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70話
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せっかく再び会えたというのに、もう喧嘩だ。
というか、ハヤトがこんなわからず屋だとは思わなかった。
「とにかく!店長が心配していると思うので、連絡をさせて下さい!」
「ダメだ!メイド喫茶はもうおしまい!辞めて他のバイトを探せば良いだろう?」
「もう!!私はあの仕事が好きなんです!!最初は何をしても上手くいきませんでしたし、失敗も多かったです。でも、それでも『大丈夫だよ』って言ってくれる店長さんや『そのうち慣れるよ』って言ってくれるメイド仲間の皆様、『失敗したって良いじゃない。笑顔でいてくれる事が大事だよ』って言ってくれるお客様に支えられて、今の私があるんです。私……あの店で働いて、初めて褒められたんです。今までは、何をしても認めて貰えなかった。足を引っ張ろうとする人に隙を見せまいと必死でした。そのうち笑顔なんて……忘れてしまいました。自分はダメな人間なのだと、ずっと思い込まされてきたんです。でも、ここでは違う。努力すればその分認めて貰えます。自然と笑顔になれて、それを見たお客様も笑顔になってくれる。そんな素敵な体験、私、初めてでした。
私、メイドの仕事も、あのお店も店長さんも仕事仲間の皆も、お客様も大好きなんです。……だからお願い。私をあのお店で働かせて下さい」
私は最後には涙を流してハヤトに頼み込むように頭を下げていた。
「………わかった」
とハヤトは渋々という様に私にスマホを渡す。
私は慌てて店長へ電話をかけ直した。
「……はい。はい…大丈夫です。お騒がせしました。これからもよろしくお願いいたします。本当に大丈夫ですから」
と店長へ説明とお詫びを告げた私はスマホからそっと耳を離した。
「……店長さん、何だって?」
「『彼氏にモラハラされてないか?』ですって。私が部屋を出て行くのも、彼氏と別れる事にしたからだと思っていたみたいだから、実は彼氏から逃げようとしていて、家を出る前に見付かったんじゃないかと心配されてた。……ちなみに今から此処へ来るらしいわ」
「は?何で?」
「私が『大丈夫』って言っても信用出来ないですって。側に彼氏が居て、言わされてるんだろうって思ったみたいで」
「おい、今からでも断れよ」
「断ったけど、聞いてもらえなかったの!それに、ハヤトから電話を切られて直ぐにこっちに向かってたみたいだし」
という私に、ハヤトは、
「あー。俺がやらかしたんだな。そっか……マイラは皆に可愛がられてるんだ」
と苦笑いした。そして、
「ちゃんと俺から謝るよ」
と私を安心させるように頷いた。
というか、ハヤトがこんなわからず屋だとは思わなかった。
「とにかく!店長が心配していると思うので、連絡をさせて下さい!」
「ダメだ!メイド喫茶はもうおしまい!辞めて他のバイトを探せば良いだろう?」
「もう!!私はあの仕事が好きなんです!!最初は何をしても上手くいきませんでしたし、失敗も多かったです。でも、それでも『大丈夫だよ』って言ってくれる店長さんや『そのうち慣れるよ』って言ってくれるメイド仲間の皆様、『失敗したって良いじゃない。笑顔でいてくれる事が大事だよ』って言ってくれるお客様に支えられて、今の私があるんです。私……あの店で働いて、初めて褒められたんです。今までは、何をしても認めて貰えなかった。足を引っ張ろうとする人に隙を見せまいと必死でした。そのうち笑顔なんて……忘れてしまいました。自分はダメな人間なのだと、ずっと思い込まされてきたんです。でも、ここでは違う。努力すればその分認めて貰えます。自然と笑顔になれて、それを見たお客様も笑顔になってくれる。そんな素敵な体験、私、初めてでした。
私、メイドの仕事も、あのお店も店長さんも仕事仲間の皆も、お客様も大好きなんです。……だからお願い。私をあのお店で働かせて下さい」
私は最後には涙を流してハヤトに頼み込むように頭を下げていた。
「………わかった」
とハヤトは渋々という様に私にスマホを渡す。
私は慌てて店長へ電話をかけ直した。
「……はい。はい…大丈夫です。お騒がせしました。これからもよろしくお願いいたします。本当に大丈夫ですから」
と店長へ説明とお詫びを告げた私はスマホからそっと耳を離した。
「……店長さん、何だって?」
「『彼氏にモラハラされてないか?』ですって。私が部屋を出て行くのも、彼氏と別れる事にしたからだと思っていたみたいだから、実は彼氏から逃げようとしていて、家を出る前に見付かったんじゃないかと心配されてた。……ちなみに今から此処へ来るらしいわ」
「は?何で?」
「私が『大丈夫』って言っても信用出来ないですって。側に彼氏が居て、言わされてるんだろうって思ったみたいで」
「おい、今からでも断れよ」
「断ったけど、聞いてもらえなかったの!それに、ハヤトから電話を切られて直ぐにこっちに向かってたみたいだし」
という私に、ハヤトは、
「あー。俺がやらかしたんだな。そっか……マイラは皆に可愛がられてるんだ」
と苦笑いした。そして、
「ちゃんと俺から謝るよ」
と私を安心させるように頷いた。
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