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第28話

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「陛下、エリザベート様を側妃に迎えるつもりはない。この気持ちに変わりはありませんね?」
と私が訊ねれば、

「もちろんだ。例え私の立場が悪くなろうとも…というのは国王としてどうかと思うが、それでも彼女を側妃に迎える事はない」
と隣の陛下は私と顔を見合せて頷いた。

「では。この一件、私にお任せください」

「いや、これは私の問題だ。それに、こんな事でクロエを矢面に立たせる訳にはいかない。
サーチェス公爵が例え脅してきても、それに屈するつもりはないよ」

「陛下。女には女の戦い方がございます。少し時間を置いて、再度公爵とエリザベート様とお話しましょう」
と私が言えば、

「時間を置く?何故?」
と陛下は不思議そうにした。

「また直ぐに断れば『良く考えろ』と言われるだけです。結果は同じでも考えたふりをしましょう。それと、少し確認したい事が…」
という私の答えに陛下は少し不服そうだ。しかし、

「クロエに考えがあるのなら…」
と渋々了承してくれた。



それから約1ヶ月後。決戦の日は訪れた。



「陛下。いや~待たされましたなぁ。何をそんな考える事があるのか、全く不思議で仕方ありませんでしたよ。
エリザベートを側妃にすれば、妃陛下に反発している者も黙るというもの。
しかも、今日の面会には妃陛下もご一緒とは。またまた『妃陛下に頭が上がらない陛下』と揶揄されかねませんなぁ。アハハハハ!」


な~にが、『アハハハハ』だ。笑っていられるのも今の内だぞ!と言いたい。言わないけど。

「そちらが『良く考えろ』と言ったのではないか。矛盾した事をペラペラと。
…まぁ、いい。そこのサーチェス公爵のご息女を側妃に…という話だったな」
と陛下が言えば、エリザベート様は陛下に綺麗なカーテシーをすると、


「ご機嫌麗しゅう存じます、陛下。このエリザベート、必ずや陛下のお役に立ってみせるとお約束いたしますわ。
どこぞのでしゃばりとは違いますので」
と私に視線をやるとにっこりと微笑んだ。

はいはい。普通なら不敬罪ね。
わかってる?まだあなた側妃に決定したわけでもないのに、何故私と肩を並べたつもりになってんの?

そんな気持ちを込めながら、私も微笑み返した。

「エリザベート・サーチェス。はっきり言っておこう。私の妃は後にも先にもこの、クロエ・ラインハルトただ1人。この決定は今後覆る事はない。これが私の返事だ」
と陛下ははっきりと2人に告げた。

もちろん2人とも納得いかない。

「陛下!妃陛下に何を言われているのか知りませんが、所詮お飾りの王妃ではありませんか!
それに、妃陛下はこう言っては何だが、貴族受けが悪い。良いですか?貴族を纏め上げてこそ、王族としての務めを果たせるのです!貴族を蔑ろにすれば、今後まともに政が出来なくなると何故わからないのですか!
それには、そこの妃陛下は邪魔なだけ。
平民なぞに力を付けさせれば、王制すら危うくなりますぞ!」
と顔を真っ赤にサーチェス公爵は立ち上がった。

陛下は、

「だから何だ。お前の耳は飾りか?私の決定が覆る事はないと言っただろう?」
と淡々と言う。2人の温度差が酷い。

すると、エリザベート様が、

「陛下。そこの女の言いなりになる必要はありません!お飾りの王妃に良いようにされるなど、王として恥ずかしくはないのですか?
私なら、陛下にそんな思いは…」
と陛下に意見する言葉を遮るように、私は、

「エリザベート?淑女の鏡とまで言われた貴女が…そんな大声を出すなんて…みっともないとは思いませんの?」
とエリザベート様に微笑んで見せた。

エリザベート様はハッとしたように、声のトーンを落とし、

「はっきりと申し上げます。クロエ妃陛下。貴女は王妃に相応しくありません。
王の邪魔をするような王妃はこの国に必要ないのです。自分の行いを反省してはいかがでしょうか?」
と私に言ってのけた。

…何故私にそこまで言えるのか…不思議だわ~。

陛下が横でムズムズしているけど、ここは私に任せろと言っているので、辛うじて黙って見守ってくれている。

…口喧嘩には負けた事がないのよ、私。
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