上 下
19 / 38

第19話

しおりを挟む

「ありがとう。直ぐに目を通すわね」
と私が受けとると、

「王太子殿下自らこの国への訪問を望んでいるそうです」
と手紙を読む前に、事務官が私に一言添えた。


ミラス王国。
隣国であり、別に仲が悪い訳ではないが我が国とは一定の距離を置いている。
 
徹底した身分制度。貴族至上主義。男尊女卑。どれをとっても私や陛下が推し進めている我が国の政策と真逆をいく…古くさい国だ。

確か…今回立太子したルードリヒ殿下は現国王の息子でありながらも、革新的な物の考え方をする人物だと聞いた事がある。

それで、父である国王と折り合いが悪かった…と。
それがなかなか王太子が決まらなかった原因の1つである事は間違いない。

そしてミラス王国にはもう1人の王太子の候補者が居た…それがヘリッジ公爵、その人だ。

後継者問題でルードリヒ殿下とヘリッジ公爵の間では一悶着あったらしいのだが、詳しい事は表に出ていない。

まぁ、ルードリヒ殿下が立太子したという事が示すのは、軍配は殿下に上がった…という事に他ならない。

その彼が我が国に立太子の挨拶に来たいと言う…はて、何故かしら?


その夜、

「クロエ、ミラス王国の王太子殿下の件だが…」

「わざわざこちらに立太子のご挨拶に見えられるとか…。ミラス王国とは国交はありますが、友好国という訳でもありませんのに、珍しいですわね?」
と言う私に陛下は少し難しい顔をして、

「実は…あの手紙には2枚目があってな…」

「2枚目…ですか?私は見ておりませんが…」

「あぁ…あえてクロエに見せなかったんだが…」

…見たら不味い物?じゃあ私、聞かない方が良いんじゃない?

「陛下…言いにくい事なら無理には…」

「いや、別に言いにくい…という訳ではないんだが、我が国に来たら、是非やりたい事があるのだと言うんだ」

「やりたい事…。我が国でしか出来ない何か…という事でしょうか?」
と私が訪ねると、

「まぁ…確かに我が国でしか出来ない事かもしれないな…」
と少し陛下は言うのを躊躇っているようだ。

しかし、意を決したのか、

「クロエ…とにかく君に会いたいそうだ。会って話がしたい…と。
出来ればこの国に滞在する間、クロエにこの国を案内して欲しいとも言ってたよ」
と少とし不機嫌そうに私に言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。

愛しているのは王女でなくて幼馴染

岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

幼馴染に奪われそうな王子と公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
「王子様、本当に愛しているのは誰ですか???」 「私が愛しているのは君だけだ……」 「そんなウソ……これ以上は通用しませんよ???」 背後には幼馴染……どうして???

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑 side story

岡暁舟
恋愛
本編に登場する主人公マリアの婚約相手、王子スミスの物語。スミス視点で生い立ちから描いていきます。

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

処理中です...