15 / 16
婚活令嬢荒野を行く!
第10話
しおりを挟む
「グリンダ!グリンダ!」
……また来た。日に何回私の名前を呼んでいるんだろう、この人は。
「殿下、こちらにおりますわ」
私は勉強部屋を出て私の名前を叫びながら走り回る殿下に声を掛けた。
殿下は私の姿を見つけると走り寄る。……尻尾が見えるようだ。
「グリンダ!!また勉強かい?必要ないって言っただろう?それより、今から二人で遠乗りに行かないか?天気も良いし」
「今日はこれから議会がありますでしょう?サンダースが申しておりましたよ」
サンダースは殿下の側近だ。殿下に振り回されている仲間の一人。
「今日の議会は陛下が出れば事足りる。僕は必要ない」
「陛下を補佐するのも殿下のお役目でございましょう?それに、辺境への視察も断られたとかで、陛下もお嘆きでいらっしゃいましたよ」
「辺境の視察なんて、片道何日かかると思っているの?そんなにグリンダと離れているなんて無理だよ」
「ですから、私も一緒にと申したではありませんか」
「視察にはたくさんの近衛が付いて来るし、辺境には辺境の騎士団が居る。……男ばかりじゃないか」
私に付いている護衛は全て女性だ。殿下の命令で。
殿下は私が兄の結婚式で近衛をガン見していた事に気づいていた。それを今でもネチネチと責めてくる。……正直面倒くさい。
こうなると、追い返すのに時間がかかるので、
「殿下。私には殿下しか目に入っておりません。機嫌を直して下さいませ」
と私から殿下に抱きつく。
「グリンダ本当?じゃあ『愛してる』って言ってくれる?」
「……愛してると言えば、議会にちゃんと出席して下さいますか?」
「愛してると言って口づけしてくれたら……だな」
私は仕方なく、
「殿下、愛しておりますわ。誰よりも」
と言って背伸びをすると、殿下にキスをした。
そしてにっこりと微笑むと、殿下は
「僕も愛してるよ。仕方ない。議会に顔を出してくるよ。でも、それが終わったら僕とお茶を飲んでくれる?」
「ええ、もちろんです。殿下の今日のお勤めが終わったら、お付き合いいたしますわ」
と私が言えば、やっと殿下はトボトボと帰って行った。
私の後ろから、リリーが
「もう見慣れましたけど、毎回、毎回大変ですね」
と私に声を掛けた。リリーは王族に嫁ぐ私を心配して付いて来ると言ってくれた。殿下は私の為ならと快諾してくれたのだった。
……また来た。日に何回私の名前を呼んでいるんだろう、この人は。
「殿下、こちらにおりますわ」
私は勉強部屋を出て私の名前を叫びながら走り回る殿下に声を掛けた。
殿下は私の姿を見つけると走り寄る。……尻尾が見えるようだ。
「グリンダ!!また勉強かい?必要ないって言っただろう?それより、今から二人で遠乗りに行かないか?天気も良いし」
「今日はこれから議会がありますでしょう?サンダースが申しておりましたよ」
サンダースは殿下の側近だ。殿下に振り回されている仲間の一人。
「今日の議会は陛下が出れば事足りる。僕は必要ない」
「陛下を補佐するのも殿下のお役目でございましょう?それに、辺境への視察も断られたとかで、陛下もお嘆きでいらっしゃいましたよ」
「辺境の視察なんて、片道何日かかると思っているの?そんなにグリンダと離れているなんて無理だよ」
「ですから、私も一緒にと申したではありませんか」
「視察にはたくさんの近衛が付いて来るし、辺境には辺境の騎士団が居る。……男ばかりじゃないか」
私に付いている護衛は全て女性だ。殿下の命令で。
殿下は私が兄の結婚式で近衛をガン見していた事に気づいていた。それを今でもネチネチと責めてくる。……正直面倒くさい。
こうなると、追い返すのに時間がかかるので、
「殿下。私には殿下しか目に入っておりません。機嫌を直して下さいませ」
と私から殿下に抱きつく。
「グリンダ本当?じゃあ『愛してる』って言ってくれる?」
「……愛してると言えば、議会にちゃんと出席して下さいますか?」
「愛してると言って口づけしてくれたら……だな」
私は仕方なく、
「殿下、愛しておりますわ。誰よりも」
と言って背伸びをすると、殿下にキスをした。
そしてにっこりと微笑むと、殿下は
「僕も愛してるよ。仕方ない。議会に顔を出してくるよ。でも、それが終わったら僕とお茶を飲んでくれる?」
「ええ、もちろんです。殿下の今日のお勤めが終わったら、お付き合いいたしますわ」
と私が言えば、やっと殿下はトボトボと帰って行った。
私の後ろから、リリーが
「もう見慣れましたけど、毎回、毎回大変ですね」
と私に声を掛けた。リリーは王族に嫁ぐ私を心配して付いて来ると言ってくれた。殿下は私の為ならと快諾してくれたのだった。
180
お気に入りに追加
238
あなたにおすすめの小説
恋人に捨てられた私のそれから
能登原あめ
恋愛
* R15、シリアスです。センシティブな内容を含みますのでタグにご注意下さい。
伯爵令嬢のカトリオーナは、恋人ジョン・ジョーに子どもを授かったことを伝えた。
婚約はしていなかったけど、もうすぐ女学校も卒業。
恋人は年上で貿易会社の社長をしていて、このまま結婚するものだと思っていたから。
「俺の子のはずはない」
恋人はとても冷たい眼差しを向けてくる。
「ジョン・ジョー、信じて。あなたの子なの」
だけどカトリオーナは捨てられた――。
* およそ8話程度
* Canva様で作成した表紙を使用しております。
* コメント欄のネタバレ配慮してませんので、お気をつけください。
* 別名義で投稿したお話の加筆修正版です。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
(完結)私の夫は死にました(全3話)
青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。
私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。
ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・
R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
つがいの皇帝に溺愛される皇女の至福
ゆきむらさり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる