旦那様は転生者!

初瀬 叶

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34話

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「…おい。大丈夫か?」

誰かが私の顔を覗き込んでいる気配がする。

腕を動かそうにも、節々が痛い。

痛みを感じる…という事は…私、生きているのかしら?

私はゆっくり瞼を開こうと努力する。
ずっと暗闇にいた私は眩しさに顔をしかめた。

少しずつ明るさに慣れてきた…。私はしっかりと目を開く。

そして私を覗き込んでいる顔を見る。

………誰?!!


私は驚いて体を急いで起こそうとするも、体が痛くて思うように動かせなかった。

「痛っ…」
と私が小さく呻くと、

「だ、大丈夫か?急に動くな。お前は倒れていたんだから。…

私を覗き込んでいる黒い瞳に黒髪の男性はそう言った。

聞き間違い?いや、確かにこの男性は私の名を呼んだ『マイラ』と。

私は起き上がる事を諦めて、

「貴方は…誰?何故私の名を?」
と少し掠れた声でその男性に言った。

私は目の前の男性に見覚えがない。

私の国ではあまり見かけないタイプの顔だ。イーストザルト王国の出身なのだろうか?
少しのっぺりとした顔は、イーストザルト王国には多いと聞く。

「何を言ってるんだ。当たり前だろう。
私は君の夫なんだから」
と目の前の見知らぬ男性はそう答える。

……?空耳かしら?おっと?夫?それとも似たような別の言葉?

私が瞬きを繰り返していると、その男性は続けて、

「部屋の前にお前が倒れていた。しかも泥だらけで。
仕方ないから部屋に入れたが、ドレスは汚いから捨てたぞ」
と言う。
私は慌てて自分に掛かっているシーツを捲り、

「ギャッ!」
と叫ぶ。

自分が下着姿なのに驚いた。この男がドレスを脱がせたという事か!

私はもう一度シーツでしっかり私の体を隠すと、

「何と無礼な!私は…」
と自分が王太子妃である事を告げようとして止めた。

この男が敵か味方か未だ判断出来ない。
安易に自分の正体を明かす事は命取りだ。

私のその気持ちが表情に出ていたのか、私は無意識にその男を睨んでいたらしい。

その男は私の視線を受け、

「に、睨むなよ。今さら下着姿なんて…どうでも良いだろ。夫婦なんだし。
それに、そのまま外に放って置けば良かったって言うのか!?泥だらけのドレスを着た婦人なんて…結構重たいんだぞ!」
とその男は拗ねたように言った。

重い?!

「失礼な!私は然程重たくありません!!」
つい好戦的な物言いになるのは許してほしい。
だって乙女心が傷ついたのだから。
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