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第34話
しおりを挟むそれからと言うもの…陛下の過保護が止まらない。
「クロエ!そんな重たい物を持ってはダメじゃないか。貸しなさい」
「…陛下。数枚の書類を持ち歩くのに、何の問題もありませんわ」
「いや、ダメだ!おい、リッチ!クロエに何も持たせるなと何度も言っただろう」
廊下で声を掛けられたかと思えば、いつもこれだ。
マルコ様も呆れるように、
「クロエ様に重たい物を持たせるような事はしておりませんが、これぐらいは…」
と陛下に少し反論する。
これも毎度の事。
こうなると陛下は引いてくれないので、大体マルコ様が謝罪して終わる。
陛下から解放されて、私のペラペラの書類を運ぶマルコ様に私は謝罪した。
「マルコ…ごめんなさいね。いつも」
「いえいえ。陛下の過保護っぷりは理解しています。もう、クロエ様は何も持たない方が良いですよ。
…今、その手に持っている扇子ですら、そろそろ取り上げられかねない」
とマルコ様は苦笑した。
扇子を取り上げられたら、何で口元を隠せば良いのか…。
そして陛下の暴走は止まらない。
「皆…何をしているの?」
私が庭へ散歩に出ると、たくさんの使用人が地面に這いつくばるようにして、何かを探していた。
すると、その中の1人の男性が手を止めて立ち上がると、
「はっ!妃陛下が散策される道に小石が落ちていないか、確認しておりました!」
と直立不動で答えた。
…小石?
「どうして小石を?」
と私が訊ねれば、
「妃陛下がつまづいたり、踏んで足を痛める事のないように…との陛下からのご命令にございます」
と答える男性の言葉に眩暈を覚える。
私は、
「皆、ありがとう。もうこれくらいで大丈夫よ。後は私が気を付ければ済む事ですから。
持ち場に戻って、自分達の仕事を続けて頂戴。皆の働きに感謝します」
と地面に這いつくばる使用人達に声を掛けた。
皆、少し戸惑っているようだが、私に一礼すると、散り散りに自分の持ち場に戻って行った。
「もう…陛下にも困ったものだわ。これじゃあ、気軽に庭の花を愛でる事も出来ないじゃない!」
と言う私に、隣で日傘を私にさしかけているナラが、
「ユニ先生からも、安定期に入ったから少し日に当たって散歩でも…と言われておりますのに…ねぇ」
と苦笑した。
「ナラ…笑い事じゃないわ。
仕事だってさせてもらえないし、散歩するにも、皆に迷惑をかけてしまうなんて…。王宮の外に出るなんてもっての他だし。私、逆にストレスでどうにかなりそうよ」
ワーカホリックの私は仕事が出来ないだけでも、なかなか辛い。
陛下のお気持ちは、痛いほどわかるのだけど…過保護過ぎるわ。
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