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第14話
しおりを挟む「クロエ!」
とノックと共に陛下が私の部屋に入って来た。マリアが出て行ってから、ほんの僅かな時間しか経っていないのだけど…。
「陛下、まだ、入室許可のお返事をしていませんわ」
と私が笑いながら言うと、
「あ、あぁ、すまない。気が急いてしまって」
と少し照れながらも、私の寝台に向かって陛下が大股で歩いて来た。
私の寝台の横に椅子を持って来た陛下はそれに腰かけると、
「体調はどうだい?」
と私に訊いた。きっとユニ先生からも訊いている筈だけど、私の口からも聞きたいのだろう。
「はい。もうすっかり良くなりました。もう仕事に戻りたいのですけど…」
と私が答えると、
「ダメ、ダメ!まだ月の物は終わっていないのだろう?ユニ先生もそう仰っていた。
あと少しなんだから、ゆっくり休んでくれ」
と本気のトーンで陛下が私にダメ出しをする。
「フフ…。わかってます。少し言ってみただけですわ。今回の事で、周りの皆に心配と迷惑をかけたんですもの。きちんと言う通りに致します」
と私が微笑むと、陛下は、
「ああ。そうしてくれ。クロエ、これからはきちんと休暇を取ること。それと、月の物の間は仕事を休む事。『生理休暇』?だったかな?自分の提案なんだから、ルールは守るんだよ?」
と子どもに言い聞かせるように優しく言った。
「はい。言い付けを守ると約束しますわ。…陛下、毎日お花をありがとうございました。心が明るくなりました。それと…申し訳ありませんでした」
と私はお礼と謝罪の意味を込め、頭を下げた。
「な、何故クロエが謝るんだ!?謝るのは私の方だ。あれは言葉の綾だ。君とジュリエッタ嬢を比べるつもりなどなかったんだ。ましてや君を傷付けるつもりなんてなかった。すまなかった」
と陛下も頭を下げる。…他の人が見たらまた、かかあ天下だと思われちゃうわ。
「陛下、頭を上げて下さい。私が…下らない嫉妬をしたんです」
と私が言うと、
「し…嫉妬?」
と陛下は私の顔をまじまじと見る。
…恥ずかしいじゃないか…そんなに見られたら。
「し…嫉妬…と言いますか…。ジュリエッタに甘い陛下を見ているとイライラしてしまって…」
と私が言えば、
「それは…私の態度が悪いと言いたいのだな?それはその通りだ。ジュリエッタ嬢はあくまで侍女として王宮で預かっていたのに、つい…クロエの妹だと思うと邪険に出来ずに…すまない」
と陛下は落ち込んだ。
…違う!そういう事が言いたい訳じゃなくて…あぁ…私の語彙力の無さが問題なの?それとも…私が素直になれないことが問題なの?
気持ちを…素直に伝えるのは、本当に難しい…そして実の所、苦手だ。
でも、ここで言わなきゃ女が廃る!
ウジウジするのも…ここまでだ。
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