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27話
しおりを挟むハヤトの生きていた世界は、本当に不思議な場所だ。
「大学生?」
「そうそう。俺はまだ学校に通ってたって事」
「え?ではハヤトは18歳になってないって事?」
「いやいや、俺は20歳。俺の世界ではまだ学校に行ってる人もいるんだよ」
「20歳…私と同じですね」
「そっか、そうだな。それに俺は実家を離れて独り暮らしをしてた」
「それって、自分の事を全て自分でやる…という事ですか?」
「そうだよ?俺の世界では普通な事だ」
「では…ハヤトは平民?」
「その通り!っていうか、俺の国には貴族ってのは居ないかな?偉い人…は居るし、貧富の差はそれなりにあるけど」
ハヤトの話は興味深くて、私はどれだけ長く話を聞いていても全く飽きなかった。
でも…フェルナンド殿下が自分の事を自分で出来るのか?と言われれば、無理だろう。
ハヤトの世界で殿下が生きていけるのか?まさか…もう死んでたりしないわよね?
私と殿下…いやハヤトは結構気が合った。
「マイラって馬に乗れるの?」
「乗れますよ?殿下の婚約者に決まってからは、王太子妃教育が忙しくてあまり乗れてませんでしたけど、 元々私は…その…お転婆で…」
「へぇ~すげぇ!じゃあさ、俺に乗り方教えてくれない?」
「へ?私がですか?そんな教える程上手くは…」
「いいって!他の人には習えないじゃん」
結局、ハヤトがハヤトとして振る舞えるのは私の前でだけなので、私と一緒に居る時間が増えるのは必然なのだが…私はいつの間にかハヤトを目で追っている自分に気がついた。
「マイラ様…最近、とても楽しそうですね」
ハヤトに乗馬のレッスンを施した後、私は湯浴みで汗を流し夕食の為に着替えをメリッサに手伝って貰っていた。
そんな私にメリッサは続けて、
「こんな笑顔のマイラ様を見るのは、マイラ様が殿下の婚約者になる前以来ですね」
と言った。
「笑顔?私、笑顔なの?」
正直、殿下の婚約者になってからというもの、殿下からは冷たく扱われ、王太子妃教育は厳しく、心から笑う余裕なんて全然なかった。
表面上は笑顔だけど心は疲弊して…それを懸命に隠して生きてきた。
そんな私が今、笑顔なの?
「ご自分で気がついていませんでしたか?最近笑顔の事が多いですよ。
でも…言いたくないんですけどね、マイラ様から笑顔を奪った憎き殿下がその笑顔の原因って言うのが…ちょっと…」
とメリッサは不服そうだ。
私は自分にびっくりしている。
私…どうしちゃったんだろう…。
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