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スマホ
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使用する麻薬の量が増えた事で、私はウトウトする時間が増えてきた。
ミミは私が寝ている間に、家に帰り洗濯物をしたり、お風呂に入って来たりしているのだという。
ある日、目を覚ました私は側にミミが居ない事でパニックになってしまった。震える手でミミに電話を掛ける。
『もしもし、どうした??』
スマホを通して聞こえる声は、少しだけいつもと違って、何故か私は物凄く不安になった。
「ミミ、今どこ?」
『家だよ。洗濯物してた』
「そっか……そうだよね」
私の声の異変に気づいたミミは、
『直ぐ行く。待ってて』
と言って電話を切った。
私はそこでふと我に返る。何をしているんだ私は。
私は八つ当たりをする様に、布団の上にスマホを乱暴に投げ出した。
『ポスン』という鈍い音が何故か私を悲しくさせた。
自分が自分でなくなっていくようだ。私は誰?両手で顔を覆って私は泣き出した。
母もこんな気持ちだったんだろうか?夜中、私が側に居ない事で、何度も何度も電話を掛けてきた母を思い出す。
看護師がバイタルを測りに部屋へとやって来て、泣いている私にティッシュを差し出してくれた。
「すみません。もう大丈夫です」
と最後に鼻をかむ私に、
「痛いところはありませんか?何かあったらナースコールを押して下さいね」
と私の直ぐ手の届く所へナースコールのボタンを置いてくれた。
今、一番痛いところは、私の心だ。それは医者でもどうにも出来そうにない。
「帰ったよ」
病室の扉を開きながら言うミミを私は見る。
明らかに急いだのだろうと想像出来る程にミミの肩は上下していた。駐車場から走ったらしい。
「ごめん。寝ぼけてたみたい」
と笑って誤魔化す私に、ミミは、
「だと思った」
と答えながら、洗ってきた洗濯物をロッカーに仕舞った。
そして直ぐに私の側へとやって来る。その顔は優しく微笑んでいた。
「何だかスマホでミミの声を聞くのって変な感じ。声も何だか別人みたいで」
私はパニックになったことを誤魔化すようにそう言った。
ミミとはずっと側に居るから、スマホで話す事が殆どないのだと、それを口に出してから気付く。そう、私達にはそれは必要なかったのだ。
「知ってる?スマホの声って本人の声じゃないんだって」
ミミが少しだけ得意気にそう言った。
「そうなの?」
「俺も詳しい事はわかんない。ってか聞いても理解出来なかったんだけど、無線の電話……つまりスマホなんかで通話する時は、本人の声に限りなく近い合成音声なんだってさ」
「へぇ~知らなかった!じゃあ、あの声がミミじゃないって感じたのは気のせいじゃないんだね」
「だな。でも喋ってるのは俺で間違いないけど」
と言ったミミは、さっき私が八つ当たりして布団に投げつけて、少しだけ離れた場所に投げ捨てられたスマホを拾い上げた。
ミミはそれを床頭台に置きながら、
「まぁ、ずっと側に居るからあんま必要ないよな」
と言った。
ミミは私が寝ている間に、家に帰り洗濯物をしたり、お風呂に入って来たりしているのだという。
ある日、目を覚ました私は側にミミが居ない事でパニックになってしまった。震える手でミミに電話を掛ける。
『もしもし、どうした??』
スマホを通して聞こえる声は、少しだけいつもと違って、何故か私は物凄く不安になった。
「ミミ、今どこ?」
『家だよ。洗濯物してた』
「そっか……そうだよね」
私の声の異変に気づいたミミは、
『直ぐ行く。待ってて』
と言って電話を切った。
私はそこでふと我に返る。何をしているんだ私は。
私は八つ当たりをする様に、布団の上にスマホを乱暴に投げ出した。
『ポスン』という鈍い音が何故か私を悲しくさせた。
自分が自分でなくなっていくようだ。私は誰?両手で顔を覆って私は泣き出した。
母もこんな気持ちだったんだろうか?夜中、私が側に居ない事で、何度も何度も電話を掛けてきた母を思い出す。
看護師がバイタルを測りに部屋へとやって来て、泣いている私にティッシュを差し出してくれた。
「すみません。もう大丈夫です」
と最後に鼻をかむ私に、
「痛いところはありませんか?何かあったらナースコールを押して下さいね」
と私の直ぐ手の届く所へナースコールのボタンを置いてくれた。
今、一番痛いところは、私の心だ。それは医者でもどうにも出来そうにない。
「帰ったよ」
病室の扉を開きながら言うミミを私は見る。
明らかに急いだのだろうと想像出来る程にミミの肩は上下していた。駐車場から走ったらしい。
「ごめん。寝ぼけてたみたい」
と笑って誤魔化す私に、ミミは、
「だと思った」
と答えながら、洗ってきた洗濯物をロッカーに仕舞った。
そして直ぐに私の側へとやって来る。その顔は優しく微笑んでいた。
「何だかスマホでミミの声を聞くのって変な感じ。声も何だか別人みたいで」
私はパニックになったことを誤魔化すようにそう言った。
ミミとはずっと側に居るから、スマホで話す事が殆どないのだと、それを口に出してから気付く。そう、私達にはそれは必要なかったのだ。
「知ってる?スマホの声って本人の声じゃないんだって」
ミミが少しだけ得意気にそう言った。
「そうなの?」
「俺も詳しい事はわかんない。ってか聞いても理解出来なかったんだけど、無線の電話……つまりスマホなんかで通話する時は、本人の声に限りなく近い合成音声なんだってさ」
「へぇ~知らなかった!じゃあ、あの声がミミじゃないって感じたのは気のせいじゃないんだね」
「だな。でも喋ってるのは俺で間違いないけど」
と言ったミミは、さっき私が八つ当たりして布団に投げつけて、少しだけ離れた場所に投げ捨てられたスマホを拾い上げた。
ミミはそれを床頭台に置きながら、
「まぁ、ずっと側に居るからあんま必要ないよな」
と言った。
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