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眠れない夜
しおりを挟む少しずつ、少しずつ、少しずつ。
誰かさんの足音が近付いて来ている。
ねぇ、誰かさん。あなたはどんな格好をしているの?
皆のイメージ通り黒いマントに大きなカマを担いでいるのかな?それとも全く予想出来ない姿なのかな?
出来れば怖い姿じゃないと良いな……。
急に意識が浮上する。
目を開けると、暗い中に見慣れない天井。……そうだここは病室だ。
少しずつ私の二つの意識が重なっていく感覚を覚える。
体と魂が少しずつ離れている時間が長くなっているんじゃないかと不安になって、私は胸の辺りをギュッと掴んだ。
「……ミミ」
「どうした?痛む?」
「ううん」
「眠れない?」
「うん。昼間寝すぎた」
薬が増えるに従って、ウトウトしている時間が長くなる。
意識が曖昧な時間が増えると不安になる。その間の私は、ちゃんと私なのだろうか?
「何か話す?」
ミミは体を起こして、布団を片付けると椅子を持って来て私の側に座った。
「ミミは眠いでしょう?」
「おばさんと一緒。昼間仮眠取ってるから、そんな眠くないよ」
と言うミミは必死に欠伸を噛み殺している様子。ごめんね、起こして。
それから十分もすると、私は再び眠気を感じる。少し話しただけなのに……もっとミミと話していたいのに。
「寝ていいよ」
私の眠たそうな気配にミミがそう言う。
「ミミ、手を繋いでてくれる?」
私は少し甘えてみた。
抱き抱えられる事は良くあるけど、手を繋ぐ事はない。……手を握られた事はあったけど。
ミミは何も言わずに私の手を握った。
「温かいね」
と私が言うと、ミミは繋いだ手をそのまま布団の中に入れた。
「昼間はまだ暖かい時も多いけど、夜になると、すっかり肌寒くなったからな。冷えたらダメだろ。折角俺の手が温かいのに」
とミミは言う。
「何だか、秋がなくなっちゃったね」
「そうだな」
「直ぐ冬になっちゃう」
「そん時はまた、手を繋ごう。冷えてしまわないように」
「うん。……ありがとう」
私は瞼を閉じる。
朝、目が覚めますように。またミミの顔を見られますように。そう祈りながら。
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