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サプライズ
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和歌山では、念願のパンダにメロメロな私に、何故かミミは苦笑していた。え?私、何か変なところがあったかな?
約一週間の旅路も最終日だ。また途中、途中で休息を十分に取りながら帰る予定なので、家に着くのはまだ先になるが、楽しかった旅行の終わりに少し切なくなる。
「楽しい時間はアッと言う間だね」
「そうだな。俺、こんな風に旅行したの初めてかも」
とミミは微笑んで、
「でもまだ終わりじゃないよ。今から香川県に向かうから」
と私の知らない行く先を告げた。
「香川?うどん食べに行くの?」
「うどんも食べたら良いんじゃね?」
とミミは香川へ行く目的を話してくれない。
「え?何で?どうして?」
と尋ねる私に、ミミは
「内緒」
と人差し指を唇に当てて見せるだけだ。
その道中の車の中でも『ヒント!ヒント!』と煩く言う私に、
「しつこい」
とミミは苦笑するだけだった。
またも長旅で長距離を運転するミミに、
「運転代わるよ?」
と言っても、
「慣れた」
と言ってハンドルは譲ってくれなかった。これも全部、本当は私の為だって分かってる。
私はミミに自分を看取って欲しかっただけなのに、彼は今や私の生活の一部だ。
親とだってこんな四六時中一緒に居た事などない。でもミミと一緒に居るのは本当に心地よかった。
それからも長い道のりを経て香川県に入ったミミは、
「やべ、間に合うかな……」
とハンドルを握り直した。結局、どうしてここに来たのかは知らされていないままだ。うどんは食べたけど。
段々と日が落ちていく。ミミは目的地に着いたのか、車を駐車場に停めると、
「くそ!急ぐぞ」
と私を横抱きにした。
「ミミ?!私、歩けるよ?!」
と驚く私に、
「おばさん足短いから。急がないと間に合わないの!」
とミミは走り出した。
所謂『お姫様抱っこ』をされた私はミミの首にしがみつく。下手に喋ると舌を噛みそうなので、ここでも質問は無しだ。私はミミの考えてる事は分からないが、彼の腕の中で大人しくしていた。
「ほら」
ミミは私をゆっくりと地面に降ろすと、指を指した。
「綺麗……」
私の目の前には水平線へゆっくりと夕日が沈んでいく様子が見える。
干潮で潮の引いた海砂浜の潮溜まりに、まるで鏡の様に綺麗な夕焼けの空と沈みゆく夕日が美しく反射していた。
その姿は今まで見たどの夕暮れよりも美しく、私はうっかり涙を一粒溢してしまった。
「まーた泣いてる」
「煩いなぁ。感動したって良いじゃない。でも、本当に綺麗だね」
「あぁ。綺麗だな」
私達は黙ってその光景に魅入っていた。日が沈んでしまった後も空が段々と暗くなる様子が潮溜まりに反射して美しい。
周りは私達と同じような観光客がたくさんおり、皆スマホを片手に写真を撮っていた。
私達二人はただ、ただ黙ってこの奇跡のような光景を見つめる。
言葉にはしないが、形として残す事を私が喜ばない事をミミは理解してくれているのだろう。
「どうして?」
私は静かにミミに尋ねた。
「『綺麗な海に沈む夕日が見たい』って言ってたろ?」
「調べてくれたんだ」
「まぁな」
ミミの優しさにまた私は泣きたくなった。どうしてこんな見知らぬおばさんの願いを彼は叶えてくれるのだろう。
彼は残り少ない私の人生に舞い降りた少し口の悪い天使なのかもしれない。
約一週間の旅路も最終日だ。また途中、途中で休息を十分に取りながら帰る予定なので、家に着くのはまだ先になるが、楽しかった旅行の終わりに少し切なくなる。
「楽しい時間はアッと言う間だね」
「そうだな。俺、こんな風に旅行したの初めてかも」
とミミは微笑んで、
「でもまだ終わりじゃないよ。今から香川県に向かうから」
と私の知らない行く先を告げた。
「香川?うどん食べに行くの?」
「うどんも食べたら良いんじゃね?」
とミミは香川へ行く目的を話してくれない。
「え?何で?どうして?」
と尋ねる私に、ミミは
「内緒」
と人差し指を唇に当てて見せるだけだ。
その道中の車の中でも『ヒント!ヒント!』と煩く言う私に、
「しつこい」
とミミは苦笑するだけだった。
またも長旅で長距離を運転するミミに、
「運転代わるよ?」
と言っても、
「慣れた」
と言ってハンドルは譲ってくれなかった。これも全部、本当は私の為だって分かってる。
私はミミに自分を看取って欲しかっただけなのに、彼は今や私の生活の一部だ。
親とだってこんな四六時中一緒に居た事などない。でもミミと一緒に居るのは本当に心地よかった。
それからも長い道のりを経て香川県に入ったミミは、
「やべ、間に合うかな……」
とハンドルを握り直した。結局、どうしてここに来たのかは知らされていないままだ。うどんは食べたけど。
段々と日が落ちていく。ミミは目的地に着いたのか、車を駐車場に停めると、
「くそ!急ぐぞ」
と私を横抱きにした。
「ミミ?!私、歩けるよ?!」
と驚く私に、
「おばさん足短いから。急がないと間に合わないの!」
とミミは走り出した。
所謂『お姫様抱っこ』をされた私はミミの首にしがみつく。下手に喋ると舌を噛みそうなので、ここでも質問は無しだ。私はミミの考えてる事は分からないが、彼の腕の中で大人しくしていた。
「ほら」
ミミは私をゆっくりと地面に降ろすと、指を指した。
「綺麗……」
私の目の前には水平線へゆっくりと夕日が沈んでいく様子が見える。
干潮で潮の引いた海砂浜の潮溜まりに、まるで鏡の様に綺麗な夕焼けの空と沈みゆく夕日が美しく反射していた。
その姿は今まで見たどの夕暮れよりも美しく、私はうっかり涙を一粒溢してしまった。
「まーた泣いてる」
「煩いなぁ。感動したって良いじゃない。でも、本当に綺麗だね」
「あぁ。綺麗だな」
私達は黙ってその光景に魅入っていた。日が沈んでしまった後も空が段々と暗くなる様子が潮溜まりに反射して美しい。
周りは私達と同じような観光客がたくさんおり、皆スマホを片手に写真を撮っていた。
私達二人はただ、ただ黙ってこの奇跡のような光景を見つめる。
言葉にはしないが、形として残す事を私が喜ばない事をミミは理解してくれているのだろう。
「どうして?」
私は静かにミミに尋ねた。
「『綺麗な海に沈む夕日が見たい』って言ってたろ?」
「調べてくれたんだ」
「まぁな」
ミミの優しさにまた私は泣きたくなった。どうしてこんな見知らぬおばさんの願いを彼は叶えてくれるのだろう。
彼は残り少ない私の人生に舞い降りた少し口の悪い天使なのかもしれない。
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