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第24話
しおりを挟むルードリヒ殿下は次の日から私を質問攻めにした。
「国民の就業率を上げる政策は?」
「贅沢税とは?」
「リサイクル…それは不要品を売ると言う事ですよね?…え?全て新品同様に修理を?」
「慈善事業に割く国費の割合は?」
etc…とまぁ、こういう具合。
その1つ1つに丁寧に答えていくと、
「やはり、クロエ妃陛下は素晴らしいです!僕にも新しいアイデアがあったらな」
と絶賛されてしまう。
…恥ずかしい。前世の記憶が残っている、云わばチートなのだから。
「そう言えば陛下から、クロエ妃陛下はお料理を自らなさるとか。…しかもそれが見たことも聞いたこともないお料理だとお伺いしたのですが…」
…陛下…余計な事を…。
「料理と呼べる程の物では…。珍しいだけですわ」
と私が言えば、
「是非、僕も食べてみたいのですが……ダメですか?」
とキュルンとした瞳でルードリヒ殿下は私を見つめる。…こいつあざといな…。
「ダメという訳ではありませんが。そんなに期待されても困りますわ」
やんわりと断ったつもりだったのだが、
「期待…しちゃいますけど、しない努力をします。なので是非!」
と押し切られてしまった。
私はランチにカツサンドを用意すると、
その話をどこから聞いたのか、陛下も食堂へ現れた。
「クロエのカツサンドを食べられると聞いてな」
とニコニコしながら椅子に腰かける陛下。…食べる気満々ですね。
カツサンドはルードリヒ殿下のお気に召したようで、
「あ~これをリンダが知ったら、地団駄踏んで悔しがるだろうなぁ。
クロエ妃陛下自らが僕のために料理して下さったなんて、リンダが聞いたら倒れてしまうかもしれません」
とカツサンドを頬張る殿下に、
「リンダ様が?」
と訊ねると、
「ええ。実はリンダは僕以上にクロエ妃陛下の信奉者でして…。本来、ラインハルト王国には2人で来るように出来ないか考えていたのですが、今、リンダのおばあ様の容態があまり思わしくなくて…」
と言う殿下に、
「そうでしたの…でも今後リンダ様は王太子妃になられる方。
いつの日か必ずお会い出来る日が来ますわ」
と私は答えた。
「リンダが聞けば喜びます。エリザベート夫人が妃陛下の悪口を言う度、彼女はストレスが溜まってしまって…今はエリザベート夫人とは距離を置いているのです。
…あと…これはまだ確定ではないと思うのですが…」
と殿下は声を少し潜めて、
「へリッジ公爵と離縁するのではないかと言われております」
と言った。
「離縁…それは、また」
と私が言葉を探していると、
「へリッジ公爵は今回の脱税で罰として領地の半分を王家に返上する事になりました。なので、領地からの収入がかなり減ってしまったのです。
それで残りの半分も王家に買い取って貰わなければ、借金の返済が難しくなるかもしれないと…」
とますます声を潜めた殿下は言った。
ということは、へリッジ公爵は領地を持たない貴族となる訳だ。
確か王宮でも役職に就いていたと思うが、脱税の一件でもしかすると降格もあり得る。
プライドの塊のようなエリザベート様がそれをどう思うのか…。
離縁を選んだとしても不思議はないのかもしれない。
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