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第51話
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『三竦み』と言う言葉が頭をよぎる。あれはカエルとヘビと……あと一つは何だっけ?あ……ナメクジだ。
三人はフェリックス様の言葉を最後に黙り込んだ。
ネイサンが呑気に、
「姉様、意外にモテるね」
と私に耳打ちする。こんな時に何を……と頭を叩きたくなる衝動を抑えた。
沈黙の時間はどうしてこんなに長く感じるのだろう。本当はごく短い時間のくせに。しかしこの空気感……給仕もデザートを運んで良いのか躊躇しているようだ。
ようやくフェリックス様が口を開く。
「王太子殿下が帰国すれば……。いや、とにかくマーガレットと一度ゆっくり話をさせて欲しい。……ダメだろうか?」
最後の問いは私に向けての言葉だった様だ。いつになく自信の無さそうなフェリックス様が別人の様に感じられて私は困惑した。
「マーガレット、お前が全て決めて良い。お前の思うように生きなさい」
父の言葉に、ここまで黙っていた母が口を挟む。
「でも……私はやはり女の幸せに結婚は不可欠だと思っているの。もちろん、それだけが全てではないわ。でも誰かと家庭を築く事、家族を作る事、それを全て放棄するのは……私は反対よ。でも……貴女を大切に思う人を選んでちょうだい」
母はどうもデービス様を推している様だ。フェリックス様の顔が強張る。
「僕も君たち二人には会話が必要だと思っているよ。僕とメグにはたくさん会話する時間があったけど……フェリックス殿は今までその権利を放棄していた様だったから。勿体ない事に」
デービス様は最後までフェリックス様を煽る事を忘れなかった。私はまたフェリックス様が怒り出すのではないかとヒヤヒヤしたが、フェリックス様はまた私の顔を見て、
「君の時間をくれないか?」
と不安げに瞳を揺らしながら私に尋ねてきた。
フェリックス様の顔色が心なしか悪い気がする。そんなフェリックス様に、私はまた胸が苦しくなった。
「では、フェリックス様。一度ゆっくりとお話しましょう。いつに……」
『なさいますか?』の言葉に被せる様に、
「明日からまた忙しくなるんだ。……出来ればこの後二人で話したい」
とフェリックス様が重ねる。
「なら、マーガレットの部屋で二人ゆっくりと話せば良い。……もちろん扉は少し開けておくように」
そう父に言われ、私は頷いた。
フェリックス様には先に部屋で待ってもらう様に伝えると、私はデービス様を見送る。
「今日は送って下さってありがとうございました」
「こちらこそ、夕食までご馳走になっちゃって。凄く美味しかったよ。それじゃあ」
デービス様は扉に手をかけてから、私に振り返る。
「フェリックス殿とゆっくり話すんだよ?せっかく僕が煽ったんだから……って、ちょっと煽り過ぎちゃったかな?」
「え?あれはやはり……わざと?」
「ふふ……どうだろうね?じゃあ!」
デービス様はあやふやな答えのまま笑顔で去って行った。
三人はフェリックス様の言葉を最後に黙り込んだ。
ネイサンが呑気に、
「姉様、意外にモテるね」
と私に耳打ちする。こんな時に何を……と頭を叩きたくなる衝動を抑えた。
沈黙の時間はどうしてこんなに長く感じるのだろう。本当はごく短い時間のくせに。しかしこの空気感……給仕もデザートを運んで良いのか躊躇しているようだ。
ようやくフェリックス様が口を開く。
「王太子殿下が帰国すれば……。いや、とにかくマーガレットと一度ゆっくり話をさせて欲しい。……ダメだろうか?」
最後の問いは私に向けての言葉だった様だ。いつになく自信の無さそうなフェリックス様が別人の様に感じられて私は困惑した。
「マーガレット、お前が全て決めて良い。お前の思うように生きなさい」
父の言葉に、ここまで黙っていた母が口を挟む。
「でも……私はやはり女の幸せに結婚は不可欠だと思っているの。もちろん、それだけが全てではないわ。でも誰かと家庭を築く事、家族を作る事、それを全て放棄するのは……私は反対よ。でも……貴女を大切に思う人を選んでちょうだい」
母はどうもデービス様を推している様だ。フェリックス様の顔が強張る。
「僕も君たち二人には会話が必要だと思っているよ。僕とメグにはたくさん会話する時間があったけど……フェリックス殿は今までその権利を放棄していた様だったから。勿体ない事に」
デービス様は最後までフェリックス様を煽る事を忘れなかった。私はまたフェリックス様が怒り出すのではないかとヒヤヒヤしたが、フェリックス様はまた私の顔を見て、
「君の時間をくれないか?」
と不安げに瞳を揺らしながら私に尋ねてきた。
フェリックス様の顔色が心なしか悪い気がする。そんなフェリックス様に、私はまた胸が苦しくなった。
「では、フェリックス様。一度ゆっくりとお話しましょう。いつに……」
『なさいますか?』の言葉に被せる様に、
「明日からまた忙しくなるんだ。……出来ればこの後二人で話したい」
とフェリックス様が重ねる。
「なら、マーガレットの部屋で二人ゆっくりと話せば良い。……もちろん扉は少し開けておくように」
そう父に言われ、私は頷いた。
フェリックス様には先に部屋で待ってもらう様に伝えると、私はデービス様を見送る。
「今日は送って下さってありがとうございました」
「こちらこそ、夕食までご馳走になっちゃって。凄く美味しかったよ。それじゃあ」
デービス様は扉に手をかけてから、私に振り返る。
「フェリックス殿とゆっくり話すんだよ?せっかく僕が煽ったんだから……って、ちょっと煽り過ぎちゃったかな?」
「え?あれはやはり……わざと?」
「ふふ……どうだろうね?じゃあ!」
デービス様はあやふやな答えのまま笑顔で去って行った。
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