57 / 97
手紙
しおりを挟む
「レオ様、お帰りなさいませ」
「ああ、ただいま」
そう言ってレオ様は私を抱き締める。
なんだか今日は疲れてるみたい。
疲れている所申し訳ないが、今日返ってきたお父様からの手紙について報告しないといけない。
お兄様を説得して欲しいと書いた例の手紙の返事だ。
「レオ様、実はお父様からお手紙の返信がありまして、アレックスお兄様の件なのですが…」
「説得出来なかった…という内容だろ?」
「どうしてそれを?」
何故、手紙の内容を知ってるのか、私が不思議に思っていると
「今日、王宮でアレックス殿に会ったよ」
「王宮で?どうしてそんな所にお兄様が?」
「詳しい事は夕食で話そうか。
とりあえず、着替えてくるよ」
そう言って、レオ様は部屋に戻っていく。やっぱり疲れているようだ。背中に哀愁が漂っていた。
夕食時、お兄様が王宮で、しかも王太子殿下の側近として働く事になった事を聞いた。
「まさか、お兄様が殿下の側近なんて…」
「学園を卒業する際にも打診したらしいが、その時には断られたと殿下も仰ってた。
今回、王都で暮らす事になったから引き受けたらしい」
「…そんなお話があった事すら知りませんでした」
…ルイス殿下の事といい、王太子殿下の事といい、お兄様はいくつ私に隠し事をしてるのかしら?
「俺も少し前に殿下に聞いて知ったばかりだったが、まさかアレックス殿の『アテ』があるの『アテ』が王太子殿下とは思わなかったよ。お陰でこれからは同僚として働く事になった」
…レオ様のお疲れの原因がまさか自分の兄だとは思わなかった。
「お父様も、『仕事を見つけてきたようだし、諦めろ』と書いてましたけど、まさか殿下の側近だとは書いてませんでしたわ」
きっとお父様は知ってらっしゃったと思うけど
「確かに、そんな仕事を決めて来たなら、お義父上も説得する事は難しいだろう」
「そうですね。……でもレオ様、お仕事やりにくくありませんか?」
「いや、それについては仕事はきちんとされる方だから、心配はしてない。
ただ、敵を見るような目で見られてはいるけどな」
「…ご迷惑おかけします…」
「レベッカが気にする事はない。
逆にこれを機会にアレックス殿からレベッカを任せられると思って貰えるように、信頼を勝ち取ってみせるよ」
そうレオ様は言って笑ってくれた。
…多分、かなり難しいと思います…という言葉は飲み込む事にする。
「それと、もう1つ…お父様からの手紙に書いてあった事があって…」
「もう1つ?」
「はい。実はソフィア様…ガンダルフ侯爵から釣書が届いたと」
「え?あの女から?どっちに?アレックス殿か?サミュエル殿か?」
「アレックスお兄様に、です。
サミュエルお兄様は次男ですし…伯爵を継ぐわけではないので、除外されたんでしょう」
「侯爵からだと、コッカス伯爵が断るのは難しいのではないか?」
「はい。なので、1度会うようにお兄様へ言ったらしいです。
お兄様も王都に来ているので、ちょうど良いと。お父様としては、1度も会わずに断るのは難しいと感じたらしくて」
「でも、会ったら余計に断り難くないか?」
「ガンダルフ侯爵からは会って気に入らなければ、断ってくれても良いと言われているそうですわ」
「建前としてはそうだろうが…それにアレックス殿は……結婚する気はないのだろ?」
「そうですね。お兄様は会っても断ってしまうはずです。多分」
「まぁ、年齢的には釣り合いも取れてるし、嫡男だし、おまけに顔も良い。しかも婚約者もいないとなれば、狙われて当然だな」
「今までは領地にしか居ない兄は範疇になかったんだと思います。ソフィア様が田舎に引っ込むなんて考えられないでしょうし。
多分、本当に相手がいらっしゃらないのでしょうね。
まだお兄様が王宮で働き始めた事は知らないはずですから」
「そうだろうな。あの派手好きな女が領地に大人しく引っ込んでるとは思えない。
いよいよ、歳上の後妻しか相手が見つからないのかもしれない。少し前には隣国の貴族にまで釣書を送っていたと聞いたからな」
「うちの領地にはソフィア様を満足させる物はありませんもの」
「まぁ、アレックス殿があの女と結婚する事はないと思うが、断る時に揉めないと良いな」
「はい。そうですね。すんなり諦めて頂けると助かります」
私達はその時、断る事ばかりに気をとられ、ソフィア様とアレックスお兄様を会わせる事の危険性を全く考えていなかった。
「ああ、ただいま」
そう言ってレオ様は私を抱き締める。
なんだか今日は疲れてるみたい。
疲れている所申し訳ないが、今日返ってきたお父様からの手紙について報告しないといけない。
お兄様を説得して欲しいと書いた例の手紙の返事だ。
「レオ様、実はお父様からお手紙の返信がありまして、アレックスお兄様の件なのですが…」
「説得出来なかった…という内容だろ?」
「どうしてそれを?」
何故、手紙の内容を知ってるのか、私が不思議に思っていると
「今日、王宮でアレックス殿に会ったよ」
「王宮で?どうしてそんな所にお兄様が?」
「詳しい事は夕食で話そうか。
とりあえず、着替えてくるよ」
そう言って、レオ様は部屋に戻っていく。やっぱり疲れているようだ。背中に哀愁が漂っていた。
夕食時、お兄様が王宮で、しかも王太子殿下の側近として働く事になった事を聞いた。
「まさか、お兄様が殿下の側近なんて…」
「学園を卒業する際にも打診したらしいが、その時には断られたと殿下も仰ってた。
今回、王都で暮らす事になったから引き受けたらしい」
「…そんなお話があった事すら知りませんでした」
…ルイス殿下の事といい、王太子殿下の事といい、お兄様はいくつ私に隠し事をしてるのかしら?
「俺も少し前に殿下に聞いて知ったばかりだったが、まさかアレックス殿の『アテ』があるの『アテ』が王太子殿下とは思わなかったよ。お陰でこれからは同僚として働く事になった」
…レオ様のお疲れの原因がまさか自分の兄だとは思わなかった。
「お父様も、『仕事を見つけてきたようだし、諦めろ』と書いてましたけど、まさか殿下の側近だとは書いてませんでしたわ」
きっとお父様は知ってらっしゃったと思うけど
「確かに、そんな仕事を決めて来たなら、お義父上も説得する事は難しいだろう」
「そうですね。……でもレオ様、お仕事やりにくくありませんか?」
「いや、それについては仕事はきちんとされる方だから、心配はしてない。
ただ、敵を見るような目で見られてはいるけどな」
「…ご迷惑おかけします…」
「レベッカが気にする事はない。
逆にこれを機会にアレックス殿からレベッカを任せられると思って貰えるように、信頼を勝ち取ってみせるよ」
そうレオ様は言って笑ってくれた。
…多分、かなり難しいと思います…という言葉は飲み込む事にする。
「それと、もう1つ…お父様からの手紙に書いてあった事があって…」
「もう1つ?」
「はい。実はソフィア様…ガンダルフ侯爵から釣書が届いたと」
「え?あの女から?どっちに?アレックス殿か?サミュエル殿か?」
「アレックスお兄様に、です。
サミュエルお兄様は次男ですし…伯爵を継ぐわけではないので、除外されたんでしょう」
「侯爵からだと、コッカス伯爵が断るのは難しいのではないか?」
「はい。なので、1度会うようにお兄様へ言ったらしいです。
お兄様も王都に来ているので、ちょうど良いと。お父様としては、1度も会わずに断るのは難しいと感じたらしくて」
「でも、会ったら余計に断り難くないか?」
「ガンダルフ侯爵からは会って気に入らなければ、断ってくれても良いと言われているそうですわ」
「建前としてはそうだろうが…それにアレックス殿は……結婚する気はないのだろ?」
「そうですね。お兄様は会っても断ってしまうはずです。多分」
「まぁ、年齢的には釣り合いも取れてるし、嫡男だし、おまけに顔も良い。しかも婚約者もいないとなれば、狙われて当然だな」
「今までは領地にしか居ない兄は範疇になかったんだと思います。ソフィア様が田舎に引っ込むなんて考えられないでしょうし。
多分、本当に相手がいらっしゃらないのでしょうね。
まだお兄様が王宮で働き始めた事は知らないはずですから」
「そうだろうな。あの派手好きな女が領地に大人しく引っ込んでるとは思えない。
いよいよ、歳上の後妻しか相手が見つからないのかもしれない。少し前には隣国の貴族にまで釣書を送っていたと聞いたからな」
「うちの領地にはソフィア様を満足させる物はありませんもの」
「まぁ、アレックス殿があの女と結婚する事はないと思うが、断る時に揉めないと良いな」
「はい。そうですね。すんなり諦めて頂けると助かります」
私達はその時、断る事ばかりに気をとられ、ソフィア様とアレックスお兄様を会わせる事の危険性を全く考えていなかった。
36
お気に入りに追加
1,008
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる