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第36話
しおりを挟む「先生!早く何とかして下さい!クロエが!…あぁ…クロエがこんなに苦しんで…!」
「あ~~!もう!うるさい!!!陛下!クロエ様のお願いで『立ち会い出産』とやらを許可しましたがね!そんなにうるさいなら出ていって貰いますよ!」
ユニ先生の声が刺々しい。
「あ~~~~~痛い~~!」
段々と迫り来る痛みに恐怖する。
今朝『あれ?ちょっとお腹痛いかな?』と思い始めてから、早、10時間。
最初は勘違いかと思うぐらいの痛みだったが、今や途轍もない痛みに襲われ、その間隔は2、3分といった所か……なんて考えていたら、また来た!!!痛みが!
「痛い!もうやだぁ!」
と泣き叫ぶ私の手を必死に握る陛下。
「クロエ、大丈夫か?あぁ…私はなんて役立たずなんだろう…先生!先生!どうにかしてあげて下さい!早く!」
「今の所順調に御産が進んでいます。とにかく、陛下はクロエ様を励ましてあげて下さい。ほら、ハンカチで汗を拭いて!」
ユニ先生に手渡されたハンカチで私の額を陛下が拭ってくれる。
「…陛下…陛下…」
「大丈夫だ。私が側に居るからな。大丈夫、大丈夫」
陛下は私の手を握り、自分の額に押し付けた。
「…神様…クロエをお守り下さい」
と呟く陛下の声が聞こえる。
赤ちゃん、聞こえる?出来れば、そろそろ出て来てくれないかしら?
お母さん、もうヘトヘト…。
何でこんなに痛いのに、気を失わないのだろう?
前世でも出産した友達が『めちゃくちゃ痛いよ!』『鼻からスイカが出る位の痛み』って言ってたけど、既に陣痛でメンタル折れそうなんですけど?
「さあ、そろそろ赤ちゃんが出て来たいって言ってますよ」
と言うユニ先生の声がした。…既にいきみたい気持ちで一杯だ。
「クロエ、頑張れ。私が側にいるからな」
と言う陛下の励ましと共に、私の出産が始まった。
痛い!痛い!痛い!痛い!!!
「生まれましたよ!」
とユニ先生が声を上げると同時に、
「フ、フンギャ~フンギャ~」
と赤ちゃんの泣き声が大きく響く。
「ご子息の誕生ですよ!」
と言う先生の声に、
「男の子…」
と私は呟いた。…つ、疲れた。
「クロエ、ク、クロエ……クロエ…」
と陛下は私の名前を呼びながら…泣いている。いや、号泣だ。
「陛下……つ、疲れました…」
と私がへらっと笑えば、
「あぁ…大変だったな…女性はこんなに大変な経験をしなくてはならないんだな…」
と陛下は泣きじゃくり、そして、
「クロエ…ありがとう。本当に、本当にありがとう」
と、汗まみれの私の額に口づけた。
「さぁ、赤ちゃんは産湯につけて綺麗にしましょうね」
とナラが赤ちゃんを連れていく。ユニ先生も、
「今から後産があります。陛下は廊下でお待ち下さい。終わったらまた呼びますから」
と陛下に声をかけた。
流石に後産は男性には見せられない。
陛下は渋っていたが、
「陛下、赤ちゃんを見ててあげて下さい」
と言うと、いそいそと、部屋を出ていった。
やっと終わった…。もう2度と嫌だ。しかし前世で友達も言っていたではないか、『もう2度と生まない!って思うぐらい痛かった筈なのに、忘れちゃうのよね~で、また出産の時に思うの。2度としたくないってね』と。
『女性は出産の痛みを忘れるように出来てるのよ』と前世の私の母も言っていたし、私もそう思える日が来るのだろうか。今は想像出来ないけど。
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