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第71話
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その後、夕食を共にしながら結婚式までの流れや、やるべき事を夫人と確認した。
「結婚式のドレスも?」
「ええ。フェリックスが頼んでいたわ。そっちはまだまだデザインを考えている所みたい。……ついでに私のドレスも注文したの。あの夜空みたいなドレスを私もすっかり気に入ってしまったから、お願いしたのよ」
ローレンさんが大忙しなのでは……と少し心配になる。
「そう言えば……アンドレアス様は?」
「あぁ……あの子は絶賛反抗期中。一人で食べるって部屋へと引きこもってるわ」
今年十二歳になったアンドレアス様。そう言えば彼の姿も随分と見ていない事に気付いた。
私の中ではくりくりの巻き毛に水色の瞳がキラキラした可愛い少年のままだったが、難しい年頃の様だ。
「正直……夫もフェリックスも近衛で忙しいし、アンドレアスは反抗期であんまりお喋りしてくれないし……こうして誰かと話をしながら夕食を食べるのは久しぶりな気がするわ」
夫人は寂しそうに笑う。
うちは父も夕食時には大体戻っている事が多いし、ネイサンも確かに口数は少なくなったが、食事は家族揃って食べる事が日常だ。この広い食堂で一人夕食を食べるのは、確かに味気ないかもしれないと私はそう思った。
「夫人……あの……今度カフェに行きませんか?」
「カフェ?」
「はい。って言っても、私も少し前に初めて行ったばかりですが」
「若い子が多いのでしょう?私みたいなおばさんが行っても良いのかしら?」
「御婦人方も結構いらっしゃっていました。夫人の気が向いたら……是非」
私の言葉に夫人はニッコリと笑ってくれた。
その翌日、夫人とカフェに行く事になったのたが……
「いい?マーガレット。覚えておいて。騎士の妻など、本当につまらないんだから!!夫の背中を追ってフェリックスまで騎士になってしまって……本当に嫌だわ」
夫人の愚痴が止まらない。でも、侯爵との婚約が整った経緯を聞くと、途端に夫人は少女の様な顔になった。
「夫は知らないんだけど……彼との結婚は私が望んだの。
私の夫になる男性がハウエル侯爵家を継ぐ事が決っていたから、相手選びは難航していて……。父が持ってくる縁談の男性は私よりハウエル侯爵家の事を考えて選ばれた方はがり……仕方ない事だと頭では分かっていても、心が中々追いつかなかったの。
そんなある日、王宮で剣術の大会が行われてね……そこで夫は優勝したの!凄いでしょう?団長は出場していなかったけれど、当時の副団長をねじ伏せた。彼はその功績が評価されて、後に副団長になるのだけど……副賞として好きなご令嬢との縁談ってのがあってね」
副賞が縁談……それって相手になるご令嬢の気持ちは?と思わなくもないが、政略結婚とはそもそも、そんなものなのかもしれない。……私だってずっとそう思っていたし。
私は頷きながら、夫人に話の先を促した。
「結婚式のドレスも?」
「ええ。フェリックスが頼んでいたわ。そっちはまだまだデザインを考えている所みたい。……ついでに私のドレスも注文したの。あの夜空みたいなドレスを私もすっかり気に入ってしまったから、お願いしたのよ」
ローレンさんが大忙しなのでは……と少し心配になる。
「そう言えば……アンドレアス様は?」
「あぁ……あの子は絶賛反抗期中。一人で食べるって部屋へと引きこもってるわ」
今年十二歳になったアンドレアス様。そう言えば彼の姿も随分と見ていない事に気付いた。
私の中ではくりくりの巻き毛に水色の瞳がキラキラした可愛い少年のままだったが、難しい年頃の様だ。
「正直……夫もフェリックスも近衛で忙しいし、アンドレアスは反抗期であんまりお喋りしてくれないし……こうして誰かと話をしながら夕食を食べるのは久しぶりな気がするわ」
夫人は寂しそうに笑う。
うちは父も夕食時には大体戻っている事が多いし、ネイサンも確かに口数は少なくなったが、食事は家族揃って食べる事が日常だ。この広い食堂で一人夕食を食べるのは、確かに味気ないかもしれないと私はそう思った。
「夫人……あの……今度カフェに行きませんか?」
「カフェ?」
「はい。って言っても、私も少し前に初めて行ったばかりですが」
「若い子が多いのでしょう?私みたいなおばさんが行っても良いのかしら?」
「御婦人方も結構いらっしゃっていました。夫人の気が向いたら……是非」
私の言葉に夫人はニッコリと笑ってくれた。
その翌日、夫人とカフェに行く事になったのたが……
「いい?マーガレット。覚えておいて。騎士の妻など、本当につまらないんだから!!夫の背中を追ってフェリックスまで騎士になってしまって……本当に嫌だわ」
夫人の愚痴が止まらない。でも、侯爵との婚約が整った経緯を聞くと、途端に夫人は少女の様な顔になった。
「夫は知らないんだけど……彼との結婚は私が望んだの。
私の夫になる男性がハウエル侯爵家を継ぐ事が決っていたから、相手選びは難航していて……。父が持ってくる縁談の男性は私よりハウエル侯爵家の事を考えて選ばれた方はがり……仕方ない事だと頭では分かっていても、心が中々追いつかなかったの。
そんなある日、王宮で剣術の大会が行われてね……そこで夫は優勝したの!凄いでしょう?団長は出場していなかったけれど、当時の副団長をねじ伏せた。彼はその功績が評価されて、後に副団長になるのだけど……副賞として好きなご令嬢との縁談ってのがあってね」
副賞が縁談……それって相手になるご令嬢の気持ちは?と思わなくもないが、政略結婚とはそもそも、そんなものなのかもしれない。……私だってずっとそう思っていたし。
私は頷きながら、夫人に話の先を促した。
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