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第35話
しおりを挟む「陛下…私の仕事までしていては、陛下の方が倒れてしまいます」
夜の寝室でいつものように2人で今日の出来事を語り合う。
「大丈夫だよ。ちゃんと、セドリックにも手伝わせている」
そう笑顔で答える陛下。
…今度はセドリックが倒れないか心配になってきた。
「それに…昼間、庭へ出てびっくりしてしまいました。私の為に使用人達が小石を…」
と私が言えば、
「当たり前だろう?クロエに何かあったらどうするんだ?」
と陛下はさも当然の様に言う。
「陛下…少し過保護過ぎます。私は元気ですし、妊婦だからといって何もしないのも、ストレスですわ」
「クロエがそう言うから、仕事はさせているだろう?庭だって散歩させているじゃないか」
…仕事、今までの十分の一位だけどね。
私が無言でいると、陛下は私のまだほんの少ししか出ていないお腹を撫でて、
「頼むよクロエ。私は怖いんだ。
出産は命懸けだと聞く。私が恐れているのはクロエ…君を喪う事だけだ。
子どもが生まれるのは嬉しいよ。私とクロエの子だ。これ程嬉しい事はない。だがな…やはり怖いものは怖いんだ。
しかも、出産で私が手伝える事は何もない。
私に出来る事は、何の憂いもなくクロエがこの妊娠期間を終える事が出来るように取り計らう事だけだ。それはわかって欲しい」
と懇願するように私に言った。
確かに、出産で命を落とす女性はこの国でも少なくない。
私は必死に頼み込む陛下に、
「…わかりました。もう、陛下のお好きになさって下さい。
でも!ユニ先生に言われた事は守って下さいね」
と私は自分のお腹を撫でる陛下の手を優しく握った。
「…あまりクロエに食べさせ過ぎるな…と言うんだろ?」
陛下は子どもがいるのだから、お腹が減るだろう?と私にたくさん食べさせようとするので、先日、ユニ先生から注意を受けたばかりだ。
「太りすぎはかえって、難産になります。
私は殆んど悪阻もありませんでしたし、2人分食べる必要はないのです」
と私が笑って言うと、陛下は渋々、
「わかった」
と頷いた。
私は、そんな陛下に向かってある提案をする事にした。
「陛下…お願いがあるのですが…聞いていただけますか?」
と陛下の目を見る。
「もちろん。私に出来る事ならば何でもしよう」
と答える陛下に私は、
「陛下。『立ち会い出産』をお願いします」
とこの世界では聞いたこともないであろう言葉を口にするのであった。
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