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絶対条件

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「ほんと、奏ってさぁ、男運ないよねぇ。結構、顔も可愛いし、モテるじゃん。
なんでだろうね。」

「そんなの、私が知りたいよ。」

「ってかさぁ、奏って自分から好きになったりしないの?いつも向こうからじゃん。」

「うーん。最近は全然ないなぁ。中学の時に、初恋相手に告白してフラれたトラウマかな?
こっちから好きになるのが怖いっていうか…自分が好きになった相手に好かれる自信がないって感じかなぁ。」

「でもさ、チョイチョイ彼氏は出来るよね。」

「うん。向こうから好きって言われて、私の中の合格ラインに達してる人だったら、とりあえず付き合ってみるかな。
付き合ってたら、その人の良いとことか見えてきたりして、結局私も好きになっちゃうしね。」

「じゃあさ、今までの彼氏って奏のタイプってわけじゃないの?」

「そう言われれば、めっちゃタイプとかじゃないよね。
でも、合格ラインではあるよ。100点満点じゃないだけで。
最初から赤点の人とは付き合えないし。」

「まぁ、確かに生理的に無理な人とか、たまに居るもんね。」

「そうそう。完全アウトじゃなきゃ、付き合ってみるかな。その時彼氏がいなけれゃね。」

「じゃあ、ダメな男引き寄せ体質って事じゃん。それって幸せになれそうにないよね。」

「ほんと、それ。笑い事じゃないから。」

「じゃあさ、奏の理想のオトコのタイプってどんなの?」

「そうだねぇ。強いていうなら、犬みたいな人!」

「犬みたい?何それ。」







「犬みたい…ね。」

「うん。その時はそう答えたんだよね。」

「じゃあ、それじゃない?奏さんの絶対条件。だって俺、ワンコっぽくない?」
確かに見た目はワンコっぽい。

「確かに見た目はそうかもね。でも、見た目の事じゃなくて…なんて言うか上手く表現出来ないけど、従順な人が良いっていうか…
そんな感じで犬っぽいって答えたんだったと思うんだよね。はっきりとその時の気持ちを覚えてるわけじゃないけど。」

「大丈夫だよ。俺、奏さんに従順な彼氏になるから!
なんでも言う事きいちゃうよ~!」

「なんで、付き合う前提なのよ。
そもそも、私、今、彼氏なんて欲しくないし。」

「ん?でも、あのガチャが見えたんだよね。」

「あのガチャって…理想のオトコって言うガチャ?」

「そう、俺の入ってたガチャ。あれは必要としている人にしか見えないんだ。必要としている人が、必要としている物が手に入るガチャだから。」

「じゃあ、私、本当は彼氏が欲しかったって事なの?
そんなの嘘だぁ。
私は今の生活に満足してるもん。男に振り回される生活にはもう、うんざり。」

「えーそんな事言わないでよ。『理想のオトコ』だよ。
絶対俺たち付き合った方がいいって!」

「えー、やだよ。これじゃあ今までと同じパターンだもん。
告白されて付き合って。
ダメ男を引き寄せる体質なんだから、千秋くんもダメ男に決まってる。」

「えーひどーい。俺、泣いちゃうよ?」

「とにかく、次に付き合う人は、自分がこの人!って決めた人にするから。
今までとは違うパターンじゃなきゃ、幸せになれない気がするし。
とにかく、ご飯も食べたし、千秋くんはお家に帰って!」

「嫌だ!奏さんには『俺』が必要なんだよ。他の誰でもない。この俺が選ばれたの。
この場所を俺は誰にも譲るつもりないから。
それに、もう俺には帰る所もないからね!」

そう言うと、彼…千秋くんは少し拗ねたように口を尖らせ、ダイニングテーブルの上を片付け始めた。

私は今だに信じられない思いで千秋くんを見つめる。
だって、信じられるわけがない。
まだ、私は目を開けたまま、夢を見てるって言われた方が納得する。

ガチャから人間が出てくる(実際は人形だったけど)なんて、ある意味ホラーでしかない。
夢なら醒めてくれ。
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