15 / 55
カケラ・その15
しおりを挟む俺は訊かれてもいないのに言葉を続ける。
「うち、両親が離婚するんだ」
そう俺が言うと、葵はガバッと上半身を起こして横で寝転ぶ俺を見た。
「可哀想なんて思わなくて良いよ。別に俺は思ってないから」
と俺も上半身を起こして、改めて座り直した。
「どうして?って訊いても良い?」
「どうしてなんだろうな?大人って子どもを馬鹿にしてるから、理由なんて話さなくて良いって思ってるんだろ」
俺が少しやけになった様にそう言うと、
「逆じゃない?傷つけたくないだけじゃない?」
と少し眉を下げて葵は言った。
「勝手に傷つくって決めてるのも何か違うだろって思うけどな」
「……そうなんだけど……。大人は自分が傷ついてるから、きっと同じ思いをさせたくないって思ってるだけだと思うよ」
「勝手に結婚して勝手に離婚するのに?自分達が傷つくなんてあり得ないだろ」
たった二つ歳上なだけで、葵が大人側に付いているのが気に入らない。
……まぁ、この国では十八で成人だから、大人といえば大人なんだろうけど。
そこに壁を感じてしまう俺は、やっぱり子どもなんだろうか?
「きっと簡単には割り切れない何かがあるんだよ。子どもには知られたくない何かが」
「大人ぶんなよ」
つい口調がきつくなってしまった。すると、葵は俺に近づくと俺を抱きしめた。
「な、何?」
俺が葵の行動に動揺していると、
「もう傷ついてるじゃん。自分だけ置いてきぼりにされてる事に。大丈夫。きっと時が来れば嫌でも真実を知ることになるから」
と葵は苦しそうにそう言った。
その言葉に俺は胸が苦しくなった。両親に置いてきぼりにされている事も事実だし、それに拗ねてる自分は十分子どもだ。
だけど……葵の言う『真実』が他の何かを指している様で、俺は不安になる。その何かは……今の俺にはきっとまだわからないけれど。
「……ありがとう。慰めてくれて」
俺は不安を隠す様にそう言うのが精一杯だった。
そして、俺は自分を抱きしめる葵の腕にそっと手を掛けた。
ほどほどに俺の洋服が乾いた頃、俺は人魚の入り江を後にした。
俺の事を見送る葵を振り返る。
葵は俺が送ると言っても『迎えが来るから』と言って断る。
こうしていつも俺が葵に見送られるのだ。
13
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる