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第20話
しおりを挟む「まぁ!私にですか。それはもちろん問題ありませんわ。
陛下、そんな不機嫌そうにされる事はありませんでしょう?」
と言う私に、
「クロエに害をなすつもりかもしれないではないか。ミラス王国は我が国とは主義主張が違う。
実のところ、クロエの改革を揶揄している貴族がミラス王国には多いと聞くし…それに、私がずっと側に付きっきりで居る事が出来る訳ではないのだし」
「しかし、私が聞いた話では、ルードリヒ殿下はミラス王国の中では革新的な考え方をお持ちの方とか。
それに、私の側には常にマルコがおります。陛下がご心配なさらずとも大丈夫です」
と言う私に、
「……マルコを頼りにしているのも気に入らないんだけどな…」
と小さく陛下は呟いた。
…ヤキモチかしら?護衛騎士に妬いた所で、どうしようもないのに…と私は少しだけ微笑んだ。
そんな陛下を可愛らしいと思う私も、恋をしている証拠だろう。
それから半月後、ミラス王国、ルードリヒ殿下はやって来た。
「ラインハルト国王陛下、妃陛下。この度は訪問の機会を作って下さいました事、心よりお礼申し上げます」
と深い緑色の髪に黒い瞳の幼さの残るルードリヒ殿下は私と陛下に挨拶をした。
そして満面の笑みで私の方に向き直ると、
「あぁ!本物のクロエ妃陛下にお会い出来る事を心より楽しみに思っておりました!」
と、私の方へと歩み寄る。
そんな突然動かれると、後ろのマルコ様が緊張するんだけど?!
そんなマルコの様子に気づいたのか、ルードリヒ殿下は、
「あ!すみません。あまりの嬉しさについ…。
大丈夫!僕は妃陛下の大ファンなんです!絶対に妃陛下を害する事などありませんから!」
と両手を上げて敵意がないことを示すと、笑顔をみせた。
…か、可愛い。
「クロエのファン?」
と私が言葉を発するより早く、陛下が疑問を口にした。
「はい!妃陛下の国民を思う気持ちに感銘を受けました!
僕も将来、ミラス王国をこのラインハルト王国と同じように、もっと国民に寄り添った国へと変えていきたいと思っています。
その為に、今回は是非とも妃陛下にお会いして、色々とお話を聞いてみたかったのです。
夢が叶いました!」
とニコニコ話すルードリヒ殿下に、
「そうなのか。でもミラス国王は…その政策には反対されるのでは?」
と陛下が少し心配そうに訊ねると、
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と私が問えば、
「はい。うちの家は何故か男児が生まれる確率が低くて…。王位継承権は、僕の次がヘリッジ公爵で…その次がヘリッジ公爵の嫡男となっているんです。
僕の考え方はミラス王国の根底を揺るがしかねないと、ヘリッジ公爵は自分を次期国王にするよう、父や側近達に進言していました」
とルードリヒ殿下は答えた。
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