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24話
しおりを挟む「フフフッ。どうかなさったのかしら?
いつもの嘘臭い笑顔が崩れていてよ?
可哀想に、すっかり侍女が怯えてしまっているじゃない」
私がそう言うと、エレーヌ様はハッとしたように我に返った。
エレーヌ様は、先程の侍女に、
「ご、ごめんなさいね。殿下がお困りなのではないかと心配になってしまって。少し取り乱してしまったわ」
と謝ると、私の方に顔をまた向け、
「妃殿下…。殿下のお心を手に入れようと足掻いても、今さらですわ。
申し訳ありませんが殿下のお気持ちは私のもの。
少し殿下に優しくされたからといって、勘違いなさるのは…端から見ていて、憐れですわ」
と可愛らしくニッコリと笑った。
…言ってる事と、顔が合ってないのよ、顔が。逆に怖いんだけど?
「憐れ…なのはどちらの方かしら?
どんなに殿下の寵愛を受けたとしても、貴女は所詮側妃。
それに…寵愛を受けたからといって、子が授かる保証はどこにもありませんものね?
子は天からの授かり物。エレーヌ様が焦るのも無理はありませんわ」
と私も負けじと笑顔で言う。
そしてエレーヌ様の耳元に口を近づけ、
「天と地が引っくり返っても、貴女が正妃になる事はないのよ?」
と囁くと、エレーヌ様の顔はサッと赤くなった。…かなりお怒りの様だ。
私は少しエレーヌ様から体を離すと、改めて、
「さっさとそこをお退きなさい!無礼だと言うのがわからないのですか!」
と思いっきり高飛車に言った。
私がそう言うと、エレーヌ様は下唇を噛みしめて私の目の前から3歩程横にずれて、私に道を譲った。
私はそれを見てニッコリと笑う。
エレーヌ様は悔しそうにやや俯いた。
私はその横を真っ直ぐに通りすぎる。
私の前に立ち塞がる者はもう誰も居ない。
しかし、私が横を通り過ぎる瞬間
「調子に乗っていられるのも今だけよ」
と低く憎みを込めた声でエレーヌ様が吐き出すように言った。私は思わずエレーヌ様の方を見る。
…私は今までエレーヌ様の上っ面だけしか見ていなかったのだと良くわかる。
彼女にとって、自分の上に立つ者は全て敵なのかもしれない。
私を睨み付ける目の奥には燃えるような憎しみの炎がチラチラと見える。
私は今までこの視線に気付かず過ごしてきたのだ。
彼女の望む未来に、私も…殿下でさえも必要ないのだと、その目は告げているようだった。
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