旦那様は転生者!

初瀬 叶

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12話

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私が黙っていると、

「君は俺に何かあったら、結局君も困る事になるんだ。
俺の周りには気を許せる者も居ない。マイラ…君だけが頼りなんだ」

この人は…意外と孤独だったのだな…と思った。

殿下はあまり人に慕われるタイプではない。側近や護衛も仕事だから仕えているだけだ。
きっと、今まで、心を許せる人はエレーヌ様だけだったのだろう。
とは言え、その原因はこの男にある。…だってクズだから。自業自得と言えばそれまでだ。

しかし…

「…わかりました」
と私は自分の寝台から降りて扉へ向かう。

その様子を殿下は見ている。

私は、殿下に振り返り、

「さぁ、夫婦の寝室へ参りましょう。その代り、絶対、私に近付かないで下さいね」
と言って、さっさと自分の寝室を私は出て行った。

それを追いかけてくる殿下。

「ありがとう!マイラ!」
と笑顔を見せる殿下に、私は、この男の笑顔なんて、初めて見たな…と場違いな感想を心に抱いたのであった。



夫婦の寝室では、

「俺はこのソファーに寝るから、マイラはベッドを使って良いよ」
と殿下は枕の1つを持って長椅子へと向かった。

「そんな!王太子殿下を長椅子で寝かすなど、あってはなりません。
ならば、私が長椅子で…」
と私が言えば、

「女の子をソファーで寝かすなんて、俺には無理だよ。
大丈夫、俺なんてよくコタツで寝オチしてたし。こんな立派なソファーなら、ゆっくり眠れるし」
と殿下はさっさと長椅子へと横たわった。

何だか知らない単語がポンポン出てくる。
本当に彼はフェルナンド殿下ではないのだろうか?

それに女の子って…。

私が寝台の横で佇んでいると、

「マイラももう寝なよ。明日も早いんだろ?」
と殿下は言うと、『おやすみ』と言って私に背を向けた。

私もモソモソと寝台に上がると真ん中に横たわる。
チラリと殿下の方に目をやると、既に呼吸が深くなっており、寝入ったのだと分かった。

この1週間。殿下は部屋に籠りっきりで執務室に現れなかったと聞いた。
この様子だと離宮へも行かなかったのかもしれない。

私は自分の仕事を淡々とこなすだけの名ばかりの王太子妃だから、彼の情報はなるべく耳に入れないようにしていた。

殿下の言う事が本当ならば…彼はどこの誰なんだろう?


見知らぬ人と同じ部屋で休んでいるというのに、殿下と一緒に居る不快感を何故か感じない事を、私は不思議に思いながらも眠りについたのだった。
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