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第19話
しおりを挟む「ありがとう。直ぐに目を通すわね」
と私が受けとると、
「王太子殿下自らこの国への訪問を望んでいるそうです」
と手紙を読む前に、事務官が私に一言添えた。
ミラス王国。
隣国であり、別に仲が悪い訳ではないが我が国とは一定の距離を置いている。
徹底した身分制度。貴族至上主義。男尊女卑。どれをとっても私や陛下が推し進めている我が国の政策と真逆をいく…古くさい国だ。
確か…今回立太子したルードリヒ殿下は現国王の息子でありながらも、革新的な物の考え方をする人物だと聞いた事がある。
それで、父である国王と折り合いが悪かった…と。
それがなかなか王太子が決まらなかった原因の1つである事は間違いない。
そしてミラス王国にはもう1人の王太子の候補者が居た…それがヘリッジ公爵、その人だ。
後継者問題でルードリヒ殿下とヘリッジ公爵の間では一悶着あったらしいのだが、詳しい事は表に出ていない。
まぁ、ルードリヒ殿下が立太子したという事が示すのは、軍配は殿下に上がった…という事に他ならない。
その彼が我が国に立太子の挨拶に来たいと言う…はて、何故かしら?
その夜、
「クロエ、ミラス王国の王太子殿下の件だが…」
「わざわざこちらに立太子のご挨拶に見えられるとか…。ミラス王国とは国交はありますが、友好国という訳でもありませんのに、珍しいですわね?」
と言う私に陛下は少し難しい顔をして、
「実は…あの手紙には2枚目があってな…」
「2枚目…ですか?私は見ておりませんが…」
「あぁ…あえてクロエに見せなかったんだが…」
…見たら不味い物?じゃあ私、聞かない方が良いんじゃない?
「陛下…言いにくい事なら無理には…」
「いや、別に言いにくい…という訳ではないんだが、我が国に来たら、是非やりたい事があるのだと言うんだ」
「やりたい事…。我が国でしか出来ない何か…という事でしょうか?」
と私が訪ねると、
「まぁ…確かに我が国でしか出来ない事かもしれないな…」
と少し陛下は言うのを躊躇っているようだ。
しかし、意を決したのか、
「クロエ…とにかく君に会いたいそうだ。会って話がしたい…と。
出来ればこの国に滞在する間、クロエにこの国を案内して欲しいとも言ってたよ」
と少とし不機嫌そうに私に言った。
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