理想のオトコ、飼ってます。

初瀬 叶

文字の大きさ
上 下
7 / 22

嬉しい提案 side千秋

しおりを挟む
片付けるの終わったけど…どうしよう。仲直りしたいんだけどな…。

「ところで千秋くん。」
彼女が話しかけてくれた。

「……何?」
嬉しいのに、つい拗ねた口調になっちゃった。

「本当に帰る所がないの?」

「ないよ。」
どうしよう。やっぱり出ていけって言われるのかな?不安になる。

「じゃあ、うちにいてもいいよ。」
俺は顔中笑顔にして、振り向く。

「本当?!」
あ、奏さん猫抱いてる。猫が羨ましい。

「このマンション、ファミリータイプで今は私1人だし、部屋余ってるし。
女の独り暮らしもなにかと不安だから、番犬代わりね。
だってワンコなんでしょ?」
笑いながら奏さんが言う。

「番犬でも、愛玩犬でもなんでもなるよ!なんでもするし、なんでも言う事聞く!
ありがとう、奏さん!」

嬉しすぎて、奏さんに抱きついて、殴られた。

殴られた事も、嬉しい。
もはや俺って変態?

「ところでさぁ。なんで私の名前知ってんの?」

奏さんの前に正座した俺に、彼女は聞く。

「奏さんが寝てる間にテーブルに置いてあったDMの宛名みた。」

これも半分本当、半分嘘。
下の名前はガチャに居た時から知ってた。

連れの男が「奏」って呼んでたから。
めっちゃムカついたけど、名前を知れて嬉しかった。
名字はさっき知ったけど。

「ふーん。でさぁ、千秋くんは学生?社会人?」 

「どっちなんだろ?奏さんはどっちが良い?」

そこまでは設定されていない。
『必要な物』が出来たらガチャをしに行けばなんとかなる。

「え、それってどういう意味?」
奏さんが目を丸くする。そんな顔も可愛い。

「うんとね。相手にある程度合わせる事が出来るって思ってもらったら良いんだけど。
でも、ここに住むのに家賃とか必要だよね。俺、働こっかな。」
ただでさえ年下の俺を頼ってはくれないかもしれないから、只の居候にはなりたくない。
少しでも奏さんの役に立ちたい。

「ここは分譲でローンも終わってるから家賃は心配しなくて良いけど、私の給料だけじゃ、2人で暮らすのは厳しいから仕事してもらえると嬉しいかな。」


奏さんって、お人好し過ぎない?
俺が言える立場じゃないけど、ガチャから出てきたって言ってるヤバイ奴と一緒に暮らすとか、無防備にも程があるよね。
1番の危険人物、多分俺だけど。

奏さんに嫌われたくないから、無理矢理襲ったりはしないけど、なんなら、合意があれば今すぐでも押し倒したいって思ってるよ?貞操の危機よ?大丈夫?

なんて心では思っていても、尾首にもださないけど。

「じゃあ、すぐにでも仕事探すね。あと、家事も俺やるよ。せっかく一緒に暮らしてもらえるんだし。」

「まぁ、仕事が見つかるまでは甘えちゃおうかな。でも、千秋くんが仕事始めたら、当番制にしよう」

あーなんて可愛いんだろ。俺の奏さん。
こんな俺を受け入れてくれて。まじ女神。

俺1人で働くから、ずっと家に居てくれないかな。もう外に出したくない。

「でもさ。ガチャ出身だと、身分証明とか何もないんじゃない?仕事探せるの?戸籍とか、住民票とか…どうするの」

奏さんの心配ももっともだ。心配そうな顔も可愛い。

「じゃあ、今からあのガチャに行こ!」
俺は、奏さんの手を引いて、出掛けようとした。

「ちょっ、ちょっと待って!私、まだ部屋着!」

めちゃくちゃ焦る奏さんがいた。その姿も可愛い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」 ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。 きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。 いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

【完結】いくら溺愛されても、顔がいいから結婚したいと言う男は信用できません!

大森 樹
恋愛
天使の生まれ変わりと言われるほど可愛い子爵令嬢のアイラは、ある日突然騎士のオスカーに求婚される。 なぜアイラに求婚してくれたのか尋ねると「それはもちろん、君の顔がいいからだ!」と言われてしまった。 顔で女を選ぶ男が一番嫌いなアイラは、こっ酷くオスカーを振るがそれでもオスカーは諦める様子はなく毎日アイラに熱烈なラブコールを送るのだった。 それに加えて、美形で紳士な公爵令息ファビアンもアイラが好きなようで!? しかし、アイラには結婚よりも叶えたい夢があった。 アイラはどちらと恋をする? もしくは恋は諦めて、夢を選ぶのか……最後までお楽しみください。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

愛しているのは王女でなくて幼馴染

岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

「大嫌い」と結婚直前に婚約者に言われた私。

狼狼3
恋愛
婚約してから数年。 後少しで結婚というときに、婚約者から呼び出されて言われたことは 「大嫌い」だった。

処理中です...