旦那様は転生者!

初瀬 叶

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59話

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そしてカフェラテのカップを置いて、徐に私を見つめると、

「あなた…なんとなく王太子妃のマイラに似てる感じがするわね。え?もしかしてマイラ推しとか?寄せてる?」
と、さきさんは笑った。

「えっと…ハーフだからですかね?ほら外国人の顔って…なんとなく同じ様に見えたりするじゃないですか」
と曖昧な答えをする私に、

「ふーん。ま、いっか。って事で私はどうしてもエレーヌとリオン様をくっつけたくなくて、それを描いたの」
と、さきさんは私の手元の冊子を顎でしゃくってみせた。

正直言って、驚いた。
さきさんの描いた漫画……これこそが私が生きていた世界だったからだ。

私がハヤトに土下座で泣きつかれたあの日。
あの場面は今までの行いを悔いたフェルナンド殿下が私に謝罪し、お互いに歩み寄ろうと告げるというシーンとして描かれていた。私は信じられない思いでその殿下を見つめている。そして微笑んでこう言うのだ。
『貴方のこれからの行いを私は見ています。歩み寄るのはそれからでも宜しいかしら?』と。
私の父が冤罪を受けそうな場面ではフェルナンド殿下がどうにかハロルド様の企みを阻止していた。そして私からの信頼を得る事に成功するのだ。

確かに、細かな場面は違っている。それはハヤトが私の生きていた世界に転生したせいだろう。
しかし大まかな流れは私の知っている世界のソレだった。

そして、私はある場面で手が止まる。

それはあの……馬車が襲われ、殿下を逃がした私が死ぬ場面だった。
そこで固まったように動かなくなった私に、さきさんは、

「あ~そこね。私的にはフェルナンドの暗殺を成功させるつもりはなかったのね。でもさぁ、そうするとマイラどうする?ってなっちゃって。私、別にマイラに思い入れないし」
と少し笑う。それを聞いたチアキは、

「なっ!そんな言い方!」
とさきさんに食って掛かろうとした。私はそんなチアキの腕を掴んで首を横に振る。

さきさんに悪気はないのだ。所詮、この『復讐の天使』で私マイラは、モブキャラだ。原作では殿下を毒殺した嫌われ者の王太子妃。そしてこの二次創作の物語でも早々に退場させても何の問題もないような人物なのだから。
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