73 / 75
73話
しおりを挟む
「お帰りなさいませ!ご主人様!」
私が元気よく挨拶すると、ハヤトは固まった。
あの後私は結局、店長のお友達のお部屋へと引っ越しをした。
ハヤトは大学生。勉学が本分だ。
私と暮らす事でハヤトの邪魔をしたくない。
ハヤトは随分と渋っていたが、チアキから、
『一緒に暮らすより、カレカノとして待ち合わせデートしたり、会えない時間にお互いを想ったり、寝落ち通話したり……そんな付き合いの方がいつまでも新鮮で良いんじゃない?』
と言われ、『いや、何十年も離れてたけど?』と文句を言いながらも、
『結婚したら嫌でも一緒に居れるんだから』というチアキに押しきられて最後は頷いてくれた。
私とハヤトは晴れて恋人になった。
しかし…恋人って何をしたら良いのか……私には全く想像もつかなかった。
恋……はハヤトを好きだと思う気持ちなので理解出来た。
しかし、私は今までデートもした事なければ、誰かとお付き合いするという経験も初めてだ。
チアキからは、
『お兄ちゃんもそんなに経験なさそうだから、堅苦しく考えなくて良いんじゃない?』と笑われた。
どうにもこうにも埒があかず、相談した店長には、
『マイラちゃんが、したい事をしたい様にしたら良いんだよ。会いたいな…と思えばそれを伝えたら良いし、声が聞きたいなって思えば、連絡を取れば良い。相手がいる事だから、全部が全部、自分の意見を押し通す事は出来ないけど、そのもどかしさすら、愛しいと思えるようになるから』
と言われ、少しだけ気分が楽になった。
私とハヤトは『夫婦』から『恋人』へ。
普通は逆だと思うけど、私達は元々の出会いが普通ではない。そう思えば、これで合っている様にも思う。
メイド姿の私を見て、ハヤトは少し顔を赤くしながら
「か……かわいい」
と小さく呟いた。
今日は私の働いているお店にハヤトが来る日。
1度私の働く姿を見て欲しいという私の願いを叶えてくれた。
私はいつもの様にハヤトへも接客をする。
もちろんそこには他のお客様もいらっしゃる訳で、
「河合様、今日もありがとうございます」
「マイラちゃん、今日も可愛いね。今日は……そうだなぁ、やっぱりオムライスにしよう」
「はい!今日は何の絵にしますか?」
「この前ウサギを描いてもらったし……今日はでっかいハートにして貰おうかな?」
「では、私から河合様への感謝を込めて大きなハートを描かせていただきますね!」
そんなやり取りをジッと見つめる視線が痛い。
振り返らなくても分かる。……ハヤトだろう。
私がオムライスを運んで、大きなハートをケチャップで描いていると、河合様が小さな声で、
「何か、めちゃくちゃ俺を見てくるお客さんがいるんだけど……」
と私に尋ねてきた。……ハヤト……河合様に穴が開いちゃうわ。
「あの方、このお店初めてなんです。慣れないせいで少し緊張なさっているようで……」
と私が笑顔で誤魔化せば、河合様は、
「そっか……緊張……」
とどこか腑に落ちない様な表情で頷いた。
私が元気よく挨拶すると、ハヤトは固まった。
あの後私は結局、店長のお友達のお部屋へと引っ越しをした。
ハヤトは大学生。勉学が本分だ。
私と暮らす事でハヤトの邪魔をしたくない。
ハヤトは随分と渋っていたが、チアキから、
『一緒に暮らすより、カレカノとして待ち合わせデートしたり、会えない時間にお互いを想ったり、寝落ち通話したり……そんな付き合いの方がいつまでも新鮮で良いんじゃない?』
と言われ、『いや、何十年も離れてたけど?』と文句を言いながらも、
『結婚したら嫌でも一緒に居れるんだから』というチアキに押しきられて最後は頷いてくれた。
私とハヤトは晴れて恋人になった。
しかし…恋人って何をしたら良いのか……私には全く想像もつかなかった。
恋……はハヤトを好きだと思う気持ちなので理解出来た。
しかし、私は今までデートもした事なければ、誰かとお付き合いするという経験も初めてだ。
チアキからは、
『お兄ちゃんもそんなに経験なさそうだから、堅苦しく考えなくて良いんじゃない?』と笑われた。
どうにもこうにも埒があかず、相談した店長には、
『マイラちゃんが、したい事をしたい様にしたら良いんだよ。会いたいな…と思えばそれを伝えたら良いし、声が聞きたいなって思えば、連絡を取れば良い。相手がいる事だから、全部が全部、自分の意見を押し通す事は出来ないけど、そのもどかしさすら、愛しいと思えるようになるから』
と言われ、少しだけ気分が楽になった。
私とハヤトは『夫婦』から『恋人』へ。
普通は逆だと思うけど、私達は元々の出会いが普通ではない。そう思えば、これで合っている様にも思う。
メイド姿の私を見て、ハヤトは少し顔を赤くしながら
「か……かわいい」
と小さく呟いた。
今日は私の働いているお店にハヤトが来る日。
1度私の働く姿を見て欲しいという私の願いを叶えてくれた。
私はいつもの様にハヤトへも接客をする。
もちろんそこには他のお客様もいらっしゃる訳で、
「河合様、今日もありがとうございます」
「マイラちゃん、今日も可愛いね。今日は……そうだなぁ、やっぱりオムライスにしよう」
「はい!今日は何の絵にしますか?」
「この前ウサギを描いてもらったし……今日はでっかいハートにして貰おうかな?」
「では、私から河合様への感謝を込めて大きなハートを描かせていただきますね!」
そんなやり取りをジッと見つめる視線が痛い。
振り返らなくても分かる。……ハヤトだろう。
私がオムライスを運んで、大きなハートをケチャップで描いていると、河合様が小さな声で、
「何か、めちゃくちゃ俺を見てくるお客さんがいるんだけど……」
と私に尋ねてきた。……ハヤト……河合様に穴が開いちゃうわ。
「あの方、このお店初めてなんです。慣れないせいで少し緊張なさっているようで……」
と私が笑顔で誤魔化せば、河合様は、
「そっか……緊張……」
とどこか腑に落ちない様な表情で頷いた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
909
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる