とりあえず結婚してみますか?

初瀬 叶

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夜会へ

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夜会当日。
昼食後から準備が始まる。

デビュタント以来、王宮には行った事がない。…というより、夜会も初めてだ。

ダンスは…体を動かす事が好きだったから、アレックスお兄様相手に散々練習した。
結局練習だけで、披露する場はなかったが。
後は、きちんと淑女として振る舞う事が出来るか…それが心配だ。


本当に、お兄様のせいで私の経験値は圧倒的に低いのだ。
レオ様に恥をかかせるような事だけは避けたい。

サイズ直しの済んだドレスを着る。
翡翠色のドレスにレオ様の髪の色でもある金糸で刺繍が施されている。
少し大人っぽいドレスだ。
童顔の私に似合うか心配だったが、髪をアップに纏めると、それなりに年相応に見える。

アンナは
「奥様になられたので、髪をアップにしましたが、とてもお似合いになりますね!金細工の髪飾りもとても綺麗です。」

「そう?これならレオ様の横に立ってもおかしくないかしら?」
レオ様はイケメンの部類だ。


「もちろんですとも!私のレベッカ様はどなたの隣に並んでも遜色ありません!なんなら王子様の横でさえも、見劣りいたしませんよ。
私が保証します!」


「アンナ、言い過ぎよ。そこまで自分の事を過大評価できないわ。
それに、王子様の横なんて、烏滸がましくて。
不敬罪に当たるわよ。」

そういえば、確か第3王子のルイス殿下だけは、未だに婚約者の方がいらっしゃらないわね?どうしてかしら?

準備を終え、階段を降りていくと、レオ様がフェルナンデスと話をしながら待っていた。
階下に降りる私に気がつくとすぐにエスコートに来てくれる。

「やぁ。レベッカ。とっても綺麗だ。このドレスもよく似合う。」

「ドレス、ありがとうございます。褒めていただいて、嬉しいです。
レオ様もとっても素敵です。」

レオ様は近衛騎士の正装をされてる。眼福。

「…レベッカ。ドレスとっても素敵だけど、ちょっと胸の辺りが…その開きすぎてないかな?」

私は人より少し胸が豊かな為、谷間が分かってしまうのだ。

「私もそう思ったんですけど、これが今の流行りらしいのです。
夜会ではこれぐらいでも良いと聞いたんですが…ダメですか?」

「いや、ダメじゃない。ダメじゃないが、他の男性の目線が…」

そうするとアンナが
「ダンス以外の時はこちらのショールをお使い下さい」
と渡してくれた。これなら、レオ様も納得してくれるかしら?

「まぁ…これなら。いやでも、とにかく美し過ぎるし…」

なんだか、レオ様がブツブツ言ってます。

「レオナルド様、そろそろ出発いたしませんと、お時間が。」
フェルナンデスから急かされる。

「ああ。そうだな。では行ってくる」
そう言って2人で馬車に乗り込んだ。


馬車では、当然のように並んで座る。

「いいかい、レベッカ。今日は俺の側を離れないでね。」

「はい。わかりました。私、夜会は初めてですので、レオ様の足を引っ張らないように頑張りますが、良かったら助けていただけると嬉しいです。」

「もちろんだよ。俺に任せれば良いから」
レオ様、頼りになります。

「心配もありますが、それ以上にワクワクします。王宮もデビュタント以来ですし。」

「ああ、そうか。そうだね。」

そう言うとレオ様は

「ルイス殿下に会わせる事になるのか…失念してた。クソッ。」

よく聞こえませんが、何か唸ってらっしゃいます。

「レベッカ、本当に俺の側を離れないで。」

念押し?念押しですか?

「それと、俺以外と踊らなくていいから。」

「え?でも、断れない相手の方からでしたら、失礼になるのでは?」

「それは、俺が代わりに断るから大丈夫。」

もしかしたら、レオ様は私のダンスの腕前を心配してらっしゃるのかもしれません。

「レオ様。私、ダンスなら結構、自信ありますよ?」

「いや…そういう事じゃないんだ…」

「?」

なんだか、レオ様の返事が歯切れが悪いようです。なにか悩みでも?


「そういえば、第3王子である、ルイス殿下には、まだ婚約者の方はお決まりではないのですか?」

私はこの前、ふと疑問に思った事を口にする。

第1王子であるフェルナンデス殿下は、我が国の公爵令嬢であるロレッタ・ウォーカー様とご成婚なさっているし、第2王子であるローガン殿下には隣国のアスガルド王国の第2王女であるララベル様が婚約者としていらっしゃる。第3王子であるルイス様ももう20歳。いらっしゃらない方が不思議だ。

それを聞いたレオ様は、何故か複雑そうな顔だ。
もしかしたら、聞いてはいけない事だったのかしら?

「ルイス殿下は…1度この国の侯爵令嬢と婚約が決まりかけていたんだがな。
何故かその話は頓挫した。理由は俺も良く知らない。」

…政治的な思惑でもあるのかしら?まぁ、私には関係ない話だけど。

そう、その時の私は思っていた。
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