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「ただいま」と「おかえり」

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仕事を終えて、帰宅する。

「お帰り~」
千秋くんは先に帰っていた。

「ただいま。いい匂いがする~」

「今、夕飯作ってるとこ。奏さんから預かってたお金で食材買ってきちゃった。
ごめんね。」

「?なんで謝るの?私も食べるご飯でしょ?」

「うん、でもなんか申し訳なくて。だって昨日から俺の為にお金使わせてるし…絶対、仕事決まったら返すからね。」

「だから、気にしなくて良いって。ところで今日は何してたの?」

「役所で手続きして、ハローワーク行った。」

「仕事、良さそうなのあった?」

「何個か気になる所あったから、履歴書書いてみた。」

「履歴書って…」

「うん、この前のガチャで出てきたやつに入ってた。それをそのまま書き写したよ。」

「それって詐欺なんじゃ…」

「詐欺じゃないよ!あのガチャから出てきたって事は俺に必要なもの。多分、あれに書いてた学校は卒業した事になってるよ。言ったでしょ。一種の魔法だって。」

「めちゃくちゃファンタジーだね。」
まぁ、千秋くんの存在自体がファンタジーだけど。

「あんまり深く考えない!考えたら負けだよ。さぁ、ご飯にしようよ。」

「うん。考えたら負けってのは確かにそうだね。じゃあ、ちょっと手を洗って着替えてくるよ。」
私は家でリラックスしたいので、部屋着に着替える人だ。

「うん、じゃあ、ご飯準備しとくね。あ、もう、もなかにはご飯あげたから。」

「ありがとう!すぐ戻ってくるねー」

私は着替えてダイニングへ向かう。

もなかは食事が済んだのか、顔を洗っていた。

美味しい夕飯も終わり、リビングで、2人と一匹でまったりする。

「ねぇ、明日私午後からお休みなんだけど、千秋くんのスマホ買いに行こうよ。」

「え、スマホ?」

「うん。履歴書に電話番号書かなきゃ、困るでしょ?それに、私も連絡取れないと困るし。」

「いいの?実は俺もどうしようかと思ってたんだ。」

「必要な物のガチャに入ってれば良かったのにね。」

「本当だね。俺の念じ方が足りなかったよ。」
その後も2人で取り留めのない話をする。こんな時間、本当に久しぶりだな。

母が病気になってからは、入退院を繰り返してたし、母が亡くなってからは、独り暮らしだったから。
休みの日なんて、1日誰とも喋らない日があったりして、自分の声を聞かない事も多かったのに。

千秋くんは本当に不思議。私の心の壁を易々と越えてしまう。
このまま絆されそうになる。でも、まだ私は男の人に心の全てを預けるのが怖い。また、裏切られるのが怖いのだ。
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