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3話
しおりを挟む何故か初夜はあった。白い結婚であれば王族だとしても離縁が認められる。
それを阻止したかったのか…それとも一応の夫婦の義務を果たしただけなのか…この男の考える事などわかる筈がない。
しかし、その日から、再び私と殿下が肌を重ねる事は2度となかったが。
そして、殿下は直ぐに側室を娶った。
彼女の名は『エレーヌ・スカーレット伯爵令嬢』
殿下の学園時代からの恋人だ。
元は男爵令嬢だったのを、側室にする為に、わざわざスカーレット伯爵の養女にした。
そうまでして手にいれた女性。それがエレーヌ様だ。
エレーヌ様は美しい金髪にピンク色の瞳。それはそれは可愛らしい女性だ。殿下が惚れるのも頷ける。
ちなみに私アッシュブロンドの髪にグレイッシュブルーの瞳。なんとなくきつめの雰囲気だ。
…ちなみに、美人ではあると思うが可愛らしくはない。
エレーヌ様は殿下の寵愛を一身に受けているが、子を成す気配はまだない。
側室としての役割は子を成す事なのだから、思う存分励んでいただきたい。私には逆立ちしても無理な事なので。
人払いをした部屋に、私と殿下の2人きりとなった。
気まずい…。2人きりなんて…初夜のあの日以来だ。思い出したくもない。
「で、お話とは何ですか?」
私は極力冷たく聞こえるように言った。
好き好んでこの男と話をしていると思われたくない。
婚約した当初、お茶会で気を使って話しかける私に、
『僕の気を引きたいの?そんな風にされても、僕はお前みたいに、人形のような女の子好きにならないよ。諦めたら?』
と、この男は言ったのだ。
私はそれから、こいつに話しかけるのをやめた。
気を引きたいなんて思われたくないからだ。
自惚れるのもいい加減にしろと言いたい。
「これから俺が話す事は信じられない話だと思うけど、聞いて欲しい」
…真面目な顔をしているこの男に違和感を感じる。
今、この人『俺』って言った?
いつもは、『私』と言ってなかったっけ?
子どもの頃は『僕』と言っていたと思うけど…『俺』と言うのは聞いた事がなかった。
私が返事をするより先に、殿下は話始めた。
「俺は、この世界の人間じゃない」
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