも何とかならんもんかと思ったけど……確かに、それではもう一緒にいるのは難しいねぇ」
相手は俺の父親みたいだ。
「いや、いや。謝る必要なんてない。じゃあ……麻衣子さんはもう出ていったんか?あ~そうか。創は退院したん?それは……良かったなぁ」
創……弟は退院したらしい。
そして、二人はもう家を出た……という事だろう。まぁ……予想通りだ。
「あんたも体に気をつけるんだよ。うん。まぁ……希にはまだ言わん方が良いじゃろ。
創の父親が別におるなんて……希は確かに大人っぽい所のある子じゃが、まだ十六。大人になるには早過ぎるよ」
………おっと……。俺って今、両親の離婚の原因を聞いてしまったのではないか?……しかもかなり衝撃的な事実なんだが……。
俺はそーっと玄関まで戻って大きな音で引き戸を開けた。
そして
「ただいま~!!」
とたった今、帰って来た風を装って、居間に向かって大きな声でそう言った。
「ただいま!」
改めて居間に向かって声を掛ける。
「あぁ、おかえり、おかえり」
ばあちゃんは既に電話を切ったのか、居間から廊下に顔を覗かせて、俺の姿を見てニッコリと微笑んだ。
俺もニッコリと笑顔を返して靴を脱ぐ。俺は平気なフリをしながら、心のざわつきを抑え込むのに苦労していた。
俺は夕食後、部屋で仰向けにゴロンと寝転んだ。ここの天井の木目って……人の顔に見えるよな……なんて思考を別の物にすり替えようとしても、全く上手くいかない。
俺は諦めて、両親の事について考える事にした。
……創の父親は別にいる……ってコトは俺と創の父親は違うって事で……これって母さんが浮気してた……って事だよな?
創は今年……八歳になるから、十年近く父さんを騙してたって事か?それとも……父さんは知ってて黙ってた……とか?
っていうか、次男なのに『はじめ』って名前を付けてる時点でお察しだと思う。
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