15 / 34
決意
しおりを挟む
「仕事は順調?皆は元気?」
ミミは気を利かせて部屋を出て行った。私がそう尋ねると、
「皆元気だ。仕事も何とかね」
と言いながら英二兄ちゃんは、ベッド脇にパイプ椅子を持って来て座った。
「手紙読んでびっくりした。色んな書類も入ってたし。急いで電話しても出やしないし、メッセージも既読無視だ。人に物を頼むのにそれはないだろう?」
「ごめんなさい。でも、頼れるの兄ちゃんしか居なくて」
「怒ってるんじゃない。ちゃんと話したかっただけだ。確かにすっかり疎遠になったが、縁を切った訳じゃない。もっと頼ってくれて良かったんだよ」
英二兄ちゃんが優しい事は子どもの頃からちゃんと分かってる。だからこそ、あんまり頼りたくなかったのだ。
「ごめんなさい。でも、私が死んだらきっとたくさん迷惑をかけると思う。それまで……一人で頑張りたくて」
「一人じゃないみたいだけど?あれは誰?同居人だって言ってたけど……」
「心配するかもしれないから言わない。でも悪い子じゃないの」
「分かってるよ。それはなんとなく感じる。お前の家で自分家の様に振る舞っていたが、ちゃんとお茶を入れてくれた」
「フフッ。話は弾まなかったでしょう?」
「あぁ。ただひたすらお茶を飲んだよ。無口だね、彼は。名前は?」
「知らないの」
「名前も知らない?」
「うん。私はミミって呼んでる」
「『ミミ』?ミミって確か……お前が昔飼ってた……」
「うん。兎の名前。何となく似てるし」
「確かに彼は色白だけどな。その分だと素性も?」
「詳しい事は何も。彼の事を知ったって、私はもう直ぐ死ぬんだもの。意味はない」
「本当に治療はしない?」
「うん。母を見てて……そう決めてたの。私には守るべき家族は居ないから、最期は好きに生きようって」
「俺にそれを止める権利はない?」
「ないよ。それは誰にもないの」
「……そうだよな。でも……彼は?」
「……もう少ししたら……彼を解放しようと思っているの」
私は少し前から考えていた事を口に出した。
ミミは気を利かせて部屋を出て行った。私がそう尋ねると、
「皆元気だ。仕事も何とかね」
と言いながら英二兄ちゃんは、ベッド脇にパイプ椅子を持って来て座った。
「手紙読んでびっくりした。色んな書類も入ってたし。急いで電話しても出やしないし、メッセージも既読無視だ。人に物を頼むのにそれはないだろう?」
「ごめんなさい。でも、頼れるの兄ちゃんしか居なくて」
「怒ってるんじゃない。ちゃんと話したかっただけだ。確かにすっかり疎遠になったが、縁を切った訳じゃない。もっと頼ってくれて良かったんだよ」
英二兄ちゃんが優しい事は子どもの頃からちゃんと分かってる。だからこそ、あんまり頼りたくなかったのだ。
「ごめんなさい。でも、私が死んだらきっとたくさん迷惑をかけると思う。それまで……一人で頑張りたくて」
「一人じゃないみたいだけど?あれは誰?同居人だって言ってたけど……」
「心配するかもしれないから言わない。でも悪い子じゃないの」
「分かってるよ。それはなんとなく感じる。お前の家で自分家の様に振る舞っていたが、ちゃんとお茶を入れてくれた」
「フフッ。話は弾まなかったでしょう?」
「あぁ。ただひたすらお茶を飲んだよ。無口だね、彼は。名前は?」
「知らないの」
「名前も知らない?」
「うん。私はミミって呼んでる」
「『ミミ』?ミミって確か……お前が昔飼ってた……」
「うん。兎の名前。何となく似てるし」
「確かに彼は色白だけどな。その分だと素性も?」
「詳しい事は何も。彼の事を知ったって、私はもう直ぐ死ぬんだもの。意味はない」
「本当に治療はしない?」
「うん。母を見てて……そう決めてたの。私には守るべき家族は居ないから、最期は好きに生きようって」
「俺にそれを止める権利はない?」
「ないよ。それは誰にもないの」
「……そうだよな。でも……彼は?」
「……もう少ししたら……彼を解放しようと思っているの」
私は少し前から考えていた事を口に出した。
80
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる