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第16話

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そして…私の目の前には私より真っ赤になった陛下がいる。

「クロエ…それは…その…私の自惚れでなければ、私と…本当の夫婦になりたいと…そう言う意味だろうか?」

…改めて確認されると恥ずかしいんだけど…

「はい…その通りの意味です。ダメでしょうか?」
と私が上目遣いで陛下を見ると、ガバッと陛下が私を抱き締めた。

…ちょっと苦しい…

「ダメなもんか!あぁ!クロエ…本当に、本当なんだな?」

だから…確認しないで欲しい…恥ずかしいから…

「はい…急かす事なく、私の気持ちが変わる事を待っていて下さいましてありがとうございます。
陛下の優しさに甘えてばかりで、申し訳ございません」

「そんな事!いくらでも待つ気でいたさ。
どうせ私はクロエを諦めきれなかったんだから。
クロエが側に居るのに…側妃を持つ気持ちには、どうしてもなれなかったしな」

…嬉しい…けど…ちょっと待って?

私はそっと陛下の胸を押して、少しだけその腕から逃れるように距離を取ると、

「陛下…陛下はいつから…その…私の事を?」
と私は訊ねた。

だって、ロッテン様が居た時は少なくともロッテン様を側妃にする気満々でいたのよね?

「いつ…いつだろうか…。ハッキリと自覚したのは、旅行に行った辺りだが。
今思うと…クロエは忘れているかもしれないが、クロエに口づけをした時には、既に意識していたように思うな」

…口づけ?結婚式…ではないよね?
口づけ…口づけ…あ!

「もしかして…ロッテン子爵令嬢と陛下が喧嘩をして…仲直りのお手伝いをした時の事でしょうか?」

「あぁ。そうだ。あの時には既に惹かれ始めていたように思う」

え!?早すぎない?

「それは…」
私は驚いて言葉が出てこない。

「クロエは私の事を不誠実な男だと思うだろうな…ロッテン子爵令嬢の存在がありながら、クロエに惹かれていたなどと聞かされて」

…まぁ、それは確かに。
私が黙っているのを肯定と受け取った陛下は慌てて、

「しかし!これだけは信じて欲しい。これからは間違いなくクロエ一筋だ!それは約束する!絶対にクロエを裏切ったりしない!」
と私の手を握って、目を見て宣言した。


私はその真剣さに思わず、

「プッ」
と吹き出してしまう。

「な、何故笑うんだ?」
と困惑する陛下に、

「そうですねぇ…もし裏切ったりしたら…どうなるか、覚悟は出来ていますか?」
と私が意地悪く微笑むと、

「か、覚悟も何も…絶対に裏切らない!裏切らないが…どうなるんだ?」

「まず…お相手の女性を呪って差し上げます」
と私がニッコリ微笑むと、陛下は目を丸くした。

「何故?何故私ではなく、相手を?」

「いいですか?女は浮気をされると、大体相手の女に憎悪が向くものなのです。
ですから、私もそのお相手を呪うと思いますわ。それから…」

「それから?」

「陛下が1日に最低1回は、私に『愛している』と言う事をノルマに致したいと思います」

「そ、それは罰なのか?ご褒美ではなく?」

「はい。陛下は『言霊』ってご存知ですか?」

「『言霊』?それは何だ?」

「『言霊』とは、言葉が持っていると信じられている神秘的な霊力のことなのです。 
古代から言葉には「言霊」があり、発した言葉通りの結果が表れる力があると考えられておりますの。
ですから、陛下が、毎日私に『愛している』と言っていれば、いつの日か、また、私を愛して下さる筈ですもの」
と私が笑うと、陛下は、

「別にそれは、今言っても良いんだよな?クロエ、私はクロエを愛している。世界中の誰よりもだ。これからもずっと私の隣に居て欲しい」
と真面目な顔で私に告げた。

私は思わず陛下に、

「これからもずっとお側に居るとお約束します」
と自分から抱きついた。

陛下はそんな私をきつく抱き締め返してくれた。
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