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第27話

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「クロエ、立ち話も何だから向こうで話そう」
と陛下に促され、私達はソファーへ腰かけた。私はあえて陛下の隣に座る。

言い難い事柄ならば、向かい合わせより、横並びの方が話し易くなると、前世で聞いた記憶がある。

陛下は私の手を握ると、

「サーチェス公爵は娘、エリザベートを我が側妃にと…そう言ってきた。
ルードリヒ殿下の言った通り、へリッジ公爵とは離縁が成立したそうだ。もしエリザベート嬢を側妃にするのであれば、今、クロエに反発している貴族達を纏めて黙らせると…そう言ってきた」

「…そうでしたか」

「それだけではない。もしエリザベート嬢を側妃に娶るのならば、クロエを離宮へ閉じ込めろ…とも言ってきた」

ふむ…中々図々しい。

「…婚約解消の責任を取れ…とでも言われましたか?」
と私が聞けば、陛下は図星だったようで顔を強張らせた。そして、

「あの時…私が不貞を働かなければエリザベート嬢はこの国で王妃になっていた。それを壊したのは私だ。そのせいでへリッジ公爵と婚姻を結んだ挙げ句、へリッジ公爵の元では不当な扱われ方をした。そして離縁…。これらを全て私の責任だと言われたのだ」

やっぱりね。陛下の痛い所を突いてきたって訳か。
陛下はその事に責任を感じていない訳ではない。心のどこかでずっとエリザベート様への負い目みたいなものを感じていた筈だ。
汚い事を考えるものだ、あの親子も。

「それで…陛下はどうなさるおつもりですか?」

「エリザベート嬢には申し訳ない事をしたと…ずっと思っていた。私が馬鹿な事をしたばかりに…。しかし、もしあのまま、エリザベート嬢と結婚していたら…私はこうしてクロエと一緒になれなかったと思うと、あの時の馬鹿な私の行いは、自分の人生で重要な何か…運命のような物だったのではないかと思うんだ。
私に側妃は必要ない。私にはクロエだけが居れば良い」
と握った私の手に額をつける陛下。

「では…側妃の件は断ると?」
と私が訊ねると、
陛下は顔を上げないまま、

「もちろんもう断ったさ。しかし、引いて貰えなかった。クロエは王妃としては些かでしゃばり過ぎだとな。このままでは、反発する貴族を押さえきれなくなると…そう脅された。多分、側妃に迎えなければ、自分が先導して、反クロエ派を焚き付ける…そう言う事だろう」

…益々、嫌な親子だ。

「それを聞いて陛下のお気持ちに変わりは?」
私の問いに陛下はゆるゆると首を横に振って、

「さっきからずっと考えていたが、私にはクロエ以外を妃にするなど、無理だ。クロエ以外の女性を抱くなど…考えただけで吐きそうだ」
と情けない声を出した。

…まぁ、そこまで好かれれば嫌な気はしない。
ここは私の出番だろう。
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