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39話
しおりを挟む彼女は私の目の前で、訝しげに私を眺めていたのだが、急に何かを思い出したように、
「マイラ…マイラ…マイラってあの『復讐の天使』の?…な~んて、そんな馬鹿な話」
と自嘲気味に笑いながらも、
「3次元だったら…こんな顔になるのかしら?」
と彼女は私の頬にそっと触れて、
「触れる…本物だ…」
と、言って直ぐに怖いものに触れてしまって不味いと思ったのか、弾かれた様に手を離した。
私は、
「そう!そのマイラです。
その漫画の主人公はエレーヌ・スカーレット。私はそのエレーヌに嵌められて処刑される王太子妃です」
言ってて悲しくなるが、その漫画のストーリーはそうなっているのだ。
私とハヤトが協力して、そのストーリーを変えようと努力したが、私は結局…死んでしまったのだろうか?
処刑される運命は変えられたのかもしれないが。
真剣な眼差しでそう訴える私に、目の前の彼女は、
「信じられないよ?信じられないけど…その…マイラさんが何故此処に?」
と半信半疑ながらも、私に質問してくれた。
流石、ハヤトの妹だ。この荒唐無稽な話に耳を傾けてくれるなんて。
私は
「少し長くなりますが、話を聞いてもらえますか?」
とハヤトがあちらの世界にやって来た所からの話を彼女に話して聞かせた。
彼女…名前を『チアキ』と言うらしい。
チアキは私の話を聞き終わると、
「貴女の話を纏めると、お兄ちゃんは貴女の世界に。そしてそこに居るのはフェルナンド殿下…って事?」
とかなり訝しげな表情で私に訊ねた。
「そうです。ハヤトは殿下が殺される運命を私と共に変えようと…努力しておりました。
しかし…私はハロルド様の手の者に追われ…山の斜面を転がり落ちて、気付けばこの場所へ。
向こうの私はきっと…亡くなったのだと思うのです。
私が何故こちらの世界に飛ばされたのか…その理由はハヤトがあちらの世界に行ったのと同じくわかりません。
しかし、私も殿下もこの世界で生きていくしか…今のところ手はないのです。そこで、チアキ…貴女に助けていただきたくて…」
と私が言うと、
「何度も言うけど、信じられない。
でも…貴女が困っている事はわかったわ。私に出来る事は手伝うけど…貴女の話を信じるとしたら…お兄ちゃんは…どうなるの?」
とチアキは悲しげに眉を下げた。
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