旦那様は転生者!

初瀬 叶

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75話〈最終話〉

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「マイラが向こうの世界で身につけていた物より、ずっと安物だし、宝石……って言って良いかわからないぐらい小さな石だけど…」
と言いながらハヤトは私が摘まんだ指輪を奪うと、私の左手を取ってその薬指に指輪をはめた。

私は指輪がはめられた左手を掲げるようにして眺める。

「可愛い」

「……可愛いね。うん。まぁいいや。実はさ、指輪には意味があるんだよね」

「意味ですか?」
私は自分の左手を眺めるのをやめ、ハヤトの顔を見た。

「なんかさ、あっちで色んな体験して、年老いて。人生の結末を迎えちゃった気がしてるんだけど、ここでの俺はまだ大学生で、これから就職して、働いて……って人生2周目を生きていく気持ち。でもその中でぜーんぜん変わらない気持ちがあるんだ」

「気持ち……」

「うん。それは、マイラを好きだって気持ち。正直もうそれは何十年も変わってない。そしてこれからも変わる事はないって確信があるんだ。だから……俺が大学を卒業して、無事に社会人になったら結婚してくれない?」

そう言ったハヤトの顔は少し赤かった。

「はい!私もハヤトとずっと一緒にいたい。よろしくお願いします」
と私は笑顔で返事をした。

そして、ふと疑問が湧く。

「……で、指輪の意味とは?」
と尋ねる私に、

「あ……説明するの忘れてた……」
とハヤトは呟いた。

その後、ハヤトは結婚を約束したら指輪を贈るのだと説明してくれた。
まだ学生だからこんな小さな石の指輪しか贈れなかったけど、給料を貯めてもっと豪華な物を贈るからと言うハヤトに、私はこれで十分だと答えた。


それから3年後。私達は結婚した。

結婚式は家族だけ。私に家族は居ないので、何故か店長さんが私とバージンロードを歩いた。

「どうして店長さんが泣いているんですか?」
と私をエスコートしながら、号泣している店長に小声で尋ねる。

「ヒック……だってマイラちゃんがお店辞めちゃうって言うから」

……あ、そっちですか。

教会で式を挙げた私達を皆が祝福してくれた。ハヤトと千秋の家族はとても優しくて、どこの馬の骨ともわからない私を受け入れてくれた。

皆の笑顔を見ながら私は、

「結婚式って……素敵な物だったんですね」
と私が微笑めば、ハヤトは

「マイラは……2回目だろう?」
と少し意地悪そうにそう言った。

「あの時は、だれも笑顔ではなかったので。私も含めですが」

「……そうか。じゃあ、前のは忘れて今日を楽しもう。……マイラ。幸せにするから」
とハヤトが私を抱き締めた。

すると、チアキが、

「あーっ!またイチャイチャして!!」
と私達に指を指す。

「別にいいだろ!!好きなんだから!」
と私を抱き締めたまま言い返すハヤトに笑みが溢れた。

そして私は

「一緒に幸せになりましょうね。もう離れるのはいやですから」
とハヤトの腕に抱かれながらそう言った。

2度と会えないと思っていた。
この幸せをもう手離す事はしない。

私は幸せを噛み締めながら、ふとフェルナンド殿下に想いを馳せた。
彼にも幸せになっていて欲しい。

「……今、別の男の事、考えていただろ?」
と何故か勘の鋭いハヤトの声が聞こえる。

私は、

「いえ。別の男じゃないですよ?……ある意味同じ男性です」
と笑った。

                                            -Fin-
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

これにて「旦那様は転生者!」は完結です。
どうやって終わるのかを悩んでしまって、なかなか更新出来ない日が続いて申し訳ありませんでした。

最後まで読んで下さいました皆様に心からの感謝を。
また別の物語でお会い出来る事を楽しみにしております。                         初瀬 叶
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