26 / 75
26話
しおりを挟む「これ…エレーヌからだとさ」
と殿下が私の目の前に酒の瓶を置いた。
「間違いなく…毒が入ってますよね?」
と私が言えば、
「だろうな…一旦調べるように依頼したんだが、『安全です』ってさ。嘘くせ~」
「と言う事は、毒味の者もハロルド様の手の者と言う事ですか?」
と私がため息をつくと、殿下はその酒の中身をバルコニーからぶちまけた。
「俺が離宮へ行かないから、痺れを切らしたんだろうけど…四方八方敵だらけだな」
と殿下は吐き捨てた。
「殿下…随分と長く毒をお飲みなってますよね?体調はいかがです?」
私が心配になって訊けば、
「うーん。今の所、どこか痛いとか、悪いとかいう事はないみたいだけど…王族ってのも大変だよな。
小さな頃から慣れる為に少しずつ毒を飲んで耐性つけるとか…俺の世界だったら立派な虐待だぞ」
と殿下は顔をしかめた。
「…殿下の…いえ、ハルトの生きていた世界ってどんな世界なのですか?」
私はふと、今までのハルトを知ってみたいとそう思った。
「ん?俺の世界か。ここよりずっと文明が進んでるから、便利っちゃ~便利だよ。
水は水道捻れば出るし、夜でも電気があるから、暗くない。
スマホって言う小さな板みたいなのを皆が持ってて、それさえあれば遠くの人とも繋がれるし、違う国の情報だってリアルタイムで手に入れられる。その弊害もあるっちゃ、あるけど」
「そんな世界が…まるでお伽噺のようですね。1度で良いからこの目で見てみたいです…まぁ…それは叶いませんけど」
と私が目を丸くすれば、
「そうだな…でも、マイラにも見てもらいたいかも。多分、ビックリしてずっと口が開きっぱなしになるだろうな」
と殿下も笑う。
私はそこでふと疑問が湧いてきた。
「殿下…いえハヤトはこうして殿下の体に魂が入っているじゃないですか?では……もしかしたら殿下の魂はハヤトの体の中に?」
そうなのだ、ハヤトの魂が入った事で体から追い出された(?)殿下の魂は何処へ行ったのか…。この事象がハルトが言うように『入れ替わり転生』なるものならば、殿下の魂はハヤトの体に入っている事になるのではないだろうか?
私の疑問に、
「そうか…そう考えるとそうだよな。ってか、あいつ、ちゃんと俺として生活出来てんのかな?…心配になってきた」
とハヤトは肩を竦めてみせた。
フェルナンド様は…今頃どうしているのだろう?
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
909
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる